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1.魔王様調査報告をします。

人間界、桐ヶ谷家にて猫又の(こう)は自分の主の奇行に頭を悩ませる。彼は主と一緒に弟として人間界へやって来ていた。悩みの種は、下から回ってきた先代魔王への主の報告書だ。最初のうちは天界や魔法少女のことを記していた。しかし最近、どういうことだろう。主の頭の中は砂糖という名前さえも甘い女に絆されているらしい。


コンコン、


「誰だ?入っていい。」


扉の向こうから漂う鼻が曲がりそうな媚香にもう紅は誰だかわかっていた。


「やだ紅ちゃん。ぼっちゃんの報告書また見てるの?」


彼女はサキュバス族の統率者レイラ。紅といっしょに主の世話係もしている。


「お前から見てどうなんだ。この砂糖という女は?」


彼女は主のクラスの教師として人間界に紛れ込んでいる。気がつくとテーブルにこれまた色気のある座り方をしている彼女は口を開く。


「あーら、いい子よ?うちのぼっちゃん程ではないけど。」


「お前はぼっちゃんを甘やかしすぎなんだ。この調査報告書もう一度見てみろ。」


レイラの顔前に主の報告書を差し出す。レイラは呆れた顔をした。


「やーね。私の審査をパスしたから貴方の元へ報告書(それ)が渡ったんでしょう?見た?魔界では大変ご立派な方なのに、人間界では年相応の子供のような様子でいらっしゃるのよ。毎日可愛くてしかたないわ。」


レイラは世話係の中でも親バカ気質だ。主が弟のように可愛くてしかたないらしい。今もこうして駄文としか言いようのない主の報告書を即刻イエスマンの如く、自分に通してきた。


「これは天界の報告書ではなく、砂糖という輩の観察日記と変わらないだろう。これでは先代、いやその前の最高指揮官様にも渡せられないぞ。」


そう言うと顔を困らせる。お前が通したんだろ。


「んー、だってねぇ。」


「甘やかしすぎも主に良くない。これから魔界を治めるお方だぞ。そういう為にお前を連れてきたわけじゃないんだぞ。これ以上お前も任務を進めないようなら、最高指揮官様に連絡するからな。」


「ずるいわよぉ。わかったわ。やればいいんでしょ、やれば。でも今回は、あんたが言っといてね。ぼっちゃんにはもう既に私はOKしちゃってるんだから。」


そそくさと妖艶な香りは退散していった。仕事を増やしやがったな。



──────



「...と、言う訳でありまして。主、この報告書ではいけません。書き直してくださいませ。」


場所は主の部屋。勉強机で課題をしていたであろう主へ直談判しに行った。赤ん坊の頃からの付き合いだが、最近はいつにも増して先代と同じような黒いオーラを纏っている気がする。


「なんでだ。」


その一言も目付きももう一人前の魔王だ。だが、ここで自分が引き下がるわけにはいかない。全ては主のため、明るい未来のためだ。


「先代にお通しすることはできません。これだけでは人間界の報告書ではなく、砂糖という方の報告書でございます。最近ずっと砂糖さんに付きっきりなそうじゃないですか?何かあったんですか?」


すると途端に威厳のあった空気が消え去り、尖った耳の先と頬が赤く染った。


「な、ななな何でもないって!そんなこと言うなら(こう)が書いといてよ。さ、砂糖さんとは委員会が一緒なだけで...そろそろ体育祭があるから打ち合わせしてるんだよ。ほら、さっさとあっち行けったら。俺はもう休む!」


主の行動は全く理解できない。しかし砂糖の名を聞くと主はいつもこんな感じだ。気がつくと主の部屋から閉め出されていた。


「やれやれ。」


なんだかんだで自分も甘いのだろうか。

魔法で新しい報告書を出す。今回だけ、特別ですからね。もう休んでしまったであろう主に、そう呟いて自室へ戻った。

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