第11話 時間魔法と空間魔法6 素性を語る(キャラ名版)
ミスターT「・・・修学旅行か・・・。」
そうボヤくしかない。真っ当な食事を前にして、手当たり次第に食い漁っている女性達。元奴隷だったため、目の前の食事に感涙しながら食べ尽くしていた。
現状を把握した飲食店の店主は、椀飯振舞の如く食事を提供している。無論、経費は全て冒険者ギルドが持っているのだという。ちなみに、スポンサーはミューテ達、ヒューレイム一行である。
セアレス「何ですか? その修学旅行と言うのは?」
ミスターT「ん? ああ、学生の最後の思い出として、遠方に赴く旅行の事よ。」
料理片手に俺の隣へと座るセアレス。長髪の金髪を背後でロール状に纏めており、端から見れば男性に見間違えてしまう。だが、その端正な顔立ちは、やはり彼女が美女であると痛感させられる。
実際に負傷前の彼女の顔を知らないため、治療後初めて窺う事になる。俺は元から女性に惹き付けられ易い性質なので、セアレスの美貌は相当危ないレベルだ・・・。
セアレス「マスターのご出身は、どの大陸なのですか?」
ミスターT「うーん・・・どう説明すれば良いか・・・。」
素直に異世界たる、地球は日本の出身だと挙げるべきか。ただそうすると、相当混乱を巻き起こしかねない。だが、できれば嘘は付きたくはない。どうしたものか・・・。
ティルネア「素直に仰って良いと思いますよ。」
そう言いつつ、セアレスの両肩にソッと手を添えるティルネア。突然の顕現化、この場合は具現化となるだろうが、それは非常に心臓に良くない・・・。
だが、彼女の一言で吹っ切れたようで、徐にこちらの内情をセアレスに語り出した。
異世界の地球という惑星、その中の日本という国の出身である事。普通に過ごしていたら、突然真っ白い空間に送り込まれた事。そして、創生者ティルネアと対峙した事。
細かい事は抜きとしても、その大まかな出来事だけでも相当なインパクトを与えたようだ。そもそも、俺がベイヌディートの住人でない事に、セアレスはかなり驚愕をしている。
だが、遂行者と言う存在は、既に世界中で周知されているようだ。一定の期間により、地上に遣わされる創生者代理の存在。それが遂行者である。
事実、王国事変では、大広間の場にいた連中全てが遂行者を知っていた。創生者以上に周知されていたのだ。創生者に等しい獣の神よりも、である。
そこで、セアレスより聞かされたのは、遂行者は国を挙げて支えるべき存在だと言う事だ。創生者の代理を遣わされているのだから、それは正に神の如く敬うようにすべきだという。実に烏滸がましい限りだが、それだけ崇高な存在らしい。
創生者ティルネアからすれば、その様な崇高な存在に宛がわれるのは困りものとの事だ。世上を陰ながら見守り、適切に手を施していくのが創生者なのだと。その代理人が遂行者となる。
まあ、今の彼女は明らかに、世上に接触し過ぎている。セアレスも過去の文献から知った限りだと、滅多に現れないとの事だ。それが、今では創生者フィーバー状態である。
それだけ、今の世上が危うい状況に至りつつある、と言う事だろう。それか、彼女には失礼ではあるが、世上の楽しさに感化されたのもあるかも知れない。意外なほど、お茶目さんになるしな。
俺が選ばれたのは、偶然だとも挙げてくれた。実際にそうだったのだから、変に取り繕う必要は一切ない。それが淵源となり、今のこの場に至るのだから、実に不思議な縁である。
特にセアレスの場合は、一歩間違えば最悪の事態に陥っていた。リドネイ達もしかりだ。それが、お節介焼きの世話焼きたる俺の介入で、全てが覆りだしている。
あの独裁国家に至りだしている、クレデガレア王国を一時的に黙らせるにも至ったのだ。元ヒューレイム男爵家のセアレス令嬢やミューテ当主は、当時の事変を今でも驚きの様相で挙げてもいる。
一介の警護者の存在が、ここまでやれる現状。遂行者と言う肩書きと、創生者ティルネアより与った数多くの力。これらが上手くマッチし、今の様相へと進みだしているのだ。実に不思議としか言い様がない。
だが、まだまだ道は半ばである。むしろ、王国に喧嘩を売った手前、何れ必ず報復攻撃をして来る。それらを見越して、万全な状態で進み続けるしかない。
幸いにも、警護者の生き様が、万般に渡って対応できる能力を発揮してくれていた。地球での活動は、決して無駄ではなかった証拠である。今後も奮起せねばならない。
ミスターT「・・・とまあ、そんな感じなんだが。」
こちらの詳細を語りつつ、食事を取り終える。一服しつつ、今までの流れを振り返った。この1ヶ月近くは、正に強行軍そのものだった。だが、まだまだこれからである。
セアレス「そうでしたか・・・。」
ティルネア「ここまでのお節介焼きと世話焼きは、今まで見た事がありませんよ。」
ミスターT「そいつはどうも、ありがとうございますね?」
ある意味、感動している感じで思い入っているセアレス。自分とは住む世界が違う部分に、未知なる好奇心を駆り立てられたのだろう。バリバリの冒険者なのだから、当たり前な感じに思える。
そこに茶化しを入れるティルネア。彼女の言う通り、正にその通りではある。だが、一応の反撃はさせて貰おう。舌打ちをしつつ、その言動に嫌な意味で感謝を述べた。
セアレス「まあまあ、ティルネア様が仰りたい事は分かります。貴方様の言動は、常識を逸している状態ですし。」
ティルネア「セアレス様も、そう思われますよね? ね?」
ミスターT「・・・このじゃじゃ馬娘め・・・。」
正論を挙げるセアレスに、見事なまでの同意を求めるティルネア。セアレスは普通だが、今のティルネアは出逢った頃の淑女的な感じではない。何処にでも居るような、乙女チック丸出しの状態である。
まあ、今までの創生者の重圧が、少しは解放されている状態でもある。それを考えれば、この言動は致し方がないのかも知れない。少しでも彼女の負担を軽くできるなら、遂行者の役割は達成できている証拠だ。嬉しい限りである。
セアレス「私には、遂行者の役割を担う事はできません。ですが、執行者としての役割は担う事ができると思います。ミスターT様の片腕として、今後もお傍に居させて下さい。」
俺の左手を両手で掴み、そのまま胸へと抱き寄せる。全ての柵から解放されたセアレスは、次なる目標を掴もうとしていた。あれだけの境遇を生き抜いてきたのだ、今の自由な状態は手に余る感じなのだろう。
幸いにも、冒険者としての生き方も可能である。もしこれがなかった場合、更に手探り状態だったのは言うまでもない。
ミスターT「ありがとな。」
ティルネア「むしろ、聖獣の巫女としての存在もあります。執行者の役割だけでは、収まらないと思います。」
セアレス「無論、全て覚悟の上です。ご安心下さいな。」
今までにない程の笑顔で見つめてくる。その笑顔は、今の彼女が出せる最強の光だ。野郎としては強烈過ぎて、直視する事ができない・・・。もしこれで“覆面と仮面がなかったら”、非常に危なかったかも知れない・・・。
だが、ここまで彼女を解放できたのは、素直に喜ばしい事である。些細な切っ掛けから、相手の人生を大きく変える事は良くあるしな。セアレスの笑顔に、逆に心から感謝をしたい。
ちなみに、セアレスとミューテ、サミナとユミアは教員免許を持っていると言う。これには驚くしかない。そこで、奴隷より解放した女性達の中で、勉学を学んでいない面々に勉強を教える事を提案した。
学者的な難しいものではなく、教養の基礎たる部分を学べれば申し分ない。ティルネアより伺ったが、ベイヌディートの勉学率は非常に低いらしい。これも、世上をプラスの力に満たす第一歩になるだろう。
となれば、やはり大きな学舎が必要になってくる。ラフェイドの街では非常に厳しいので、ここはエーディスリーア帝国の力を借りるしかない。
まあでも、これらは全て提案の段階である。実際に行動に移すのは、更に先になるだろう。今は王国からの反撃を警戒しつつ、帝国への介入を試みるとしよう。
第11話・7へ続く。
普通なら、信じて貰えそうもない素性の語り。ですが、数多くの異常な力を披露したからこそ、通じたのでしょうね。まあ、其の異常な力は超チート性能そのものでしたが(-∞-)
しかし、詳細描写に慣れだすと楽しくなってきますね><; 現状で追加できる描写を、可能な限り施していく。自分ならどう考えるか、などを思い浮かべてカキカキしています><; 主人公視点に拘る理由は、自分がその場面の主人公ならどうするか、という事になりますので。
無論、主人公視点の欠点=弱点は、敵側や第3者側が分からない点ですが@@; まあ、普通なら相手側は各ツールを使わない限り、分からないのが実状ですし。自分は主人公視点の方が良いと思います(>∞<)




