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覆面の苦労人 ~遂行者代理の生き様~  作者: バガボンド
第1部 遂行者と警護者と
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第4話 追放の獣人4 2つの乱入(キャラ名版)

 流石はBランクの冒険者たるウェイス達。現状の攻撃力と防御力を把握すると、タッグに分かれて行動を開始しだした。そのタッグ状態でトリプルチームを組んで対処に当たる。


 ウェイスとナディト、サイジアとエルフィ。そして、トーラとリドネイ。丁度、Yの字の様に陣形を組み、パワーベアー達を倒していった。


 俺は、彼ら3チームの真ん中に位置し、傷を負った面々に回復魔法を施していく。致命的な一撃は受けないものの、擦り傷や掠り傷など細かい傷は防ぎ切れてなかった。


 まあでも、致命的な一撃は本当に危険なので、このぐらいで済むなら安い方かも知れない。地球での致命的な一撃は、下手をしたら即死しかねないものばかりだったしな・・・。


 今も多くの支援に徹している状態だが、それでも不測の事態への警戒を続けた。先日、4人が昇格試験を受けた際に襲来した、不意の乱入者に関してもだ。


 ちなみに、トーラは何とCランクの冒険者との事だ。あの愚物共がDランクを踏まえれば、彼女の方が遥かに実力者である。ただ、連中と組んでいた時は、態とEランクと誤魔化していたようだが・・・。


 あの連中が彼女の実力を読めなかった時点で、連中の実力はたかが知れているという事だ。逆に俺がトーラと初対面時は、その力に驚かされてもいる。それを踏まえると、俺も一応は実力があるという証拠だろうな・・・何とも。



ナディト「ぬぅ~・・・ここって、パワーベアーの巣窟なんすかね・・・。」

サイジア「テネット嬢からは、その話は聞いていないんだけどね・・・。」


 常に支援を行っている事により、目立った息切れをせずに立ち振る舞う彼ら。その中で、ナディトとサイジアから懸念の声が挙がる。確かにパワーベアー達の数が多過ぎた。実際の数は不明だが、それにしても多いと言うのは地球人の俺からしても分かる。


 皮肉なのが、現段階での撃破総数が、昇格試験に必要な個体数を達成している事だろう。後は討伐証明の証たる、パワーベアー達の素材の確保が必要となる。全てが終われば、問題なく済むだろう。


 だが、それをも考えさせないぐらいの個体数が襲来して来ている。明らかに異常だとしか言い様がない。


エルフィ「これ・・・下手したら、魔物の暴走が起こるかも知れません。」

ウェイス「スタンピード、か。厄介だな・・・。」


 個体数の増加に関して、戦々恐々として懸念材料を語る。エルフィもウェイスも、魔物の暴走に恐怖を抱いているようだ。地球人の俺としては、それが何なのかは分からない。だが、非常に危険である事は痛感できる。


ミスターT「その暴走に関して分からないが、完全撃滅は不可能なのか?」

サイジア「いえ、不可能ではありません。ただ・・・。」

ナディト「相当数の魔物を倒さないといけないっす。」

ミスターT「難儀だな・・・。」


 パワーベアーの猛攻を防ぎつつ、彼らが挙げる懸念材料に考えを巡らせる。その様相は、俺が考える以上の厄介さを孕んでいた。下手をしたら、それ以上のものになる。


 魔物の大暴走など、地球では絶対に有り得ない事だ。あるとしたら、イナゴの大繁殖による大襲来ぐらいか。むしろ、ウイルス群の大暴走なら日常茶飯事で起こってはいる。


 その大襲来が、グリズリークラスの巨大な魔物群である。普通の人間なら、ひとたまりもない。重火器を投入すれば何とかなるが、一切の犠牲を防ぎつつ攻略するのは不可能だ。


ミスターT「まあ何だ、今は目の前の壁を乗り越えるか。」


 連続で巨大な爪を振るうパワーベアー。その猛攻を白銀の大盾で防ぎ、携帯方天戟で相手の両足を斬り付ける。痛みにより、相手の猛攻が止んだ所を見計らい、リドネイが太刀型日本刀で両手を斬り付けた。


 スピードハウンド程度なら、この一撃でほぼ倒せる。しかし、流石はタフネス振りを発揮しているパワーベアー。こちらの反撃でも完全に倒す事ができない。彼らを一撃で倒す冒険者となると、警護者界では逸脱した力の持ち主としか言い様がない。


 地道に攻撃を繰り返し、確実に倒していくのが無難だろう。倒し損ねる場合が一番危険だ。




 その後も襲来するパワーベアー達の撃退をしていると、突如壮絶な雄叫びが響き渡った。その声色を聞いたパワーベアー達は無論、俺達の方も怯んでしまう。それだけ凄まじい雄叫びである。


 直後、一番遠方にいるパワーベアーが吹き飛ばされた。こちらの数倍はある巨体が、軽々と吹き飛んでいったのだ。そのまま大木に激突し、ピクリとも動かなくなる。


 一同して、事をしでかした相手を見つめる。そこには、黒色の体躯が不気味なまでに光り輝く狼がいた。ただし、普通の狼ではないのは百も承知だ。その体躯は、パワーベアー達より更に数倍もあったからだ。


 長年の直感と洞察力が働く。相手はウェイス達が昇格試験を諦めざろう得なかった、不意の来訪者たるブラックハウンドだと確信ができた。


ナディト「ブ・・ブラックハウンドっす!」

ウェイス「ハハッ、相変わらずデカいわ・・・。」


 2人が恐々と相手の様相を語ってくれた。名前は無論、その体躯に関しての恐怖度である。他の2人も同じく、表情に戦慄が走っている。リドネイとトーラも、初めて見る巨大な狼に恐怖の表情を浮かべていた。


 しかし、6人とも完全に怖じてはいない。再昇格試験時に乱入者があると踏んで、色々と準備を進めてきたのだ。更に、個人での遭遇ならまだしも、今は7人のパーティーの状態だ。


 問題があるとすれば、ブラックハウンド以外にパワーベアー達も対峙しなければならない点である。漁夫の利を狙うなら、向こう側が潰し合うのを待つのが良いだろう。


ミスターT「・・・ブラハウのタゲは、俺達の方に向いてなさそうだな。」

エルフィ「で・・ですね・・・。」


 全てのパワーベアーがブラックハウンドに意識を向けている。それを確認した俺は、他の6人に正面を向いたまま、少しずつ後退する事を促した。


 俺達の周辺にいたパワーベアー達も、こちらへの執着を捨てて、現段階で最大の脅威となるブラックハウンドへと意識を向けていた。これは本当に不幸中の幸いである。




冒険者1「今だ! 襲い掛かれ!」


 突如、その声が響き渡る。先程のブラックハウンドの雄叫びほどの恐怖度ではないが、別の意味合いでの恐怖度が襲い掛かって来た。もう1つの懸念材料である、愚物パーティーだ。


 現状で最後尾にいた俺に対して、一斉に襲い掛かって来る4愚物。こちらも白銀の大盾を相手側に向け、降り掛かる斬撃を防いでいった。


ミスターT「・・・フッ、“賭け”は勝ったな。」

サイジア「・・・やられちまいましたぜ~。」


 4愚物の猛攻を凌ぎつつ、態とらしくボヤいてみせた。それを伺ったサイジアが、機転を利かせて反応してくれた。もっとも、実際にはそんな賭け事などしてはいない。


 しかし、俺達の即座のやり取りは効果があったようだ。猛攻を止め、間合いを取りながら、こちらと対峙してくる。その表情は怒りと憎しみに満ちていた。


ミスターT「ようこそ、カス共。来ると思っていたわ。」

冒険者2「先日は舐めた真似をしてくれたな!」

冒険者3「貴様等のせいで冒険者稼業が台無しだ!」

ナディト「ハッ! テメェ等が間抜けだっただけの話だろうが!」


 罵り合いの応酬である。だが、ナディトの言う通り、相手が間抜けだったのは間違いない。トーラへの悪態を、誰もいない場所で行えば良かっただけの話だ。偶々、俺達がそこにいた事により、連中の命運が尽きたというだけである。


 それに、この展開は必ず起こると踏んでいた。昇格試験と2つの乱入者があると、先読みして動いていただけである。問題があるとすれば、そのタイミングだけだろう。



 この対峙の間、同期中のティルネアに魔物達の様子を窺って貰っていた。ブラックハウンドに襲い掛かるパワーベアー達だが、その圧倒的戦闘力の前に駆逐されだしている。


 幸いなのが、パワーベアー達の数が多い事だろう。相手は1体だけなので、今の所はこちらを目溢ししてくれているようだ。


 それでも、ブラックハウンド単騎で数多くのパワーベアーを一蹴していく。その戦闘力が逸脱している事を痛感させられた。目の前の4愚物よりも、確実に恐ろしい相手である。


 だが・・・それを覆す出来事が、直後に巻き起こった。



冒険者4「ぎゃあああああー!!!」


 突然、4愚物の1人の叫びが響き渡る。連中の中で、一番後方にいた相手である。背後から胸に掛けて、鋭い爪が貫いていたのだ。


 それに俺達や3愚物も驚愕するが、更に驚愕したのは背後にいた存在である。単体だけだと思っていたブラックハウンドが、何とそこにもいたのだ。


冒険者2「ぐっ・・舐めやがってっ!」


 仲間の1人がやられた事に逆上する1愚物。武器を構えて突撃していった。だが、その相手に胸を貫かれた相手をぶつけるブラックハウンド。まるで狙っていたかのような投擲だ。


 流石に武器で打ち払う訳にはいかなかったのか、身体で受け持とうとする。そこに素速く接近し、鋭い爪で再度胸を突き刺していく。鋭利な爪は、最初に胸を貫いた相手と共に、背後の相手の胸も貫いたのだ。そして、そのまま両者の首を意図も簡単に切断してしまう。


 数秒の対峙で、それなりの実力を持っているであろう2人を、簡単に瞬殺してしまった。これには流石に驚愕するしかない。


リドネイ「・・・やりますね・・・。」

ミスターT「・・・はぁ・・・。」


 ボソッと語られた言葉に、一瞬沈黙しつつも溜め息を付いた。リドネイのボヤきだが、驚愕はしているものの、そこには一切の感情は込められていない。それは他の5人も同じようで、冷めたような雰囲気で見つめていた。


 ・・・これが異世界の仕様なのだろう。俺自身も地球で、こうした冷めた態度は取った事はある。その時の俺は、今の6人と同じ雰囲気を醸し出していたのだろう。そう考えると、非常に遣る瀬無い感じになる。


 まあ、因果応報の理を踏まえれば、あの2人は自業自得だと言わざろう得ないが・・・。


冒険者3「く・・くそっ!」

冒険者1「て・・撤退するぞ!」


 仲間2人を瞬殺されて、気が動転したのだろう。残りの2愚物は、一応引く事を決めたと思われる。しかし、それは間違った選択だった。


 慌ててその場から走り去ろうとする2人に、ブラックハウンドの容赦ない追撃が向かった。瞬殺した2人の場から、まるでダッシュジャンプするかの様に飛び跳ねる。一番手前にいた相手に圧し掛かり、もがき続けるその首を鋭利な爪で引き裂いたのだ。


 残りの1人は、そのまま走り去れば良かったのだが、その惨状を振り返って見てしまう。そして、その場に棒立ちしてしまったのだ。


冒険者1「た・・・助けてく・・・。」


 リーダー格だった愚物は、そう言い切る前に襲われた。まるでスタートダッシュをするかの様なブラックハウンドに接近され、そのまま鋭い爪で首を跳ねられる。


 時間にして数分も掛かっていない。4愚物は正に瞬殺されてしまった。ブラックハウンドの超絶的な戦闘力を垣間見て、俺達はただ呆然と眺めるだけだった。


 しかし、俺に絶望の色は一切なかった。それは、他の6人も全く同じようである。


    第4話・5へ続く。

 瞬殺される愚物共。相手が犬系魔物故に、正に“噛ませ犬”ですか(何@@; まあ、話を盛り上げるスパイスでしかないので、当然の対応でしょう。あくまで主役は、主人公サイドなので(-∞-)


 しかし、詳細描写は本当に難しいです><; これが第3者視点なら、ある程度補えたのかも知れませんが@@; ですが、今後も主人公視点を続けていきます><;

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