第4話 追放の獣人2 狼人族のトーラ(キャラ名版)
テネット「あはー・・・お見苦しい所をお見せしました。」
ミスターT「いや、逆に巻き込んでしまって申し訳ない。」
愚物事変が終わり、一同してテーブルへと戻って行く。そこにテネットが訪れ、深々と頭を下げてきた。先程の言動などの謝罪なのだろう。その彼女に、俺の方も頭を下げる。
ギルド職員という役割から、中立の立場を貫かねばならない。それなのに、今回は一緒に共闘した形になった。今後の彼女の立ち位置が大丈夫かと心配になる。
エルフィ「ミスター、テネットさんは副ギルドマスターの1人なので大丈夫ですよ。」
ミスターT「はぁ・・・人は見掛けに寄らない訳か・・・。」
そんな俺の心情を察してくれたのか、エルフィが補足をしてくれた。何とこの美丈夫は、副ギルドマスターの1人だと言うのだ。それなのに、先程の言動やら各種雑用やらを行う姿を見ると、普通の職員にしか見えない。
テネット「いえ・・・副ギルドマスターの補佐となります。」
ナディト「どちらも同じ様なものっすよ。」
ミスターT「ハハッ、そうだな。」
副ギルドマスターではないと語るが、ナディトの言う通り、殆ど変わりないものである。肩書きこそ副ギルドマスター補佐であろうが、実際に実働しているのは彼女に変わりはない。
こうした実務的な役職は、実際に実働した人物ほど真価を発揮している。無論、彼女達を纏める存在は必要だ。その纏め役を支えるのが、この美丈夫たるテネットである。
彼女との初見の時に、何らかの気迫めいた雰囲気を察知した。それがまさか、この様な強者だったとは思いもしなかったわ。
ミスターT「一応、今後も警戒してくれ。あの手のカス共は、必ず報復行動をしてくる。」
テネット「そうですね・・・そうした方が良さそうです。」
今後の事を予測し、テネットに警戒を強めるように打診した。あの手の連中は、必ず報復の行動をするのが通例だ。地球でも全く同じ行為が横行している。
それらを踏まえて、あの場で殺害に至ろうと思ったのが本音なのだが。後々の火種になり、それにより被害が拡大するのなら、即座に殺害するに限る。
サイジア「大丈夫だと思いますよ。既に2つのペナルティを喰らっていますし。」
ウェイス「既に、指名手配になっても問題ないしな。」
ミスターT「それこそ油断そのものよ。あそこまで至ったカス共は、即座に始末するに限る。」
素っ気無く語ると、顔を青褪める一同。警護者では当たり前の行動なため、別段おかしい所は一切ない。先にも挙げた通り、後の火種になるぐらいなら、早い段階で消すに限る。
一応、“4つの武装”は持ち合わせてはいる。実に即効性があり、一撃必殺を放つ獲物だ。ただ、パワーバランスを重視するなら、これは最終手段として使うしかないのも実状だが。
携帯獲物と刀群だけを持参して、異世界へと舞い降りれば良かったのかも知れない。要らぬ力は全てを壊しかねないのだから・・・。
リドネイ「ところで、マスター。こちらのお嬢様はどうされるのですか?」
リドネイの言葉で我に返る。周りの面々も同じ様で、一同してフードを被った幼子の方を見る。椅子に腰掛けた彼女は、ただ黙ったまま俯いていた。
ミスターT「改めて、お初にお目に掛かる。俺はミスターT。お嬢さんは?」
彼女の前に片膝を付き、目線を合わせつつ自己紹介をする。雰囲気からして、とにかく幼子としか言い様がない。それでも、彼女に内在する力が凄まじい事を感じ取れる。
徐にフードを取りつつ、こちらを見つめてくる。露わになった姿に小さく驚いた。頭に犬の様な耳が付いていたからだ。所謂、獣人という種族だろう。
幼子「あ・・あの・・・初めまして、トーラと言います・・・。」
ミスターT「トーラさんか、よろしくな。」
今も怖じている彼女の頭を、右手で優しく撫でてあげた。こちらの一念を察したのか、笑顔で見つめてくる。ティルネアやリドネイにも無意識に行ってしまった厚意だ。
地球でも過去に、こうした厚意を行っていた。周りが言うには、俺は無意識にその行動を行っているらしい。気付いた時には行動していた事もザラだ。
まあ、間違った行動ではないため、別段気に止める必要はないだろう。ただ、失礼に値する場合があるので、今後は注意する必要が出てくるが・・・。
テネット「これは・・・トーラさんは狼人族でしょうか?」
トーラ「はい・・・。」
リドネイ「狼人族ですか、珍しいですね。」
テネットとリドネイにより、トーラの種族が挙げられた。獣人の一種で、狼人族との事。となると、頭の犬耳と思ったそれは、狼耳と言った感じか。
狼人族。数ある獣人族の中で、個体数が少ない種族との事。大森林の奥地に住み、滅多に人前には姿を現さないらしい。テネットやリドネイが挙げた通り、街中に現れるのは非常に珍しいと言う。
リドネイのダークエルフ族と同じく、超寿命で非常に優れた力を持つと言われる。特に凄いのが、巨大な狼に変身できるらしい。しかも、3m以上の超巨体らしい。
どれも“らしい”で片付けるしかないのだが、実際にその姿を見た者は非常に希だという。異世界出身の俺からすれば、更に希極まりないとしか言い様がない。
また更に凄いのが、狼人化という人型の姿に変身もできるらしい。3m以上の超巨体が圧縮されるのだから、その戦闘力は凄まじいものがあるだろう。
幼子に見えるトーラだが、実際は相当な力を持っていると、改めて確信が持てた。
トーラが街へと訪れた理由は、離れ離れになった家族を探して、長い旅を続けている最中だったとの事だ。その際に、荷物持ちで加入したのが、先程の愚物パーティーだったという。幸いにも、彼女の詳細は察知されていないようだ。
狼人族は非常に希少な種族なので、良からぬ事を抱く存在が現れないとも限らない。それを踏まえれば、連中から追放されたのは幸運だったと思う。
ただ・・・再び横槍を入れて来るのは目に見えている。この手の流れなら、間違いなく彼女を狙って来る。それなりの対策を講じた方が良さそうだ。
トーラ「・・・テネットさん、この街に狼人族が来た事はありますか?」
テネット「“私が知る限り”では、今の所一度も来られていません・・・。」
エルフィ「探りを入れれば更に分かると思いますが、個人情報の問題がありますからね。」
トーラの問いに、言い辛そうに語るテネット。その彼女のフォローをするエルフィ。彼が言う通り、この問いに関しては個人情報に引っ掛かる恐れがある。故に、“私が知る限り”と言い留めたようである。
冒険者ギルドの重役を担っているだけに、調べれば調べられるのだろう。だが、それが制約により不可能な事に、非常に歯痒い思いを抱いているようだ。
ナディト「なーに、気にする事ないっすよ。一緒に旅をすれば分かりますって。」
ミスターT「ハハッ、俺もその言葉に乗らせて貰うわ。」
重苦しい雰囲気を一蹴するナディト。つまり彼の方も、今後の面倒を見続けるという現れになる。と言うか、ここまで首を突っ込んだのなら、最後まで突っ走るしかない。
それに今後、横槍が発生するのが確実ならば、盤石な準備をして迎え撃つに限る。警護者の世界では常套手段である。
ミスターT「トーラさんや、暫くの間は一緒に行動した方がいい。あの連中の事だ、必ず貴方を襲撃するだろう。」
トーラ「はい・・・お願いできますか?」
ミスターT「ああ、全て任せな。」
今後の展望を予測して、非常に不安な表情を浮かべるトーラ。その彼女の頭を、再度優しく撫でてあげた。他の5人を見渡すが、同じ様に頷いてくれていた。
先の愚物事変を踏まえれば、更なる横槍は必ず起こり得る。彼女の戦闘力次第では、対処不可能になる可能性も高い。となれば、今はトコトン加勢するに限る。
それに、最初に首を突っ込んだのは俺の方だ。ならば、最後まで責任を以て警護するのが警護者の使命である。ここに身内が居たのなら、確実に俺と同じ事を言い出すに違いない。
問題なのは、どのタイミングで横槍を入れて来るか、である。こちらが不利な状況に陥る場面か、トーラが孤立した所に一撃を入れる、これが無難な所だろう。
あの手の愚物は、自分達が有利になる場面でしか手を出さない。地球の愚物共も同じだ。それらを踏まえておけば、大凡の予測は十分掴める。
ともあれ、今はウェイス達の昇格試験に対して動くとしよう。
ちなみにここは、トーラも加入作戦に参加させる事にした。下手な場所に居たら、確実に連中に横槍を入れられる。テネットも太鼓判を押してくれているので、ここは共闘が無難だ。
そこで、再び武器屋と防具屋に訪れ、トーラ用の装備品を見繕う事にした。今の彼女は、道具鞄しか持っておらず、戦闘能力は皆無である。
彼女が得意としている戦術は、今現在何も把握できていない。本当は色々と検証したい所なのだが、今はぶっつけ本番で挑むしかない。
幸いにも狼人族は、基本戦闘力がズバ抜けて高いようなので、彼女に合った最大火力の獲物を持たせた方が良いだろう。後は修行あるのみだが。
第4話・3へ続く。
手負いの獣ほど恐ろしいものはない、でしょうか。まあ、同編ではそれらも全て完全駆逐させていきますが@@; 狙うはオールハッピーですよ(=∞=)
しかし、徐々に詳細描写が減りだして、会話が多くなりだしている感じですが><; 自分のスタイルは会話中心なので、何ともと言った感じですが><; ここを律さないと今後が危うそうです(-∞-)




