第11話 時間魔法と空間魔法8 容赦ない一撃(キャラ名版)
その後も、突発的に発生する戦闘を攻略しつつ、街道を進み続けた。
物理矢を撃ち尽くしたリドネイとナーシャは、近接戦闘での迎撃に走っている。それを見たセアレスも、同じく近接戦闘に切り替えていた。感化されるとはこの事だろうな・・・。
俺は引き続き、荷馬車上からの狙撃に明け暮れた。俺としては、誰かの支援に回ってこそ真価を発揮する戦闘スタイルである。地球の身内達からも大絶賛されている。
ただ、若干手数が欲しいと思うのはご愛嬌か。あと数人ほど居てくれれば、かなり有利に立ち回れたのだが・・・。
ティルネア(・・・ん? 遥か前方で、襲撃されている方々が!)
ミスターT(了解!)
戦闘を終え、魔物達の素材を纏めている3人。俺は行者台に立って、周辺の警戒に当たる。そんな中、憑依中のティルネアがスッと現れた。開口一番は、遥か前方で襲撃されている人物がいるとの事だ。
念話は他の3人にも伝わっており、直ぐに素材を荷台に乗せて荷馬車に乗り込む。行者はナーシャに任せ、直ぐに全速力で現地へと向かった。俺は荷馬車へと移動し、引き続き前方や周辺の警戒に当たる事にした。
地球での車両上での起立とは違い、荷馬車の揺れはなかなかのものだ。しかし、不測の事態に柔軟に対応してこその警護者である。ここは本業の力を披露するとしよう。
荷馬車を全速力で走らせる事、数分後。目の前で戦闘が繰り広げられていた。客馬車を守る3人の冒険者風人物がおり、その周囲を盗賊共が取り囲んでいた。
幸いにも死者は出ていないようだが、このままでは多勢に無勢でやられるだろう。問答無用の介入が必要だ。
俺は荷馬車の上から、可能な限り盗賊共を狙撃していく。放たれた魔力弾は、相手に当たると凄まじい勢いで吹き飛んでいった。魔物達との時とは雲泥の差である。
恐らく、全速力に近い荷馬車からの狙撃で、慣性の法則が働いたのだろう。または、魔力に耐性がない輩なのかも知れない。魔力耐性がある存在は、それなりに持ち堪えができるしな。
不意の襲来を受けて、盗賊共が慌てふためきだした。そんな連中に対して、お構いなしに魔力弾を放っていく。近場へと到着すると、颯爽と地面に降り立つリドネイとセアレス。
それぞれの獲物で、盗賊共を一撃の下に斬り伏せていく。この手の強盗紛いの連中は、容赦なく始末するのが無難だ。逃せば、新たな火種を撒きかねない。
荷馬車を停車させると、俺とナーシャも地面に降り立った。ナーシャの方は、3人の冒険者達の近くに向かい、長剣と弓矢で応戦を開始する。
俺は、右手に携帯方天戟を、左手に携帯十字戟を展開。そのまま盗賊共に切り込んで行く。相手は飛び道具や、魔法の類を持ち合わせていないようで、遠距離攻撃に関しては気にする必要はなさそうだ。
警戒だけは続けるが、そこはティルネアの魔力壁がモノを言うだろう。現に、盗賊共は自分達の攻撃が、相手に当たらない事に驚いている。
ミスターT「大丈夫か?」
冒険者1「あ・・有難い・・・助かりました!」
縦横無尽に暴れるリドネイとセアレスに呆気に取られつつ、護衛の冒険者達に歩み寄る。安否を確認したが、3人とも深い痛手は負っていないようだ。
と言うか、この3人は女性の冒険者だった。同時に、敗退した時の末路が脳裏を過ぎる。凄まじい怒りと憎しみの一念が湧き上がりだした。
目の前に迫る盗賊の胸に、携帯方天戟を突き刺す。そのまま頭上へと持ち上げ、他の盗賊に放り投げる。そこに追撃と言わんばかりに、携帯十字戟を放つ。ブーメランの如く放たれた獲物は、相手の首を見事に切り落とした。
殺人はご法度だが、それは時と場合によって変わってくる。連中を野放しにすれば、新たな被害を招いてしまう。最悪が、相手が女性の場合への悪態だ。許し難いものである。
ならば、今は修羅の如く振る舞うしかない。眼前の悪道に走る愚物を、徹底的に叩き潰す。躊躇すれば、それだけ悪化するだけなのだからな。
半ば本気を出してからは、一瞬でカタが付いた。周囲には盗賊共の死体が転がっている。相手が行った事を踏まえれば、哀悼の感情など無用だ。
俺の本気とも言える立ち振る舞いを見た面々は、顔を強張らせている。特にリドネイ達が顕著で、温厚な雰囲気が一変した事に驚愕していた。
逆に女性冒険者の3人は、窮地を救われた事で安堵している。護衛対象となる、客馬車の中の人物も無事のようだ。ただ、客馬車を引く馬達を、盗賊共に殺害されてしまっていた。
そこで、客馬車を荷馬車で牽引する事にした。予備の鎖などがあるため、それを上手く利用すれば可能だろう。移動速度は著しく低下するが、決して移動できなくはない。
お互いの自己紹介は後にして、先に行動する事にした。このまま、ここに留まるのは危険極まりない。別の盗賊共が襲ってくる可能性も十分ある。作業時間は数十分で済み、直ぐさま襲撃の場から離れる事にした。
ちなみに、当然ながら盗賊共の持つ物品は、現状証拠として押収した。既に帝国領に近いため、盗賊共の被害が入っているかも知れない。後で帝国の自警団に提出すれば良いだろう。
死者の物品を漁るのはよろしくないが、相手が相手である。問答無用で行動した。それに、この手の愚物は他者から奪って血肉としている。ならば、要らぬ感情は不要である。
これに関しては、リドネイ達は賛同してくれた。世上の様相からすれば、その行為は普通に行われている。先にも挙げたが、被害の拡大を防ぐためには、容赦ない一撃が必要だ。
再出発する際、俺は襲撃の場となった場所を一瞥した。物言わぬ盗賊共の死体を見つめ、これが現実なのだと己に叩き込んだ。
警護者の世界と何ら変わらない、護衛者を守るための常套手段である。
第11話・9へ続く。
探索者の現段階の話とは、真逆の行動を取ったミスターT君。この時はまだ、警護者本編が始まる前の段階だったので、排除対象には情け容赦ない一撃を放った感じでしょう。本来なら、こうなのですがね・・・。
探索者の方では、苦労人と警護者の後日談の話になるため、不殺の精神が働いている感じです。その後は再び、選ばなければならない時が来るのですが・・・。ここの概念は、覆面シリーズの永遠の命題になりそうです。




