第9話 男爵家との一計3 2つの願望(通常版)
ブックマークありがとうございますm(_ _)m 励みになりますU≧∞≦U ただ、執筆の方は停滞と格闘中ですが><; 悩ましい(-∞-)
自己紹介を終えると、俺をソファーへと招いてくれるミューテ。招かれた先に座ると、対座に彼女とセアレスが座る。
すると、サミナとユミアは豪華なお茶セットを用意しだし、3人分の紅茶をカップに淹れていく。その仕草は使用人としては、何処かギコチナイ感じだ。
「驚きました。サミナとユミアが殿方に打ち解けている事に。」
紅茶が入ったカップがテーブルに置かれていく。また、茶菓子セットも置かれていった。その作業を行うサミナとユミナを見つめ、微笑ましい視線を向けるミューテ。直後に語られた言葉が、全ての理由を物語ってくれた。
「サミナとユミアは孤児院出身でして。過去に男性に暴行を受けていた所を、助けられたそうです。」
「そうだったのか・・・。同じ性別として恥ずべき事だわ、申し訳ない。」
作業を終えたサミナとユミアに向けて、俺は深々と頭を下げた。彼女達に暴行を働いた阿呆とは接点がないが、同じ性別である点は間違いない。
この点を踏まえると、リドネイやトーラの様に、本当に野郎の愚行には怒りと憎しみが湧き上がって来る・・・。どうしてこうも愚かな行動をするのか・・・。
「き・・気にしないで下さい・・・。」
「あ・・貴方が当事者ではありませんし・・・。」
「そうは言うがな・・・。」
気にするなと2人は言うが、俺としては一段と気にしてしまう行為である。地球でも異世界でも、野郎の行う愚行には全く変わらない・・・。
この問題は、永遠の命題と言える。この部分を解決できなければ、世上から争いを根絶する事は不可能である。身内達や仲間達を見る限り、今は女性が台頭してこそ真価を発揮する。
サミナとユミアの様な境遇の人物を無くしていくのも、遂行者たる使命であろう。これは創生者ティルネアも望むものなのだから。
「・・・貴方様なら、セアレスの負傷は無論、2人の様な境遇の方々を無くせると確信が持てます。」
「何処までお力になれるかは分かりませんが、お役に立てるなら喜んで。」
「・・・ありがとうございます・・・。」
俺の言葉に、深々と頭を下げるミューテとセアレス。特にセアレスは、涙を流しながらの言動だ。それだけ、自身に受けた傷が深い証拠である。
それに、ミューテの発言は、俺が思った事と全く同じだ。世上から悲惨や不幸を無くして行くのなら、サミナとユミアの様な境遇の人物を助けるのが必須事項である。不可能に近いレベルだが、絶対に不可能とは言い切れないしな。
その後、俺が呼ばれた理由を改めて聞かされた。それは、セアレスの顔の負傷の治療だ。
実際に見せて貰ったのだが、その傷を見て愕然とした。憑依中のティルネアは、今までにない怒りの雰囲気を放ち出している。ここまで彼女が激怒したのは初めて見る。
彼女が負った傷は、顔の大多数が水脹れとなっており、更に切り傷も多数存在していた。言葉は悪いが、女性の表情としては、最早終わったとも言えなくもない。
経緯に関してだが、王国の城で起こった事変らしい。彼女達と敵対している連中が、凶行に走った流れとの事だ。これはもう、立派な傷害事件そのものなのだが、それを黙認させたのが貴族共だと言う。
何故その経緯になったのかだが、セアレスがクレデガレア皇太子との婚姻を結んだのが淵源だとの事だ。つまり、婚姻を良く思わない連中の凶行である。
犯人などは捕まっていないが、間違いなく貴族共が原因である事は間違いない。これは先日から、俺の事を密偵している連中も当てはまる。
仮に犯人が捕まったとしても、大元は今後もシラを切るつもりだろう。この手の愚物共は、ありとあらゆる手段を投じて逃げ続けるのだから。
それに、皇太子との婚姻の理由、その淵源はヒューレイム男爵家の力を取り込もうとする策略の1つらしい。セアレス自身も婚姻を望んでおらず、母親のミューテや男爵家に仕える面々も好ましく思っていないと言っている。
皮肉な事に、セアレスを襲撃した事で、男爵家の力を取り込もうとする勢力の力を殺いだ事にもなる。どうやら王国内には、そう言った複数の派閥が蠢いているようだ。
「・・・正直な所、セアレス嬢は婚姻を望んでいない、それで良いのだな?」
「はい。どの道、この様な無様な表情の女など、好まれません。母上達には迷惑を掛けてしまいましたが、男爵家としては良かったと思っています。」
俺の問いに、ハッキリと言い切るセアレス。表情からは窺えないが、その雰囲気は婚姻を好ましく思っていない事が明らかだ。それに、自身の負傷の表情に関して、悲観的になっていない。
これらから推測すると、どうやら顔の治療以前に、婚姻自体を破棄させる流れを望んでいるようだ。その一手を俺に託したいようである。
「貴方様にはご迷惑をお掛けしますが、私達の暗躍に乗って頂ければと。」
「・・・セアレス嬢の顔を利用し、皇太子に不快感を抱かせ、婚姻を破棄させるという筋書き、か・・・。」
思った通りの流れになり、一応呆れた表情を浮かべてみた。それに不快感を抱かず、むしろ不気味なまでにニヤケ顔をする母娘。特に今のセアレスの表情からの繰り出しは、非常に怖々しい様相である・・・。
それだけ、この婚姻に関しては反対である証拠だ。となると、何故にセアレスを襲撃したのかが不明な点となる。
「・・・王国内には、セアレス嬢を皇太子に付けさせない考えの連中もいる、か。」
「そうなります。逆に、男爵家の力を奪おうとする連中からすれば、明らかに馬鹿げた行為である事は間違いないでしょう。」
相手側の真相は不明だが、王国にはそういった2つの勢力がいるのは確かである。もう少し手順を踏まえていれば、効率良く奪えたのだろう。それを考えれば、明らかに無策の状態で強行したと言うしかない。
ただ、これだけで済むのかという部分が挙がってくる。その真相が掴められれば、婚姻を破棄しても問題はないだろう。今の所は、だが・・・。
「はぁ・・・効率が悪過ぎるわ・・・。俺だったら、先ずセアレス嬢と婚姻を結ぶ。次に男爵家の力を吸収し、そしてお嬢を襲撃して亡き者にする。」
「・・・貴方様も、その様な経緯を思い描かれたのですね。」
「私達も、全く同じ流れを予測しました。その方が、断然効率が良いですし・・・。」
俺が挙げた、相手側の理想的な行動プランに関して、太鼓判を押してくれた。セアレスもミューテも、相手の無策に突き進む様相には呆れ返っているようだ。
それでも、何故俺が選ばれたという事が不明な点である。当初は、セアレスの顔の治療を狙っての介入だったが、実際には婚姻を破棄させる流れだと言う。
これ以外にも、何らかの理由・・・いや、野望があるのだと思えてしまう。セアレスの顔の負傷など、話にならないものであるとも思えた。
「・・・まさかと思うが、男爵家自体を捨てる気でいるのか?」
俺の言葉に、今まで温和な雰囲気を一変させる2人。サミナとユミアも、先程までの雰囲気がガラリと変わりだす。同時に、今後の俺の回答次第では、力業で動いて来る事を察知した。これが本来の彼女達の本音であろう。
それでも、彼女達の本当の目的が何なのか、今も掴められずにいる。婚姻の破棄、男爵家の放棄、この2つが目的なのだとは読める。それ以外にも、何かありそうな気がしてならない。
雰囲気が一変した4人を前に、迂闊に行動ができなくなる。彼女達にとっては、死活問題になるのだろう。だが、俺からすればエラい迷惑極まりない。
第9話・4へ続く。
悪役令嬢とは程遠いセアレス嬢。むしろ、相手側が悪徳王城とも言いますか。この部分は、苦労人の後日談となる、探索者の王城にも通じる部分がありますね。
まあ、向こうはご存知かと思いますが、重火器や巨大兵装が出まくりなので、バランスが崩れかかっている状態ですが><; 風呂敷を広げ過ぎた結果が、あちらとなります@@; 苦労人は、そうならないように注意しないと・・・。
そんな心構えで大丈夫か? 大丈夫だ、大問題大有りである(何@@;




