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お嬢様のティータイム 「さあ、今日はみんなでバッタをやっつけるわよ!」

作者: よりこ☆

「マリアージュ フレールかクスミティーな気分だわ」


「では本日はクスミティーにいたしましょう」


 私のボディーガードであるレーナが手慣れた手つきで紅茶をいれはじめる。


「お嬢様このままですと早ければ2020年の夏頃にはバッタが上陸する恐れがあると報告が上がっております」


 窓の外を眺めながら紅茶が出来るのを待っているとレーナが話しかけて来た。私が話しを続けるよう目配せするとレーナは


「アフリカ東部を蹂躙していたバッタ達がインド洋を渡りパキスタンに到達しはじめ、現在は中国の西部付近が迎撃戦線の最前線になりつつあります。そして情報部が最悪のケースを想定してシミュレーションしたところ、早ければ2020年の夏頃には上陸する恐れがあると先ほどメールにて受信いたしました」


「バッタ頑張ってるわね。世界規模のウイルス感染鎮圧後に訪れる、コンピューターウイルスによるグローバル経済の混乱に対しての打開策を検討しないといけない状況なのに、次から次へと彼らはやってくれるわね」


 レーナがいつものように砂時計をセットして静かに紅茶が出来上がるのを待っている。すると血は繋がっていない妹のリサッチが


「でも、バッタに関して本社ではプロゲーマーを選出してドローンとリンクさせて撃退させるプロジェクトを進めていたみたいだけど、上手くいってないのかしら」


 レーナが少し表情を曇らせると


「人員不足による戦力の弱体化が要因との事です。大会主催者側が自粛要請を無視し大会を開催したことにより観客および選手達が大量感染してしまい、現在も入院中もしくは自宅療養中でございます」


 リサッチも表情を曇らせ


「う~ん。確かにイベントを中止する事で収益が見込めないと被る被害額によっては頓挫してしまう企業もあるかも知れないのよねえ。主催者もしくは経営者の立場で考えると複雑な心境よね」


「今回の騒動で経済が世界規模で停滞したことにより、医療機関、生産業、飲食業、旅行会社、イベント業界など、この世に存在するほぼ全ての業界に対して何らかの悪影響を及ぼしております。よって多数の従業員を抱えてる経営者側も日々苦渋の選択を強いられております」


「う~ん。今の社会システムは立場の違いや何を優先するかで善悪が別れるから簡単には正解を導きだせないのも現状なのよね」


 腕を組んで難しい表情をしているリサッチにレーナが


「仮にこの国がバッタ達の上陸を免れて、直接的な被害が起きなかったとしても小麦、トウモロコシ等の穀物類が今回の騒動で生産性や流通量が激減したことによる、価格の高騰は不可避でございます。そのような状況で更にバッタによる被害地域での穀物生産が出来なくなる事と、地域住民の食料不足による飢餓をもたらす事態はやはり避けたい事案であることには間違いございません」


「そうなのよねえ。今回の騒動で食料以外にも様々な製品の高騰も懸念されていて社会機能も低下ないしは麻痺している状況なのに、バッタに襲われたり大規模な地震や自然災害がもし同時期に発生したら、簡単に都市は壊滅状態に陥り国も立ち行かなくなる可能性もあるのよねえ。そうなると大量の難民が発生する可能性もあり得るしねえ」


 リサッチが深いため息を吐きながら


「なのに今は、テレワークの導入で脆弱なセキュリティー状態にも関わらず自宅の端末から社内のシステムへ接続してデータのやり取りをしていたことで発生するであろう、コンピューターウイルスによる情報漏洩およびシステム障害による社会的混乱を未然に防ぐ対策問題でしょ。早いとこ社会機能を戻さないとますます人々が不安に陥り負の感情をまき散らすわよ」


 眉間に皺をよせてレーナが


「全ては彼らのエネルギー源である負の感情を大量生産するための策略です」


 ティーカップに紅茶を注ぎ始めるレーナを見つめながら、リサッチが


「各地で我先にって感じで食料品や物資の奪い合いがあったり暴動も発生したけど、物事を深く考えてから行動に移す人って本当に少数なのよねえ。複数の国ではアジア系がイヤな思いをしたり、この国だと名前が同じってだけで色々とイヤな事をして来たりしてさ。悲しくなるよね」


 紅茶を注ぐレーナを見ていたリサッチが私に視線を向けると


「ねえ、ダーシャどうするの。今回も私達は世間の状況には介入しないで、いつも通りの見守るスタンスなのかしら」


 レーナから紅茶を受け取り一口のんでからリサッチに


「レーナがさっき話した通りプロゲーマー達が治療中だから単純に人員不足なのよね。でもマックスが奮闘しているようで現地でハイスコアを日々更新しているらしいのよ」


 リサッチがレーナから紅茶を受け取り香りを楽しんでいると驚いた表情で


「えっ。マックスがバッタの駆除を頑張ってるの」


「ええ、マックスは様々なジャンルのゲームで世界上位ランカーなのよ。だから今回の作戦には当初から参加してるわよ」


「あんなデカい手でゲームのコントローラーを握って壊れたりしないのかしら」


 するとレーナが


「一般的なゲームの大会では公平を保つためにメーカー純正のコントローラーを使用しておりますが、作戦中は基本的にコントローラーを使用しないで脳波を使って操作しておりますので問題ありません」


 リサッチが片方の眉をピクッとさせて


「あ~。最近うちの会社が民間へ提供してあげた技術を使ってるのね。それなら私でもイライラしないでバッタの駆除って出来るのかしら」


 首を傾げているリサッチに


「人員不足だし早いとこバッタの進行を止めたいから、ゲーマー達が復帰するまでは作戦に参加しようと思うけど、リサッチも私と一緒にバッタの駆除に参加してみてはどうかしら」


 するとレーナがリサッチに


「現地に行かなくても我が社の回線を使用し現地のドローンにアクセスは可能です。もし作戦に参加するのでしたら今からでも準備を始めますが、いかがなさいますか」


 リサッチが顎に手をあてて少し考えると、私を見て


「面白そうって言ったら不謹慎かもしれないけど。私もバッタの駆除の手伝いしたいかも。さっきレーナが言っていたけど私も地域住民の食料不足あるいは飢餓をもたらす事態はやはり避けたいからね」


「オッケー。じゃあレーナ準備をよろしくね。今日は久しぶりにマックスと対決するわよ」


 レーナが微笑み頷いているとリサッチが


「えっ。マックスってゲームが上手いんでしょ。ダーシャじゃ相手にならないんじゃないのかしら」


 するとレーナが私のティーカップに紅茶を注ぎながら


「いいえ。お嬢様とマックスは常にランキングの上位を競い合っておりましたので、本日は過去最高の駆除数を叩きだすと思われます」


 リサッチが目を見開いて


「え~。ダーシャがゲームが得意だなんて意外だったわ。レーナも参加するのかしら」


 レーナは頷き


「はい、お嬢様が参加するのでしたら私も参加いたします。ちなみに私もお嬢様とマックスと同じで上位ランカーでございます」


 リサッチが顎を引いて更に驚きの表情を浮かべ


「えっ。まさかのレーナも上位ランカー」


 レーナは微笑みながら


「久しぶりにお嬢様とゲームで競い合うことが出来るのでとても胸が高鳴ります」


 リサッチが少し頬を引きつらせながら


「私ゲームって得意じゃないんだけど大丈夫かしら。あまり期待しないでね」


 私は紅茶を一口飲んで


「じゃあ、決まりね。まあ戦闘機型もあるし戦車型もあるからリサッチは操作しやすい機体を選べば良いわよ。そして少しでも世界の食糧事情に貢献出来るように、今日はみんなでバッタをやっつけるわよ」

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