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覆面の苦労人 ~遂行者代理の生き様~  作者: バガボンド
第1部 遂行者と警護者と
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第2話 奴隷のダークエルフ5 リドネイの視点

 ~リドネイの視点~


 私はリドネイ。ダークエルフの一族で、今は奴隷の身分。いや、今までは、と言うべきか。


 とある事情によって奴隷の身分へと陥り、苦境に立たされた・・・。しかも、身体中に回復不可能なレベルの傷を負わされる・・・。更には不治の病も植え付けられた・・・。


 それが何なのかは、私の浅はかな知識では分からない。だが、間違いなく自身の命に関わるものなのは痛感した。それに、これらの負傷を負わせた相手も、明確に覚えている・・・。決して、許せるものではない・・・。


 奴隷の身分に至ってからは、各街の奴隷商館を転々とさせられた。幸いなのか、私に植え付けられた負傷により、誰も買い手となる存在はいなかった。もし居たとしたら、間違いなく慰めモノとして扱われただろうな・・・。


 ラフェイドの街に訪れてからは、ずっと檻の中で過ごしていた。ここでも買い手はおらず、ただ絶望が支配し続ける日々を過ごした。時間と共に、身体の負傷も悪化していった。


 どのぐらい経過したかは分からない。私の体力が限界に達しようとした時、その方は突然現れた・・・。



 初めて見た時、正に変人だと思った。いや、そう思うしかない。黒い覆面と仮面を着用していたのだから。この変人が、私の主人となる事を直感した。


 変人であれば、その後の対応は容易に想像が付く。私の身体を慰めモノとして、雑に扱うのだろう。力のない私には、それを否定も拒否もできない。


 しかし、奴隷商が使った隷属魔法を受けた時、その変人の意識が感じ取れた。痛烈なまでの苦痛に苛まれた一念・・・。私の境遇など話にならないレベルである・・・。


 どうしてそこまで、己を叱責し、苦しめ続けるのか。その理由は追い追い知る事になる。



 衣服店に同伴されたのにも、非常に驚かされた。奴隷の私に、何と衣服を見繕ったのだ。ただ、下着以外が男物だったのには、別の意味で驚かされたが・・・。この時は素直に、流石は変人だと思ってしまったが・・・。


 ただその後、宿屋に案内させられて身構えた。やはり、その手の男であったのかと思った。だが、その時の私にはどうする事もできなかった。


 そして・・・驚愕させられる事になる・・・。



 その変人たる彼は、私の傷と病を超絶的な魔力と魔法で治療させてしまったのだ・・・。


 傷の方も、病の方も、最早治る見込みはないと確信していた。それが、たった数分の治療で完全に癒えてしまった。流石の私も驚愕し、身体中の包帯を剥ぎ取り見入ってしまう。


 すると、その変人・・・いや、その恩人がソッポを向くではないか。私の方も、今の出で立ちに、この上ない恥かしさに襲われた。だが彼は、私の事を女性と見てくれている事に気が付いた。


 こんな私を、態々治療してくれたのだ・・・。これがどれだけ嬉しかったか・・・。今も当時を思い浮かべると、恥かしさと共に胸が苦しくなる・・・。



 同時に、彼の傍にいた精神体の御仁には驚愕させられた。私は種族特有の力なのか、精霊的な存在を見る事ができた。ただ、先の負傷による体力と精神力の低下から、それを窺う事ができなかった。


 ところが、魔法治療で完全回復した事により、再びその力が舞い戻ったのだろう。彼の傍らにいた御仁を目の当たりにしたのだ。


 彼女の存在を窺って、度肝も抜かされた。精霊どころの話ではない。この世界を創生した、創生者ティルネア様その人だったのだ。


 ダークエルフ族にも伝承される、唯一無二の存在。数多く存在する神・・・いや、御仁はこの表現を嫌っていらっしゃったので創生者と呼ぶが、数多く存在する創生者の中で最強の存在である。


 その御仁が、恩人と共にいらっしゃったのだ。度肝を抜かれたのは言うまでもない・・・。


 だが・・・そんな事を忘れさせる出来事を、私は経験する事になった・・・。



 治療を終え、ティルネア様と共に衣服を纏い、恩人と対面した。私は感謝の思いを思うも、何をしてよいのか思い悩んでいた。すると彼は、私の前へと進み出て、何と私の首に施された奴隷の首輪を外してしまったのだ・・・。


 それだけはない。彼とティルネア様が私の胸に手を向けると、何と奴隷を隷属させる魔法を打ち消してしまったのだ・・・。


 その瞬間、私にあった楔は消え去った・・・。そう、忌々しい楔である・・・。そして、二度と得る事はないと諦めていた、自由を得る事ができたのだ・・・。想像を絶する歓喜が襲い掛かって来たのは言うまでもない・・・。


 同時に、想像を絶する不安も襲い掛かって来た。これは現実なのか、と。それに、目の前の恩人の意図が全く読めないのもあった。



 恐怖の何ものでもない。確かに、負傷と奴隷という楔からは解放されたが、それ以上に心に楔を打たれ、支配されたと言うしかない。


 そんな私の考えを、彼は一蹴してしまった。私と対等な立場、盟友と言う不思議な間柄を望んだのだ。ティルネア様は戦友以上と仰っていたが、それ程までの崇高なものなのだろう。


 そして痛感した。奴隷商が奴隷の隷属魔法を使った時、彼の一念を察知した。アレが何なのかと問い続けていたが、彼自身の境遇によるものだったと。



 後訊きになるが、彼は地球という異世界から召喚された人物だった。ティルネア様の遂行者として呼ばれたのだという。そして、彼が就いていた職業が警護者だった。


 向こうの世界では、警護者は護衛を携わる存在らしい。だが、その生き方は筆舌し尽くし難いものだった。特に驚愕したのは、私と同じ奴隷に近い存在を救出した時らしい。


 そう、奴隷の隷属魔法を受けた時に感じた一念。それは、私に対しての憂いの思いだった。私を奴隷として用いる事を、身が裂ける思いでいたという。


 故に、私を奴隷から解放してくれたのは、彼が必ずそうするのだと誓っていたからだと。その流れにより、傷と病の完全回復を行ってくれたとも。



 これ程までの変人・・・いや、恩人は他にはいない・・・。初対面時は、確かに変人だと思ってしまった・・・。それは心からお詫びするしかない・・・。


 だが・・・そう、変人だと言わざろう得ない生き方をしていたのだ。それも意固地なまでに貫くように、である。


 彼は共に戦う存在を求めてはいたが、私は彼とのこの出逢いが運命であると痛感している。一体全体、何処でどう至れば、この様な事になるのか教えて欲しい・・・。



 今も気さくに笑う彼こと、ミスターT殿。覆面と仮面を装着した変人・・・失礼・・・。


 それでも、私の苦痛を取り払ってくれた、心から敬愛する恩人。そして、彼ならば、私が悲願としている事を達成してくれると確信が持てた。ティルネア様のご加護を受けている存在なのだ、彼であれば如何なる障壁だろうが叩き壊せる。


 ・・・利用しようとは絶対に思いたくない。しかし、彼でなければ達成できないだろう。時が来たら、この思いを打ち明けたい・・・。


 そして・・・それが達成できたのなら・・・、彼に身も心も全て委ねたい・・・。私の苦痛を取り払ってくれた、心から敬愛する彼のために・・・。


 ~リドネイの視点、終了~


    第3話へ続く。

 リドネイさんの視点でした。彼女の詳しい設定は、今後の話の流れで構築しようかと思っています。ええ、全体的な流れは踏まえているものの、その道中は“フリーシナリオシステム”です(=∞=)


 しかしまあ、詳細描写と第3者視点は難しい><; 何時も主人公視点で進めているので、なかなかに厄介ですわ@@; ただ、ここで修正を加えないと、後々苦しい事になりますし><; 悩ましいですわ(-∞-)

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