第5話 修行と武具作成2 送り届けと武具選び(通常版)
女の子を抱きかかえつつ、ラフェイドの街を散策する。彼女の母親は直ぐに見つかったのだが、その親も困らせるように泣き出す女の子である・・・。
そこで、彼女が落ち着くまで、母親と共に街中を散歩し続けた。本当に雑用としか言い様がない。まあ、こうしたノホホンとした雑用も、ある意味休息なのかも知れない。
それに、こちらを新米のギルド職員だと勘違いした母親から、この街に関して色々と伺って回れた。実際に、この街は初めてだらけだったので、これはこれで非常に有難いものだった。
そうしているうちに、胸の中の女の子はスヤスヤと眠りだした。その様子を母親と共に、微笑ましい目線で見守り続けた。
最後は、母親と女の子の自宅まで送り届ける。自宅に到着しても、女の子は眠っていた。俺の胸から母親の胸へと移動しても、静かに眠り続けている。簡単な挨拶をして、その場を離れた。
ちなみに、2人の自宅は冒険者ギルドの裏手である。それを踏まえると、あの女の子は相当な冒険をしたのだろう。その小さな冒険心に、心から頭を下げた。
「お疲れ様でした。」
冒険者ギルドへと戻ると、入り口付近でテネットに出迎えられた。今は彼女が屋内と屋外の掃除を行っている。受け付けは別の職員が担当していた。
「“ジト目”の叱咤激励、ありがとな・・・。」
「ハ・・ハハッ・・・。」
先程の対応に対して、簡単に反論してみた。女の子の対応に対して、恐らく嫉妬を抱いたのだろう。それ故のジト目である。それを挙げると、苦笑いを浮かべてきた。
ただ、彼女の対応も一理あった。聞く所によると、テネットはこの街で幼子に大変人気があるというのだ。その彼女しても、あの女の子には嫌がられた感じである。
そして、嫌がられなかったのは、覆面と仮面を着けた変人だ。しかも、女の子とは初対面である。ジト目で睨まれるのは十分理解ができた。
と言うか、冒険者ギルドの職員は、こうした一般的な雑用を全て無償で行っているらしい。迷子の親捜しや、街の美化など、本当に雑用そのものである。
偶に冒険者にも依頼を出すとの事だが、プライドが高くなった高レベル冒険者には、決して受け入れられないものだそうだ。受け持ってくれるのは、ほぼ初心者の冒険者ぐらいである。
無論、中には高レベル冒険者でも雑用を引き受ける存在はいる。ただ、それは非常に希であるとの事である。
その中で、率先して受け持ってくれるのが、四重の壁の4人との事である。今の今まで、ああいった雑用は一切断らずに受け持ってくれていると言う。
雑用然り、高レベル討伐然り、一切の隙がない。そんな彼らだからこそ、色々な事変が発生したとしても、ギルド側が最大限の助力をしてくれるのだろうな。
先日の事変時に、ナディト達がギルドに向かった際も、一切疑う事なく駆け付けたという。絶大な信頼があってこそ、そうした厚意が成り立つものだ。
これは無論、警護者の世界でも全く同じである。人殺しの集団だと揶揄される事もあるが、それはその絶大な力に嫉妬しての横槍だ。特に、権力者からの横槍が非常に多い。
逆に、地元密着型として活動する警護者達は、地元の人々から絶大な信頼を勝ち得ている。俺が喫茶店の運営をしつつ、警護者の生き様を貫けるのも、正にこの流れから至っていた。
地球は警護者、異世界は冒険者。両者とも、生き方は全く異なるが、目指すべき場所は全く同じである。
何度も挙げるが、創生者ティルネアは適材適所として、俺を派遣してくれたのだろうな。ベイヌディートに訪れてからは、非常にマッチした生き方ができているのだから。
「それ、ダウド。」
「なにぃ~?!」
恒例のダウドの掛け声が響き渡る。冒険者ギルドの酒場フロアの一角で、ウェイス達が屯をしていた。昼間は大いに休息を取り、夕方からは娯楽に興じだしている。
今は彼ら以外に、リドネイにトーラ、そしてテネットも参戦しての大規模パーティーだ。更には、他の冒険者達も別のテーブルでダウドを嗜んでいる。
「息抜き、ねぇ・・・。」
「まあそう仰らずに。」
先日から行いだした、トランプゲームのダウド。今では、ラフェイドの街の風物詩にまで至っている。冒険者ギルドは無論、街に住む住人達にも大好評のようだ。
そして、道具屋に売られているトランプが完売するという誤算も起きている。道具屋店主はウハウハらしい。まあ、トランプ自体の価格は微々たるものではあるが・・・。
地球で何ら普通にある娯楽が、異世界では逸脱した様相に見えているとの事だ。それだけ、非常に殺伐とした様相である事を痛感させられる。
「ところで、明日からはどうする?」
「んー、俺達は再度武器防具を見直そうと思う。」
「ブラハウのあの猛攻を考えたら、盾よりは大盾の方が良いと思いましたよ。」
明日の予定を尋ねると、即座に答えるのはウェイスとサイジアだ。先日のブラックハウンドとの対峙で、通常の盾では厳しいと判断したようだ。
確かに彼らの体躯からして、通常の盾は非常にお粗末としか言い様がない。俺やトーラが持つ大盾こそ、今の2人に相応しい獲物である。
「俺は逆に、普通の盾を両手の腕に括り付ける方が良いと思ったっす。」
「確かに。その場合なら、両手自体は塞がりませんからね。」
「なるほどな。」
今度はナディトとエルフィが挙げてくる。2人は普通の盾を持っているが、彼らもウェイス達ほどではないが、体躯は非常にガッチリしている。しかし、大盾を持つほどではない。
そこで考えたのが、両腕に普通の盾を括り付けるものだ。これは先日のリドネイがそれで、同様の戦法を取り入れている。故に、右手に太刀型日本刀、左手に通常日本刀を持てていたのだから。
「私は、マスターからお借りしている獲物以外に、別の獲物を見繕うかなと。今後もこれを頼るのは偲びないですし。」
「確かにそうだな。」
続いて、リドネイが語りだす。今の彼女は、俺が持っていた2本の日本刀を使っている。しかし、確かに今後も使い続けると腕が鈍る恐れが出てくるだろう。
となれば、日本刀の模造品を作るか、それに近しい業物を得るしかない。幸いにも、昨日の昇格試験で得られた追加報酬は、俺がここに来た時以上の資金を得る事になった。何と金貨1000枚、白銀貨1枚である。
これだけあれば、日本刀の模造品も作れるだろうし、それ相応の業物の獲物を買う事も可能である。今回の報酬は、彼女に全て費やす方針で良いだろう。
「私は、特大剣の二刀流でも構いません。」
「「「「「・・・・・。」」」」」
そして、トーラより告げられた言葉に、一同して絶句した。大盾なら、ナディトやエルフィにリドネイでも辛うじて持てる。しかし、両手を必要とするため、獲物を持つ事が難しい。
そんな大盾を、軽々と振り回すのがトーラだ。獲物の特大剣すら、軽々と振り回している。その彼女が、特大剣の二刀流と挙げたのだ。絶句してしまうのは言うまでもない。
「・・・お前さん、狼人族は剛腕の種族なのか?」
「そうですね。両親は“街の噴水の塔”ぐらいの鈍器を、軽々と振り回しますので。」
再び絶句させられた。彼女が挙げた、“街の噴水の塔”である。その大きさは、軽く3m近い規模のものだ。それに似た鈍器もさる事ながら、それを軽々と振り回す両親とは・・・。
狼人族の戦闘力は、逸脱した様相だとしか言い様がない・・・。だが、魔物族や魔族なら、そう言った逸脱した種族がいても何らおかしくはないだろうな。
後日談になるが、後の俺が地球にて、同じ様な化け物種族に出逢う事になるのだが・・・。
第5話・3へ続く。
話数に余裕ができたので、第5話は1日毎更新に回します><; ただ、マジモノで探索者側が危ういのですが・・・(-∞-)
ちなみに、トーラさんの怪力を超えるのは、探索者や警護者でもお馴染みのギガンテス一族です(>∞<) 巨大帆船などを片手で持ち上げたりしますし@@; まあ向こうは種族の力以外にも、重力操作能力もありますけど><; 何とも(-∞-)




