1章 1話 俺が転生する訳
「ん、ここは・・・?」
目を開くとそこは一面真っ白な世界だった。
「ここはどこだ?確か俺はトラックに轢かれて・・・。ということはここは病院か?それにしては周りに何もないしな。もしかしてあの時・・・。じゃあここは天国なのか?」
俺はトラックに轢かれたという事実を思い出していると。
「やあやあ、お目覚めかい?どうしたんだい、そんなボーっと突っ立って」
いきなり少年のような声で呼ばれ俺は辺りを見渡すが誰一人周りには見当たらなかった。
「誰なんだ、姿も現さないで」
「まあまあ落ち着きなよ。それならまずは自己紹介から始めようかな。僕は君の住む世界ともう一つの世界を管理している神様なんだ」
「はあ・・・俺の名前は藍田圭だ。ってそんなこと信じられるわけないだろ。君みたいに幼い声をしている子に神様って言われてもな」
「そんなこと言われても神だっていろんな奴がいるからなあ。僕が君の世界の神様だって事実は変わらないからね」
「なら何か証明できる方法とかないのか?ほんとに神様なら俺しか知らないこととか言えるんじゃないのか」
「そんなこと言ってもすぐに分かることなんて、君が幼馴染に密かに恋心を抱いていることとか、君のお気に入りのエロ本を隠している場所がタンスの上から3段目の」
「ああーっと、分かりました分かりました。貴方様は神様です。今まで疑って申し訳ございませんでした!!!!」
「分かればよろしい。ならそろそろ本題に入ろうかな。まず君は死んだ。そしてここは天国でも地獄でもない、まあ便宜上“じゃない場所”とでも言おうかな。ここから君にはもう一つの僕の世界に転生して欲しいんだ」
「はあ、転生ですか。それまたどうして?」
「そのもう一つの世界には邪神の復活をもくろんでいる子がいてね。流石にそれはどちらの世界の為にも看過できないかなと思ってね」
「なるほど、それで俺に異世界で勇者にでもなってそいつらを倒してこいって事ですね」
「違うけど?」
「いや、違うんかいっ」
「もしそうなら転生なんて悠長なことせずにそのままの姿で直接異世界に向かわせてるよ。そもそも君勇者の素質ないし。そうじゃなくて君には勇者君が成長する前にやられてしまうのを防いで欲しいんだ」
「それならなんで俺なんですか?別に俺である必要なんてないと思うんですが」
「それは君が勇者になる子ととても近しい関係だからだね」
「?」
「僕が勇者になる子を見ていた時に彼の周囲の子で君が死んでしまうのを偶然見つけたんだ」
「・・・それって誰なんですか?」
「そうだねえ、君の幼馴染の弟君と言えば分かるかな。彼が二つの世界で最も勇者の素質がある子なんだよ」
「翔、あいつが勇者なんですか。ははっ、確かにそんな感じしますね。それならあいつが成長するまで俺があいつの手助けをすれば良いんですね?」
「うん、そうだよ。でも一つ注意して欲しいことがあるんだ。君の正体を勇者君には知らせないで欲しいんだ。もし君だと分かったら君に頼り切って本当に大切な時に彼自身で立ち向かえないかもしれないからね」
「そんなことないと思いますけど、一応わかりました」
「それと、転生してからは簡単には僕と連絡は取れないからね。聖女みたいな神和性の高い子なら僕や僕の部下と連絡を取るのも難しくはないだろうけど親和性に関しては生まれ変わってみないと分からないからね。それじゃあ最後に君に能力を授けようか。」
そう神様が言うとどこからともなく温かい光のようなものが現れ、俺の胸に吸い込まれていった。
「これは時空間魔法と言ってとても有用なスキルなんだけどその代わりに消費する魔力がとても多いから小さい頃から魔力を使うようにしてね。君が死んだ歳と同じ18歳に勇者君が来るように君が生まれる年を調節するから頑張って勇者君をサポート出来るように強くなってね」
「ちょっと待って。魔力の使い方とか分からな」
「あっ、もう時間みたいだ。じゃあねー」
その言葉を最後に俺の視界は暗転していった。