第12話 エーディスリーア帝国8 一時の安らぎを(通常版)
「お前さんが良いなら、今度一緒に暴れてみるか?」
「なっ?! ほ・・・本当なのか?」
「俺は嘘は言わんよ。周りの煩さは、彼女が黙らせてくれそうだしの。」
「漸く出番ですね♪」
そう言いつつ、登場を促した。直ぐさま顕現化を通して、満を持して現れるティルネア。当然ながら、その姿を見たシュネリアは、驚愕の表情を浮かべだす。何と、その場で片膝を付いて跪きだしたのだ。そんな彼女を見て、慌てて構わないと両手を振るティルネア。
その様相を見て、本物の人格者であると痛感した。一国の主であるシュネリアが、即断即決した行動である。創生者ティルネアを崇めていなくても、創生者という存在を称えているとも言える。
そして、王国の愚王の言動が蘇る。ティルネアが顕現化しても、奴は頭すら下げなかった。他の王族共や貴族共も全てである。この姿勢が、全てを物語っていると言えた。
「はぁ・・・驚かせよってからに。」
「何を失礼な事を仰いますかね・・・。」
「創生者の肩書きも、色々と苦労させられるわな。」
今も跪くシュネリアの元に近づき、そのまま彼女を左肩へと担ぎ上げた。その行動に再び驚きだすのだが、気にせずに立ち上がる。気丈なように見える彼女も、実際の所は普通の女性なのだから。
流石のティルネアとリドネイとセアレスは、今回は茶化しを入れて来なかった。シュネリアの事情を伺ったからだ。もしかしたら、彼女達が俺みたいに体躯が良ければ、同じ行動をしたと思われる。
「あ・・あの・・・重くないですか?」
T「こら、それはタブーだろうに。」
「「「そうですよねぇ~。」」」
俺が言った事ではないのだが、シュネリアの発言を聞いて、殺気に満ちた視線を投げ付けて来る3人。今回は、しっかりとした追撃の1つだろう。何ともまあ・・・。
まあ、今のこの瞬間だけは、シュネリアから皇帝の肩書きを無くしてあげたい。普通の女性として、俺達と接する機会ができたのは幸いである。むしろ、今後も必要な厚意である。
そう言えば以前、地球での警護者の活動時も、同様の流れがあった。とある財閥の社長令嬢の身辺警護を請け負った時だ。当時の様相は、確か誘拐を仄めかす予告があったのだ。
依頼中は、社長令嬢と数日間一緒に過ごす事になった。当初は心を開いて貰えなかったが、お節介焼きと世話焼きの気質が功を奏したのだろう、直ぐに俺に懐いてくれたのだ。年齢差は20歳程度だったと思うが、兄妹の様に接してくれていたのが嬉しい限りだった。
邸宅内を移動するぐらいでしかないが、その時は手を繋いでいたのも懐かしい思い出だわ。幸いにも、誘拐犯とされる輩は、別の警護者達が捕縛してくれていた。
別れ際は大変であった。大泣きする社長令嬢に、周りはテンヤワンヤである。そんな彼女の額に口づけをしてあげたら、一発で泣き止んだというのも見事だった。
俺の幼少の頃を知る身内が言っていた。俺が孤児院に居る時は、泣いた幼子を同様の厚意で一発で泣き止ましていたと言う。特に女性に対して効果絶大だった事から、女性誑しの嫌な称号を与えられたのだがな・・・。
何にせよ、当時の様相があったからこそ、今の俺が存在している。当時の社長令嬢の幼子にも、心から感謝をしたい。
シュネリアを担いだままでいると、全ての冒険者達が撤退した事が念話より伝わって来る。そこで、今のまま帝国に向かう事にした。
再びシドロモドロになる彼女だが、アリベアやメイラは良い機会だと背中を押してくる。傍らのティルネア・リドネイ・セアレスも同様に背中を押してきた。何だか、皇帝陛下を弄ぶ女性陣に、変な冷や汗が出てきてしまう。
だが、事の発端は俺である。となれば、最後まで貫き通してこそ意味がある。ここは、引き続きシュネリアを左肩に担ぎつつ、一時の安らぎを満喫させてあげる事にした。
・・・後で、宰相達からドエラい大目玉を喰らいそうだが・・・。
帝国本土へと再到着する。俺達が最後だと思っていたのだが、何と最後までミオルディアとティエメドラがワームゲートの魔法を使い続けてくれた。これには心から脱帽である・・・。
逆に、彼女達がシュネリアを肩に担いでいる事に驚愕していた。護衛に回っていた衛兵達も全く同じである。だが、シュネリアを知る面々は、彼女が何時になく笑顔である事に気付いたようだ。
もし、肩担ぎを無理矢理やっていたのなら、ここまでの笑顔ではないだろう。シュネリア本人が、心から喜んでいる何よりの証拠である。それに、彼女と親しいアリベアやメイラも、何時になく優しい表情を浮かべていた。
一瞬の一時でも、皇帝の重圧から解放され、普通の女性として過ごせた事に喜んでいる。そんなシュネリアの癒しの一時に対して、一役買えた事に心から感謝するしかない。
ちなみに、俺からすれば、シュネリアとアリベアとメイラの表情は窺い知れない。それを知れたのは、今も精神的には憑依中のティルネアによる補足である。無粋だが、一応・・・。
俺達が帝国本土へと到着すると、漸くワームゲートの魔法は終わる。淡く白いモヤが消え、ラフェイドの街との移動はできなくなった。これ以降は、片道数日程度の移動でしか、現地に赴く事はできない。
同時に、これでラフェイドの街はエーディスリーア帝国との合併を果たした事になる。
しかしまあ・・・本当に短期間での街の大移動とは・・・。それだけ、ティルネアが誇る空間移動魔法は超越しているとしか言い様がない。
だが、これでもまだ未完成な感じだ。その理由は、淡い白いモヤを通らねば、現地に到着する事ができないからだ。しかもこれ、敵側も巻き込んで移動させてしまうデメリットも発生してくる。
そこで、念話力と同じ様にカスタマイズする事になったようだ。当然、その大役は創生者たるティルネアにしかできない。時間魔法と空間魔法を伝授された俺ですら、ワームゲートの更なる改良は不可能だ。
この逸脱した魔法にも、念話と同じく使用者の一念で使えるかどうか判断させると言う。善心と善心寄りの中心にニュートラルの中心、その人物でしか扱う事はできない。少しでも悪心の一念が入れば、即座にその効力を失うのだから。
本当に、彼女が創生者である事を痛感させられる。こうした、異世界に通じる力量を改変できるのだから、凄いとしか言い様がない。
夜も夜という事なので、食事を取って解散となった。詳しい話などは後日との事だ。
夜食は、警備中に軽食程度は取ってある。本格的に取るには夜が深いので、ここは我慢して翌日に回す事にした。
むしろ、超行軍で活動をしていたからか、どの面々も非常に疲れた表情を浮かべている。かく言う俺もしかりで、今はゆっくり休みたい。
テネット達が用意してくれていた宿屋へと向かい、その日は終了となった。本当にお疲れ様と心から言いたいわ・・・。
第12話・9へ続く。
皇帝陛下を肩に担ぐ@@; まあ、相手を一個人と見なすなら、恐れ多い概念すら沸かないのでしょうけどね。あくまで対等な立場として、人としての厚意を、と。
しかし、今回は詳細描写が8割以上と><; これが警護者や風来坊だと、ものの数行で終わりそうな気がします><; やはり詳細描写版で大改修を行うべきでしょうね。悩ましい(>∞<)




