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覆面の苦労人 ~遂行者代理の生き様~  作者: バガボンド
第1部 遂行者と警護者と
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第2話 奴隷のダークエルフ3 奴隷の加入(通常版)

 目的地に向かう際、ティルネアより詳細な情報を伺った。


 この世界の奴隷制度は、各作品のと何ら変わらない。主従関係なのは相変わらずであり、裏切りを防止するために首輪や隷属魔法による拘束を用いるという。首輪による拘束という事なら分かるが、隷属魔法がある事には驚くしかない。


 ただ、これらの拘束具は、完全には束縛できるものではないらしい。特に主の行動次第では、それらの束縛は直ぐに解けるとの事。裏切りを防止できるなら、できればそういった拘束具は用いたくはない。


 まあ、この考えは俺個人の我欲に近い。俺自身が理不尽・不条理な概念を嫌うため、奴隷制度自体を敬遠している部分もあるからだろう。しかし今は、異世界の仕様として割り振るのが無難だな。


 ちなみに、奴隷を用いるのは、戦闘員の増加や各種雑用への配置が通例との事。各作品でも挙がる、慰めものとしても用いられているようだが、警護者である手前それは完全なるタブーそのものだ。


 そもそも、地球での警護者の位置付けは、そう言った人として扱う事をしない勢力に対してへの介入だ。この場合は問答無用で武力行使を行い、救出後には徹底的に壊滅を図っている。


 そんな警護者の中の1人たる俺が、奴隷を用いる事になる事実。そう思うと、実に罪深い行いとしか言い様がない。まあここも、異世界仕様と割り振るべきだろうな・・・。




 冒険者ギルドより徒歩数分後、目的の奴隷商館に辿り着いた。冒険者ギルドと同規模の店舗だが、雰囲気は非常にマイナス面を孕んでいる。ティルネアが悲痛な表情を浮かべているのが何よりの証拠だ。


 しかし、この奴隷制度自体が世界に根付いた概念であるのも事実。それは創生者たる彼女も弁えているようで、心を鬼にして黙認している様子だ。実に嫌な役回りだろうな。


 ともあれ、今は今後の行動に際しての戦力が必要だ。最低1人でも良いので、仲間が増える事ができれば幸いである。



 冒険者ギルドの様な木製の扉を開けつつ、店内へと入店する。カウンターは普通の作りになるが、店舗の奥から感じられる負の感情が不気味に漂っている。恐らく、商品たる奴隷達の一念だろう。


 これも過去に地球にて、捕縛されていた人物と対峙した時に感じられた感情と同じだ。壮絶な一念を抱く彼らの様相は、筆舌し尽くし難いものだった。それでも、解放されてからの表情を見れば、救出に携わって良かったと何度も思う。


 今は完全に真逆の立場になりそうだが、この異世界を救う戦いには必要な行動だ。創生者の代理人としての心構えで動くのみである。


「・・・いらっしゃいませ、旦那様。・・・どの様なご用でしょうか?」


 店舗の奥から現れる、みずほらしい姿の男性。しかし、何処かギラついた雰囲気を放っており、油断できない感じである。奴隷商故の気質と言うべきだろうか。


「お初にお目に掛かる。奴隷を探しているのだが。」

「・・・かしこまりました。ご要望などはございますでしょうか?」

「条件なんだが、できれば予算は銀貨100枚までで頼む。」

「銀貨100枚ですか・・・。では、こちらへどうぞ。」


 予算を伺い、怪訝そうな表情を浮かべてくる。推測だが、このぐらいの資金では購入する事ができないのだろうな。しかし、いわく付きの人物なら見当が付くのか、俺を店舗内へと招き入れてきた。


 日本円での換算が10万円相当であれば、それで奴隷が購入できるのは非常に難しいとは思う。そもそも、言葉は悪いが、質は相当悪くなると思われる。それこそ金貨1枚以上の人物なら、それなりの相手と巡り逢う事ができると推測できるが。


 ともあれ、今は手持ちの予算を銀貨100枚と仮定して動くしかない。残りの資金は物品の購入などに当てねばならないしな。目立たずに立ち振る舞うのは、地球でも異世界でも本当に気苦労に耐えない。



 店舗内の奥にある、奴隷達が置かれている場所。倉庫に近く、どの奴隷達も鉄格子の檻に入れられている。地球人の俺には受け入れ難いものになる。見ていて居た堪れなくなるが、これが異世界の様相だ。


 それに大事なのは、俺が遂行者たる警護者である点だ。その行動に関して、必要な戦力を求める行動である。特に裏切りがないとされる奴隷ならば、今は彼らの恩恵に与るしかない。


 幸いだったのが、鉄格子に入れられている奴隷達は、それなりに対応されているようだ。各作品に見られる、劣悪な環境という状態ではない。むしろ、店主たる奴隷商の方が、ある意味で劣悪な環境だと言わざろう得ない・・・。


 案外、この奴隷商は奴隷達を大切にする存在なのかも知れない。自らの環境を差し置いてでも、である。まあ、檻に入れられているという実状が、何とも言い難いものではあるが。



 案内されたのは、店舗奥の倉庫の更に奥、非常に薄暗く汚い場所だった。衛生面で大丈夫かと思ってしまう。それでも、普通の運営はなされているのが幸いか。やはり俺が知る異世界事情とは異なっている。


 そして、指定の檻の前で立ち止まった。彼が指し示す先には、中で横たわる奴隷がいる。身体中に包帯が巻かれており、何らかの怪我を負っているのが分かった。一応の対応はされているようだが、体調の方は良くないと思われる。


「・・・こちらの奴隷は、ダークエルフとなります。本来ならば、金貨1枚以上からの値段となりますが、負傷し病を患っていますので、銀貨100枚で構いません。」

「ふむ・・・。」


 俺達のやり取りを伺い、徐に瞳を開ける。ボサボサの長い髪の毛と、胸の脹らみからして女性の奴隷だと分かった。この倉庫部屋が薄暗く、遠目では男性か女性か分からなかった。


 そして彼女は、ファンタジー世界で有名なダークエルフの種族らしい。ただ、身体中に包帯を巻かれているため、ダークエルフの味とも言える褐色肌は窺えない。少し残念に思ったが、今は雑念だと振り払う。


 しかし、彼女から感じられる雰囲気は、生きる事を諦めているものではない。虎視眈々とその時を待ち続けているかの様子だ。それに、身体中の包帯で窺う事はできないが、非常に気品に満ち溢れている。


 傍らの奴隷商は気付いていないのだろうな。この気品を踏まえれば、とても銀貨100枚で済む人物ではない。


 ちなみに、ダークエルフの種族は、確か忌み嫌われる存在だったと伺っている。情報の出所は身内達だ。だが、目の前の彼女は、まるで貴族かの様に感じられた。


「・・・分かった、彼女を仲間に招きたい。」

「かしこまりました。また、購入後の奴隷の返品は如何なる理由でも受け入れません。」

「ああ、了解した。」


 なるほど、奴隷商からしても厄介者を払いたい感じか。この気品を踏まえれば、それが冒涜に近い行いにも思えるが、今は考える必要はないだろう。


 もしかしたら、彼女の価値は価格以上の人物かも知れない。ただ、奴隷であっても、やはり目の前の女性を商品とは思いたくないものだ・・・。



 空間倉庫から銀貨袋を取り出し、銀貨100枚を取り出す。俺が持つ空間倉庫の存在に、奴隷商は目を見張ったのだが、細かい詮索はしなかった。


 奴隷自体の売買が、幾ら合法でもタブーに近い。世間体もあると思われ、要らぬトラブルは避けようと考えているのかも知れない。まあこちらとしては、非常に有難い対応ではある。それに下手な詮索をしない方が、後々の顧客になる可能性を掴めるだろう。


 タブーである合法売買だが、商人魂が感じられる。こうした奴隷制度がなくなり、彼が別の商売に手を付けられる世の中にできればと切なく思う。



 既に彼が持っていたトレイに、銀貨100枚を置いていく。店舗に入った際、俺が奴隷を必ず買うと読んでいたのだろう。サラッと出したトレイの存在が、それを物語っていた。


 銀貨100枚を数え終えると小さく頷く。腰にぶら下げている複数の鍵を手に取り、その中の1つを使って檻の施錠を開放した。鈍い金属音を放ちつつ、檻の扉が開いていく。


 そして、中にいる奴隷の女性を、表に招いていった。重々しい様子で身体を動かし、檻から出てくる女性。立ち上がって驚いたが、俺より首1つ分低いだけの巨漢こと巨女だ。



「奴隷への対応は、どうされますか?」

「契約だったな。」

「はい。」


 目の前に立つ女性。虚ろな瞳で見つめてくるが、やはり内なる思いは消え去っていない。それどころか、並々ならぬ闘志を感じさせてくる。彼女はある意味、レスラーに近いのかも知れない。


「とりあえず・・・首輪と契約を頼む。今はその状態でいい。」

「・・・かしこまりました。」


 再び怪訝そうな表情を浮かべる彼。それもそうだろう。彼女に対しての対応が、人としてのものだからな。立て前としては奴隷ではあるが、俺としては普通の女性である。


 それに取り引きを終えたら、直ぐに行動に移した方がいい。彼女の身体の傷は、かなり多く存在するのが分かる。全身に巻かれた包帯が、全てを物語っていた。


 その後、新しい首輪を彼女に装着し、隷属の魔法を俺と彼女に施す奴隷商。小さな魔法陣が展開され、何らかの作用が働いたのを感じた。


 この部分は全く以て未知数だ。そこで、念話でティルネアに“解除が可能”かを伺うと、解除は可能だとの回答を得られる。それを聞いて、一安心と言った所である。


 ただ、今は表面上の体裁は主人と奴隷のままでいい。奴隷商館を出た後で、行動に移すのが無難だ。世間体の目を気にするのは、地球でも異世界でも変わらないわな・・・。



 隷属の魔法が済み、全ての取り引きが終了した。女性を連れて、店舗裏の別の入り口より表へと出る。どうやら店舗表の入り口は入店専用のようで、裏の入り口は奴隷と共に出るのに用いられているようだ。


 先にも挙げたが、奴隷の売買は合法であってもタブーに見える。それ故に、店舗から出るのにも人目を気にするのだろう。それでも奴隷の売買が成り立つ事から、これが異世界の仕様と言うしかない。


 裏口まで奴隷商に案内される。小さく会釈をしつつ、女性と共に立ち去った。彼女の方も奴隷商に頭を下げている。今までの恩義に対する礼なのだろう。


    第2話・4へ続く。

 奴隷さんの加入。どういった描写にするか悩みましたが、王道的な感じにしました@@; 加入者が亜人種なのは定石でしょうかね><; 悩ましい(-∞-)


 そう言えば、エルフの相反する種族?がダークエルフですが、それは“ライト”エルフなのですかね?@@; いえ、ダークの対義語がライトですし。となると、属性のエルフ軍団ができそうです><; ファイアエルフなど@@; 何とも(>∞<)

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