婚約破棄されたら王女様に溺愛された
久しぶりの婚約破棄です。
男の娘が婚約破棄されるのを書きたかったのですが何故か普通に終わってしまった・・・すみません・・・
ではどうぞ(* ̄∇ ̄)ノ
「ケイネス!あなたとの婚約は破棄するわ!」
とある日の午後・・・友人とお茶を飲んでいると久しぶりに会った婚約のレーベル公爵家の令嬢であるイスカ・レーベルから唐突に婚約破棄を突き付けられた。
場所は見晴らしのいいテラス席で、回りには友人以外にもたくさん観客がいること上に、何やら婚約殿の隣には見慣れた友人の1人であるガネスがいかにも恋人という雰囲気で立っているからなおのこと目立った。
そんな状況に対して、僕ーーーイスカ公爵令嬢の婚約者であるガーリック伯爵家のケイネス・ガーリックは目の前の友人に頭を下げてから二人を見て言った。
「イスカ嬢。久しぶりに会ってから挨拶もなしに本題に入らないでください。皆さんが驚いてますよ」
「何よその態度!本当にあなたって人は!」
「ケイネス。君は本当に無神経な・・・彼女の気持ちを考えたことはないのか!」
何やら僕の態度にお怒りのイスカ嬢と横からそう言ってくるガネスにため息をつきたい気持ちをなんとか抑えてなるべく穏やか口調で言った。
「だから声を荒くしないでくださいって・・・それで?婚約破棄とはまた唐突ですが、それはあなたのお父上であるレーベル公爵殿と私の父上のガーリック伯爵はご存知なのですか?」
「お父様には後で言うわ!」
どやぁという表情でそう言うイスカ嬢・・・つまりご存知でないのですね。はぁ・・・まったく。
「念のため聞きますが・・・イスカ嬢は私との婚約の意味はご存知ですよね?」
「そんなのただの政略結婚でしょ!意味なんてないわ!」
「そうだ!俺はイスカを心から愛してるんだ!大人しくイスカから手をひけケイネス!」
何やら正義の味方のように僕にそう言うガネス・・・うん、友人の婚約者寝取っておいてその態度はかなり感心するけど・・・要するに二人とも何も知らないのか・・・。確かガネスの家は男爵家だったっけ?だったら・・・
「それじゃあ二人は心から愛しあってると?」
「そうよ!」
「そうだ!」
「何があってもその思いは消えない?」
「当たり前よ!」
「当然だろう!」
「そうですか・・・」
まあ、僕としては友人に婚約者寝取らた訳だが・・・元々仲が悪いというか、向こうがツンツンしてきて関係がまったく進展しなかったから別にいいんだけど・・・はぁ・・・この後のことを考えてため息をつきたい気持ちを抑えてなるべく笑顔で言った。
「わかりました。婚約破棄・・・慎んでお受けします。詳細は後日としますが・・・今回の婚約破棄はそちらからの申し出であり、本家には一切責任がないことはご了承ください。このような形で縁が切れること・・・残念に思いますがどうか今後ともお二人ともお元気で」
「ふん!じゃあな!いくぞイスカ」
「べっーだ!うん!」
仮にも淑女が人前で舌を出して挑発しなくてもいいのに・・・そんなことを口には出さずに僕は二人を見送ってから一緒にお茶を楽しんでいた友人と回りの人達に頭を下げてからこの場を離れた。これから家に帰って報告しなくちゃ・・・面倒な・・・
★★★★★★★★
いきなりの帰宅に執事のジークはかなり驚いていたが、早々に事情を聞くと父上の部屋に案内してくれた。
「旦那様・・・ケイネス様がお帰りになりました」
「ケイネス?入ってくれ」
そう言われて父上の部屋に入ると父上は書類を置いて不思議そうにしていたが・・・僕の話を聞くと次第に表情を険しくしてき、一通り説明が終わると頷いて言った。
「よしわかった・・・ジーク!これから少し戦にいくぞ!私の子供を傷つけた魔女を始末しにいくぞ!」
「はい。旦那様」
「いやいや二人ともダメだから」
何やらヒートアップする大人をなんとか落ち着かせる。僕としてはイスカ嬢がどうなろうが知ったことではないが・・・流石に公爵家に喧嘩を堂々と売って国内で戦争になるのは面倒なのでなんとか落ち着いてもらう。父上はかなり不服そうだが・・・というか、ジークも執事なら止めてよ。
「しかしだな・・・」
「どのみち今回の婚約破棄のツケは後で二人にいきますよ。ただ・・・僕がこれから婚約者を探すのでお手間を取らせてしまうかもしれせんが・・・」
「何を言う!子供のために動くことに手間などない。それに・・・しばらくは自由にやってくれていいさ。あの魔女のことは私も気にくわなかったんだが・・・私はな、お前が幸せになってくれることが一番なのだ。だからあの魔女のことなど忘れてしばらくは自由にしてくれ」
「父上・・・ありがとうございます」
優しい父上の言葉に少しほっとするが・・・どのみち婚約破棄された不良品の僕が再度婚約など出来るとは思えないので、学園を卒業してから騎士になって国を支えようかと密かに思った。
★★★★★★
「ケイネス!私と結婚しよ!」
・・・・その言葉に僕は思わず静止してしまった。
場所は学校の放課後の教室ーーー何やら話があると友人であるこの国の第三王女のレティシア様に呼び出されてビクビクしていた僕の思考は一気に疑問に埋めつくされた。
ターメリック王国、第三王女レティシア・ターメリックーーー明るく美しい彼女は社交界の花として人気でありながら婚約者は何故かおらず同性愛を疑われていたのだが・・・そんな人から童顔で女の顔で、婚約者を寝取られた情けない伯爵家の次男の僕がプロポーズまがいのことを言われる・・・まったくもって謎の展開だった。
「あの・・・レティシア様?それはどのようなご冗談でしょうか?婚約破棄されたばかりの僕にはかなりきつい言葉なのですが・・・」
「冗談に聞こえた?私は本気で言ってるのよ」
そんなバカなと思いつつレティシア様をみると、彼女はどこまでも真剣な瞳をしていた。これは一体・・・
「あの・・・でも、僕は伯爵家の次男でいいところ何もないですよ?こんな不良品よりもいい物件がレティシア様にはたくさんあるかとーーー」
「冗談でもそんなこと言わないで!」
僕の言葉を遮ってレティシア様はこちらに近づいてくるとそっと僕の手を握って言った。
「ケイネスは凄く優しいよ。覚えてる?昔、私が姉様と比べられられるのが嫌でお茶会をサボった時のこと・・・皆が私のことどうでもいいと思って嫌々探してる中で、ケイネスだけは本気で私のこと心配してくれてた」
「それは・・・レティシア様が何かあったら大変ですし・・・」
その僕の言葉にレティシア様は首を降って言った。
「皆、上の姉様や兄様に取り入るためだけだったのに、あなただけは違った。婚約者がいるあなたが一番探してくれて、私を見つけてくれた・・・その時のこと今でも覚えてるの。あなたは覚えてる?」
「えっと・・・一応・・・」
何しろ姫様がいないと兵士は大騒ぎだったが・・・まあ、他の貴族の子供は誰も心配しなくてこの国の未来に幼いながら危機感を覚えて必死で探したら、覚えてはいる。確か城の隅の方に隠れていたんだっけ?
そんな僕に構わずレティシア様は僕の顔に触れてこちらを真剣に見ながら言った。
「あなたのあの時の言葉今でも覚えてるわ。あなたが戻ろうと言って、私が嫌だと、姉様と比べられるから嫌だとごねた時にあなたが言ったことーーー『姫様は姫様ですよ。他の誰でもない世界でただ1人の大切な人ですよ』ーーーそんな言葉に私は救われたわ」
「それは・・・まあ、僕も兄上との出来をよく比べられるので思わず・・・」
昔から僕とは違い天才肌な兄上ーーーそんな人が側にいると嫌でも比べられるので、なんとなく僕は同じようなことを悩む彼女だけでも救われて欲しいと思ってそう言ったのだが・・・
「今度は私に言わせて欲しいの・・・ちなみに拒否権はないからね。あなたの家には今日中には縁談の話がお父様・・・国王陛下から直々に下るからね」
「マジですか・・・」
「マジよ」
思わず口調が崩れてしまうが・・・正直ここまでやられて嫌な訳がなかった。元よりこんな不良品だ。例え遊びだろうとこんなに可愛くて素敵な姫様になら騙されてもいいだろうと思った。
「わかりました・・・あなたが飽きるまで側に置いてください」
「あら?なら一生私の側にいることになるね。言っとくけど、私かなり面倒な女よ?浮気はもとより私の側にいないを許さないからね。壊れるまで愛するから覚悟なさいよ」
「はい。僕は空っぽなので・・・是非あなたの愛で満たしてくださいレティシア様」
「名前で呼んでよケイネス」
「・・・わかりました。レティシア」
そうして僕はレティシア様の婚約者になった。
★★★★★★★
レティシアとの婚約の話は学園に一気に広がった。友人からは婚約破棄で心配されていたが・・・レティシアとの婚約のことを話すとおおいに喜んで祝福された。どうやら僕と元婚約者のイスカとの関係は回りの人が心配になるほどに深刻だったらしいので、わりと第三王女であるレティシアとの婚約をやっかむ人はいなかった。むしろ僕が悲劇の主人公扱いされていたのでレティシア様が救世主みたいな扱いだったのは言うまでもないだろう。
そんなレティシアとの関係なのだが・・・良好も良好・・・というかめちゃくちゃラブラブです。
「ケイネスー。ぎゅー」
「レティシア・・・人前では抑えて・・・」
というか人前でもこんな感じでイチャイチャしていることからかなり生暖かい目で見られています。
そんな幸せな日々を送っていた時だった・・・ある日、用事があるというレティシアを教室で待っていると何やら怒髪天な感じで僕の元を訪れた元婚約者のイスカ嬢。彼女は物凄く怒りの形相で僕に言った。
「どういうことよ!!」
「えっと・・・何が?」
「とぼけないで!援助よ!なんでやめるのよ!」
聞けば我が家からの援助が止まり金銭的に厳しくなったらしい。それが原因でガネスは他の女に乗り換えたとかーーーホントに人の婚約者寝取っておいてゲスな奴だなーと呑気に考えているとイスカ嬢はこちらに掴みかかる勢いで言った。
「全部あんたのせいよ!私の幸せを返せこの女顔の変態!」
「あら?人の婚約者になんてことを言うのかしら?」
その声に振り替えるとーーーニコニコだが、どこか怒りを秘めていそうな笑顔のレティシアが・・・お、おや?これはまずいような・・・。そんな僕の危惧を知らずにイスカ嬢はレティシアを睨み付けて言った。
「今はこの変態と話してるの!関係ない人は来ないでよ!」
「関係ない?婚約者が他の女と一緒にいるのを咎めるのは当然でしょ?」
その言葉にイスカ嬢はたいそう驚いた表情を浮かべるがーーーそんな彼女を無視してレティシアは僕に抱きついてきた。
「ごめんなさいね待たせて・・・じゃあ、行きましょうか」
「ま、待ちなさい!まだ話は終わって・・・」
そこでイスカ嬢をがん無視しても良かったが・・・僕はこれ以上レティシアに迷惑をかけたくなかったのでいつもなら言わないような低い声でイスカ嬢を見て言った。
「あのさ・・・いい加減にしてくれる?先に裏切ったのは君でしょ?こっちには関係ないのわかる?僕が好きなのはレティシアで君なんで大嫌いだよ。二度と僕らの前に現れないでくれる?じゃあね」
呆気にとられるイスカ嬢にそう言ってその場から二人で立ち去る。しばらく歩いてからレティシアを見ればーーー何やら嬉しそうな表情を浮かべていた。
「私のこと好きって初めて言ってくれた・・・」
「そうだっけ?」
「もう一度言ってよ」
「・・・好きだよ」
「もっと言って・・・」
「うぅ・・・好きだよ大好き!レティシアのこと大好きだよ!」
「ふふ・・・私もケイネスのこと大好き!」
そんな風に元婚約者を切り捨てた僕だった。後から聞いた話では、イスカ嬢は今回の婚約破棄の責任を取って教会に行って奉仕に従事しているらしい。ちなみに僕から婚約者を寝取ったガネスはそのあと何人もの女の子と関係を持ってたことがバレて刺されたとか・・・ある意味漢だよあんたは・・・
★★★★★
「どうかな?」
あれから学園を卒業して本日ーーー僕とレティシアは結婚式を迎えていた。
レティシアとの日々は砂糖に蜂蜜をかけるより甘くて、語るのは恥ずかしいけどーーーとても素敵な日々だった。
ウェディングドレスのレティシアを見て僕は一言しか言えなかった。
「最高に綺麗だ・・・」
それに対してレティシアは嬉しそうに微笑んだ。
そして結婚式をあげて、僕とレティシアは晴れて夫婦になれた。
最後まで隣にはレティシアがいて、彼女に死ぬまで愛してもらえて、僕も死ぬまで彼女を愛せたので幸せな一生だったと言えるだろう。
ーーー婚約破棄されてから王女様に愛してもらえて僕は幸せになれたーーー
お読みいただきありがとうございます。
短編、婚約破棄は久しぶりだったのですが、気分転換に短編の婚約破棄ものはいいですね!書いてて楽しいです!
続編は・・・砂糖が欲しい方からの要望があれば書いたり書かなかったり?
ではではm(__)m