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覆面の苦労人 ~遂行者代理の生き様~  作者: バガボンド
第1部 遂行者と警護者と
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第3話 昇格試験への加勢1 戦闘訓練(通常版)

 宿屋にて、リドネイの治療と解放を行った。トントン拍子と言うか、見事なまでのものだ。



 治療は、身体全体にあった傷と、不治の病とされる病気である。傷に関しては、彼女曰く切り傷などだったとの事。彼女の経緯はまだ伺っていないが、奴隷に至る前に受けたものだと言っている。筆舌し尽くし難い愚行である・・・。


 不治の病に関しては、これは彼女をしても不明だったとの事。ただ、元来から長寿命たるダークエルフ族の力を阻害させていた事を踏まえれば、呪いの類だったのかも知れない。彼女自身は体力の低下もあると言っているが、恐らくそれだけではないだろう。


 前者は人為的なものなのは明白だが、後者は全く以て分からない。精神力が凄まじいまでに高いダークエルフ族に、こうした呪いの類を施せる存在がいるのかとも思う。


 ちなみに、ダークエルフ族の詳細に関しては、創生者ティルネアから伺った。また、身内のネタなども大いに役立っている。ダークエルフ族の精神力が高いと知れたのは、これらの情報からである。


 ともあれ、これは今後の課題となるだろう。幸いにも今後は、リドネイの傍には俺や創生者たるティルネアがいる。リドネイに降り掛かる火の粉は、全部薙ぎ払ってやるわ。



 解放に関しては無論、奴隷の身分からの解放だ。本来ならば、それなりの手順を踏んでの解放との事だが、俺やティルネアが行ったのは超強引な感じだったらしい。


 奴隷の隷属化だが、物品と魔法によるものとの事。物品は簡単な標装もあるが、中には首輪に特殊な機構を施すものもあるという。デカい針が飛び出したり、際限なく締め付けるなどの類らしい。


 これだけでもエゲツナイ様相だが、魔法の方は更に酷いという。そもそも、首輪の機構は非常に高額になるとの事。貴族などの高貴な存在なら、そういったエゲツナイ仕様のものを使うらしい。用いる連中の性格が、嫌なほど窺い知れるわな・・・。


 それらの特殊な機構を持つ首輪を持てない人物のために、隷属化の魔法が存在するという。こちらは主人と奴隷との間で契約するようで、奴隷は主人に一切逆らえなくなるらしい。


 もし逆らった場合は、あの魔法陣から夥しい雷が奴隷を襲うという。末恐ろしい限りだわ。それはまだ緩い方で、凄いものでは精神面を破壊するものもあるらしい。


 ティルネアが曰く、リドネイに施された魔法陣は、雷が襲うタイプとの事だ。もしも、はなかったが、彼女にその雷が降り掛からなくて本当に良かったと思う・・・。


 まあ、彼女の気質からすれば、裏切り行為はまずないと確信が持てていたので問題はない。それに、既に取り外した首輪は、内在する能力を失っている。



 そこで、ここは一計を案じてみた。一応、任意鑑定能力にて首輪の状態を確認し、再度彼女に装着して貰った。できればこの行為はさせたくなかったが、外面的に彼女を奴隷に仕立てて見せる必要がある。一種のカモフラージュだ。


 今後、彼女が利用される可能性があるかも知れない。その可能性を文字通り覆す作戦だ。これの理由だが、彼女が高貴なる存在だと思ったからだ。


 それに、外面的に奴隷として見られれば、要らぬ横槍はないだろう。これに関してだが、ティルネアが言うには奴隷制度の力強さが挙げられた。


 何でも、他者の奴隷に横槍を入れた場合、恐ろしいまでの罰則があるという。これは各国が奴隷制度を合法的にさせるための処置らしく、内容は罰金や禁固刑、仕舞いには極刑に及ぶらしい。奴隷商館にいた奴隷達が、それなりの扱いを受けていた理由がこれである。


 リドネイの場合は、何れ死去する事を踏まえての扱いだったらしいが・・・。彼女を救出する事ができたのは、本当に不幸中の幸いだったわ・・・。


 流石の罰則群でも、奴隷商には厳しい刑罰は与えられないという。国が彼らに全幅の信頼を置いているとも言われている。それ故に、奴隷商側も国を裏切る行為はないとの事だ。


 まあ、偶に例外があるらしく、その時は悲惨な末路に至るらしいがな・・・。



 ともあれ、仮奴隷という位置付けのリドネイならば、下手な横槍は入らないだろう。それに恐ろしい事に、彼女にはティルネアの分身が付与している。


 ティルネア自身、その精神体を複数に分割できるという。母体を俺に、分身体をリドネイに付与してくれている。これにより、俺とティルネアでしかできなかった念話に、リドネイも加入する事ができるようになった。


 この念話に関しては、秘密裏での会話には打って付けの能力としか言い様がない。今後の活動に十二分に活躍してくれるだろう。


 それに、もし現状のリドネイに横槍を入れようものなら、それは創生者に横槍を入れる事になる。その後はまあ、お察し下さいと言うしかない・・・。



 それと、リドネイも既に個人スキルを取得していた。これは、俺が創生者ティルネアから受けたようなものではなく、異世界に根付く普通の啓示的なものになる。


 リドネイが取得したスキルは“叱咤激励”。周辺の味方に支援効果を与えるというらしい。ゲーム的に解釈するなら、命中率と回避率の激増である。そう、激増だ。


 実際にその効果を試してはいないが、彼女が浮かんだ効果内容では、力の入れ具合により20%から100%まで上がるらしい。と言うか、命中率100%に回避率100%とか、正気の沙汰とは思えない。


 確実に攻撃を与える事ができ、確実に攻撃を回避する事ができる。しかもこれ、効果範囲は個人からパーティー、そして軍団や国にまで至る規模と言う。権力者共が知ったら、喉から手が出るほど欲しがるに違いない。


 ちなみに、俺の金剛不壊も同じ様なものになる。個人からパーティー、そして軍団や国にその効果を拡げる事ができる。


 この様な絶大な力を持つスキルには、何らかの等価交換があると思ったが、ティルネアが言うには“完全なる無償”らしい・・・。何ともまあ・・・。


 どちらにせよ、俺とティルネアにリドネイのスキルは、異世界の権力者共が欲する力になるだろうな。十分注意しないといけない。




 治療と解放事変から翌日。今は冒険者ギルドの訓練場に訪れている。こちらだが、事前に予約さえすれば、ギルド会員でなくても使えるのがウリである。


 だが今回は、事前の予約はしていない。ところが、先日の魔物の素材を売却したのが功を奏した形だった。受付嬢のご厚意により、貸し出しには快く承諾してくれたのだ。


 それに、若干の下心があるのも感じられる。そう、俺やリドネイの身形を見てのものだ。上手くすれば、腕のある冒険者を新規に招く事ができる、そう取ったのだろう。まんまと餌に引っ掛かったカモになるが、今は彼女のご厚意に肖るしかない。



「う~む、いいねぇ~。」


 訓練場にて、日本刀を構えるリドネイ。鞘から抜き放つ刀身が、日の光に照らされてキラリと輝いている。そのまま、自分なりの立ち振る舞いをしだした。


 あれから伺った所、彼女は戦闘経験があると判明した。しかも、かなりのやり手だと言う。それを疑う余地は全くない。


 その理由だが、日本刀は構えの姿勢で、それを扱う人物の様相が判明される。異国の獲物ではあるが、彼女にとってみれば武器の1つなのだ。特に基本を忘れない彼女とすれば、基本に忠実になるほど獲物の真価が発揮される。彼女の体力や腕力も後押ししていると言えた。


 ただ、彼女の背丈からすれば、通常日本刀よりは太刀型日本刀の方が合うかも知れない。体躯の丈夫さに関しては、リドネイは十分過ぎるほど強者のレベルである。


「おおぉ・・・この武器は素晴らしいものですね!」

「ふふり、お前さんも分かるのか。」


 日本における武士道とは異なるが、その捌きは目を見張るものがある。これならば、彼女の獲物事情に関しては問題ない。


(リドネイ様も魔法が使えるようですので、属性付与で火力増加も見込めますね。)

(切れ味抜群の日本刀に属性付与とか、鬼そのものだわ。)

(本当にそう思います。)


 本当である。唯でさえ切れ味が凄まじいのに、そこに属性付与となれば化け物と化すのは言うまでもない。しかし、騎士が持つ剣や大剣ほどの耐久力はないため、長時間の使用には適さないかも知れない。


 日本刀の真髄は、斬り付けである。騎士剣は叩き付けであり、完全に獲物の分野が違う。一応、突きこそ可能であるが、下手をしたら折れる可能性もある。



「とりあえず、当面はこれらを使ってくれ。」

「よろしいのですか?」

「問題ない。俺にはこれがあるからの。」


 そう言いつつ、腰の携帯方天戟を展開する。更に、背中の携帯十字戟も展開した。異世界の獲物を見て、輝かしいまでに目を見開くリドネイ。


「す・・凄いです・・・。まさか、そこまで大型の武器に変化するとは・・・。」

「地球に居る、身内の逸品よ。」


 日本刀を鞘に収め、腰のベルトに差しつつ、俺の2つの獲物を見入ってくる。そんな彼女に携帯方天戟を差し出した。それを受け取ると、一瞬だけたじろいだ。


「甘く見ていました・・・。ここまで重量があるとは・・・。」

「ハハッ、何とも。」


 バツが悪そうに語る。リドネイの体躯をしても、携帯方天戟は重い部類に入るのだろう。まあその通りか。先程構えていた日本刀の重量からすれば、確実に数倍の重さになる。


 俺も携帯方天戟を初めて持った時は、その重さに驚かされた。ゲームを題材とする獲物になるが、ここまで大振りの戟だったとは思いもしなかった。


 ただし、慣れてくれば問題なく扱える。身内が十八番たる、“力の出し加減の触り”次第でどうにでもなってしまうのだ。これは更に重量がある、携帯十字戟も全く同じである。



 体躯が優れているリドネイは、一応携帯方天戟を振るう事ができた。しかし、俺が片手で振るう事ができるのに対し、彼女は両手で重そうに振るっていた。


 更に携帯十字戟に関しては、まるで大盾を扱うかの如く振る舞っている。ただ、同獲物はクロスしている箇所から分離する事ができる。その場合は、両手に持って軽々と振り回していた。見た目からすると、両手に両刃槍的な獲物を持っているように見える。


 この場合だが、携帯十字戟の本来の重さから解放され、両手にその負荷が分担されている。これの影響もあってか、彼女の場合は分離させて使った方が扱い易いみたいだ。


 この様相を踏まえると、彼女は身丈に近い槍か戟を使うのが無難か。何れ彼女専用の獲物を用意する際、今の立ち振る舞いは大いに参考になると思われる。



「とりあえず、今は通常日本刀と太刀型日本刀の2つを使うといい。」

「ありがとうございます。」

「後々、お前さんに合った獲物を見繕わねばの。」


 彼女から携帯方天戟と携帯十字戟を受け取り、縮小して腰と背中に格納する。再び日本刀を鞘から抜き取り、構えの流れを取り出した。2つの重量獲物での振る舞いが功を奏したのか、先程以上に日本刀を華麗に振るっている。


 この太刀捌きを見る限り、彼女はレイピアなどにも相性が良いかも知れない。ただ、現状は射突タイプの立ち振る舞いではないため、どちらかと言うと直剣や大剣などが合うだろうな。


 それに痛感した事がある。彼女は無論、俺自身も盾を入手すべきだ。相手の攻撃が未知数なため、それを受け止める獲物が必要になる。盾は獲物とは言えないが、殴り付ける事ができるので獲物とも言えるだろう。


 一応、武器を使った受け止めも可能ではある。獲物同士の受け止めぐらいなら問題ないが、あまりにも隙間が有り過ぎる。特に弓矢や魔法に対しては無防備過ぎるのだ。ここは盾の恩恵を受けるべきである。


 日本刀を用いた立ち振る舞いを繰り返すリドネイ。その彼女を一服しながら見守った。


    第3話・2へ続く。

 個人スキルは影響大の様子@@; ともあれ、本格的に始動しだした面々。今回の5分の1話は、8割が詳細描写ばかりでしたね><; これが探索者や警護者であれば、更に良くなったのですが><; 今後の課題です@@;


 とりあえず、次の更新からは通常更新に切り替えますm(_ _)m あまり連投すると、ストックが枯渇してしまいますので><; 色々と申し訳ないですm(_ _)m

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