第2話 奴隷のダークエルフ2 4人の冒険者(キャラ名版)
受付嬢「こんにちは、どの様なご用件でしょうか?」
何人かの冒険者の対応が終わってから、受け付けへと足を運ぶ。カウンターには、緑色長髪の受付嬢がいる。かなりの美人さんだが、その雰囲気は冒険者に引けを取らない強さだ。
ミスターT「お初にお目に掛かる。撃退した魔物の素材を買い取って欲しいのだが。」
受付嬢「かしこまりました。向かって左側のカウンターまでお越し下さい。」
各作品では、余程の事がない限りは、ぶっきらぼうな会話で済ます事が多い。受付嬢への対応も、挨拶抜きの内容を提示するものだ。それらはフィクション作品であり、リアル世界に生きる俺としてはできない芸当である。
警察機構とは別になるが、規律軍団とも言われる警護者であるなら、挨拶ほど重要なものはない。この異世界の住人に変に思われようが、俺は一介の警護者故の生き様を貫くまでだ。
彼女に案内されつつ、目的の場所へと向かう。受け付けのカウンターより巨大で奥行きがあり、素材を置くスペースとして用いているようだ。
指摘された場所に、異世界に到来してから今に至るまでの魔物の素材を出していく。空間倉庫からの取り出しに、受付嬢が目を見開いている。多分、アイテムボックスと勘違いしているのだろう。
ただ・・・撃退した魔物の素材は結構多く、カウンターに乗せられたものを見て俺も驚いてしまった。何気なく倒し続けていた魔物達だったが、得られた素材も相当数だったからだ。
ミスターT「お嬢、質問があるのだが良いか?」
受付嬢「あ・・はい、何でしょうか?」
ミスターT「これらの素材の売却は、ギルド会員にならないと不可能なのか?」
全ての素材を出し終えつつ、気になっていた事を語った。冒険者ギルドに魔物の素材を売却する際、ギルド会員にならねばならないのかというものだ。カウンターの真上の掲示板を見る限り、特に目立った記述はなかった。
この手の魔物の素材の売却は、冒険者ギルドでしか行えないだろう。先刻の街歩きをした限りだと、それらしい売却店はなかった。こういった魔物の素材の売却は、冒険者ギルドが独占していると思われる。
まあ、どう考えても売買を行うには、一般の店舗では厳しい所があるだろう。そもそも、それらの素材を加工する事が難しそうだ。冒険者ギルドならば、各方面の加工屋と取り引きが可能だと思われるため、一括して行っていると見ていいだろう。
受付嬢「その様な事はありません。ですが、ギルド会員でない場合は、手数料を頂く事になります。よろしいでしょうか?」
ミスターT「なるほど、了解した。その取り引きで頼む。」
予測した通りの返答があった。冒険者ギルドの会員ならば、手数料は掛からないらしい。逆に一般人だと一定額の手数料が掛かるみたいだ。地球でも存在する、会員による各特典もあるため、ここは致し方がないだろうな。
逆に手数料のために、態々ギルド会員になる意味はない。異世界での俺の立ち位置は、完全なイレギュラー的存在だ。遂行者という警護者の役割上、“今は”この世界の流れに乗るのは得策ではない。
本来ならば、冒険者ギルドの会員になり、冒険者のランクという概念の享受を受けるべきであろう。ランクにより、様々な恩恵が得られるというのは、各作品でもある通りだ。
だが、俺はどうもランク制度は取っ付き難い性質だ。完全に嫌いではないのだが、それらに縛られるのが苦手である。神経質と言うか何と言うか、そう言ったものがあると最後まで取得しようとする悪いクセがあるからだ。
警護者になる前は、そう言ったランク制度にのめり込んだ事がある。それにより、ドエラい目に遭ったのも数多い。幸いだったのが、警護者にはランク制度が存在しなかった。己の実力がモノを言う世界だからな。
ただ、何れ冒険者ギルドの会員を勧められれば、完全に断る理由はない。先にも挙げたが、“今は”ただ、普通の“流浪人”を演じれればそれでいい。
受付嬢「お待たせ致しました。全素材の金額は、合計で銀貨350枚となります。そのうち、手数料に35枚ほど頂く形になります。よろしいでしょうか?」
ミスターT「ああ、問題ない。できれば、銀貨3枚を銅貨3000枚に換金してくれないか?」
受付嬢「分かりました。少々お待ち下さい。」
銀貨315枚、日本円で31万5千円相当の収入である。ギルド会員であれば、手数料で支払った銀貨35枚分が残ったのだろう。日本円で3万5千円相当だが、今は全く問題ない。
むしろ、あれだけの魔物達の素材で、銀貨350枚とは驚きである。カウンターに乗せた素材群の数が、実に凄まじいものだったのもある。これを1つの目安としておこう。
受付嬢「お待たせ致しました。こちらが換金分の銅貨3000枚です。」
ミスターT「ありがとう。また何かあったら頼むよ。」
受付嬢「はい、ご利用お待ちしております。」
銀貨312枚と銅貨3000枚が入った袋を受け取る。そのうち銀貨と銅貨を数枚だけ取り出し、空間倉庫へと袋を格納した。残りの硬貨は右胸のポケットに仕舞う。これで当面の資金は問題ないだろう。
次は情報収集となるが、ここは“凄腕”の冒険者達にご享受を受けよう。既に目星は付いているため、後は向こう次第という事になるが。
素材の売却を終えた後、冒険者ギルドのカウンターの右側、酒場カウンターに向かった。
酒が入った4つの小ジャッキと、簡単なツマミを複数トレイに乗せる。それを持ちつつ、ギルドの指定のテーブルへと向かう。先程、入店した際に目が合った冒険者達がいる場所だ。
ミスターT「お初にお目に掛かる。情報が欲しいのだが、大丈夫か?」
4人の元に近付くと、怪訝そうな表情を浮かべる彼ら。その彼らの前に、酒瓶とツマミを置いていく。喫茶店でも馴染みのある、ウェイターの立ち振る舞いだ。数十年ほど繰り返している姿が様になるのか、彼らの表情が変わりだした。
ミスターT「これは俺の奢りだ、遠慮せずに受け取ってくれ。」
冒険者1「は・・はぁ・・・。」
酒瓶とツマミを置くと、近場にあった椅子を持って腰掛ける。俺の言動に呆気に取られているのだが、そこに悪気がないのを感じ取ってくれたようだ。徐に酒瓶を手に持ち、ゆっくり酒を飲みだした。
俺は下戸であるため、酒自体は飲めない。飲めなくはないが、飲んだら最後、どうなるかは分からない。過去に身内達からは、以後は絶対に飲むなと言われた事がある・・・。
冒険者達が落ち着くまで、俺の方も別途用意したツマミを摘みながら待ち続けた。この手の対話の場合は、とにかく時間を掛ける事である。
ミスターT「俺はミスターTと言う。貴方達は?」
冒険者1「ウェイスと言う。」
冒険者2「サイジアと言います。」
冒険者3「ナディトです。よろしくっす!」
冒険者4「エルフィと申します。よろしくです。」
落ち着いた頃を見計らって、自己紹介を行った。不思議な事に、この4人は身内の中の4人と非常に似ていた。名前も雰囲気も、何処か彼らに似ている。
と言うか、背丈が彼らとほぼ同じだ。身内達より若干低いと思われるが、体躯の方だけは冒険者故にガチムチである。これで格闘技が使えれば、なかなかのレスラー風であろう。
ちなみに、4人とも人間の種族だ。一見すると多種族に見えなくもない。それだけ彼らが美形である証拠だ。羨ましい限りである・・・。
サイジア「なるほど、別の大陸から来たのですか。」
ミスターT「色々とあったからの。まあ、流浪の旅路は嫌いじゃないしな。」
エルフィ「胸中、お察しします。」
読んだ通り、この4人は非常に気さくで物腰が柔らかな人物達だった。初見こそ怪訝な表情をされたが、悪気がない事を直感で察知してくれたようである。それに、より身近に接した事により、彼らが凄腕である事を痛感する。
ウェイス「今の世上は、非常に殺伐としている。気になるのが、王国と帝国とのイザコザだ。」
ミスターT「ふむ・・・。」
ナディト「これ、非常に面白いんすよ。王国側が帝国側に横槍を入れているというね。」
ミスターT「何か真逆な感じがするが・・・。」
本当である。身内が語るネタは、大体が帝国が各国に横槍を入れる事が多い。強大な軍事力にモノを言わせ、他国へと侵略する様相だ。それが、どうやら横槍を入れられる側になっているらしい。
逆を言えば、今の王国側が危険な存在だろう。何でも、色々な力を手に入れだしてからは、各国への横槍が目立ちだしているとの事だ。詳しい事は分からないと言うが、恐らく直ぐに明るみに出てくると思われる。
これに関して、念話にてティルネアに伺ってみた。だが、彼女も詳細は分からないようだ。そもそも、創生者たる彼女は、世界全体のプラス面とマイナス面のみ窺っている。王国だけを警視している事はできないしな。
もしその行動が取れるのなら、俺が遂行者の任務に当たる必要はない。となると、彼女は俺の上司に当たる訳か。
ともあれ、これらの不穏分子を監視する任務に当たるのが、遂行者たる俺の使命である。ある意味、警護者としての使命とも言えた。
ミスターT「共闘できる仲間を探しているんだが?」
ウェイス「ふむ、戦力の増強か。俺達で良ければと言いたいが・・・。」
サイジア「近々、ランク昇格のクエストがありまして・・・。」
非常に申し訳なさそうに語る彼ら。ランク昇格のクエストは、指定されたクエストを攻略できれば、冒険者ランクがアップするらしい。ただこの場合、加勢者がいる場合は、攻略対象の相手や目的物が2倍になるとも。
彼らの現在のランクはBランクらしく、昇格クエストが成功すればAランクとなるようだ。1回までなら仮失敗という形にしても良いらしいが、2回目は完全に失敗扱いになると言う。初回だけは、彼らだけで挑みたいようである。
ミスターT「なるほど、了解した。となると、何か良いプランはあるか?」
ナディト「気乗りしないと思いますが、奴隷などはどうでしょうか?」
エルフィ「対象の奴隷にもよりますが、手頃で入手できると思います。」
ミスターT「奴隷、か・・・。」
その言葉にゾッとしてしまうのは、俺が現代人故だからだろうな。確かに即戦力にはなるとは思うが、人身売買によって力を得るのは良いのかどうか・・・。
ティルネア(この世界では、奴隷制度は当たり前に存在しますので。)
ミスターT(地球での価値観を用いるのは、無粋な感じという訳か・・・。)
フォロー的に言葉を入れてくれる彼女。創生者たるティルネアがそう言うのだから、それは致し方がないのかも知れない。地球の日本の価値観が根付いている俺には、非常に受け入れ難い様相である。
しかし、資金さえあれば、即戦力となる人材が直ぐに得られる。これは確かに有難い事ではある。俺がどう割り振るかで全てが変わるのなら、今はその力を享受するしかない。
ミスターT「色々と情報をありがとな。」
エルフィ「気にしないで下さい。お役に立てれば幸いです。」
ナディト「敬遠されがちの俺達に、声を掛けてくれただけ有難いです。」
屈託のない笑みを浮かべるエルフィとナディト。やはり、身内の面々に非常に似ている。その2人の言動に苦笑いを浮かべるサイジアとウェイス。こちらも身内の面々に似ていた。
各作品で登場する見た目の存在なら、この4人は間違いなく序盤の横槍冒険者と言える。しかし、目の前の4人は非常に気さくで温和、そして義理人情に厚い男達だと確信が持てた。警護者の生き様で培った、直感と洞察力の賜物だわな。
ただ、敬遠されがちという発言が気掛かりだが・・・。この場合、見た目で怖がれる存在だという事かも知れない。かく言う俺も同じ境遇を経験済みなので、その思いは痛いほど理解ができる・・・。
4人に小さく頭を下げて、冒険者ギルドから退店する。ナディトが挙げた、奴隷の売買を行っている店舗へと向かった。目的の場所は彼から伺っているため、直ぐに目的地へ向かう事ができた。
第2話・3へ続く。
連続投稿でし(=∞=) 魔物素材の売却で思い出したのが、DQ4の第3章・トルネコさん。彼が店を持つのに必要な金額が“65000ゴールド”と誤って聞いた事がありまして@@; 洞窟の開通が確かこの金額でしたよね@@; ええ、荒稼ぎして貯めました><;
資金が潤沢にあるので、その後はトントン拍子で進みましたが・・・第4章の中半でデータが消えたという・・・@@; あのデロデロ音が響きやがりました><; あの時の絶望感といったら(>∞<)
ともあれ、苦労人の劇中の4人組は、地球でもお馴染みの彼らと同じです@@b 名前の最初の文字を同じにしてあります。体格とかもですね><; 髪の毛の色とかは別だと思います、一応><; 何とも(-∞-)




