0005話「地下コロッセウム」
めっちゃ間が空きましたが・・・とりあえず、短いですが投下!!
ブラックファンタジーチームの5人も定石通り・・・というか、作戦通りに最初にシールドを唱えるが、その呪文の詠唱が全く違う。
「煌めく星、欠片を集めて、我が身を守れ」
「我が身に宿りし魔の雫よ、仇なすものより守れ」
「契約に従い、白き光と成りて我を守れ」
「我が熱き心をもって、我を護る盾となれ」
「我の本能に従い、迫る受難を討ち払え」
その呪文に被せるように、山神も呪文を唱え始める。。
「天空の数多の星、その輝きを我に与えよ」
6人の呪文の唱え始めと終了がほぼ同時になり、
「『シールド』!」
「『シールド』!」
「『シールド』!」
「『シールド』!」
「『シールド』!」
「『シールド』!」
発動させた瞬間、6人の前に透明に薄く輝く縦長の長方形が現れる。
そして、ブラックファンタジーチームのシールドは、先の試合と同じように隣のシールドと融合し、横長の一枚のシールドとなって発現。
対して山神のシールドは縦長のシールドのままだが、若干その輝きはブラックファンタジーのそれよりも強い。
ブラックファンタジーチームは、これも先の試合と同じ呪文を唱え始める。
「数多のきらめく星を治める存在にして主神。その瑠璃色の輝きを我が身を通して力を示せ」
「魔の理を総べる者。その紫紺の魔力を足元より螺旋を描いて我が身に纏わせよ」
「総べてを浄化する白の光。溢れるすべてを覆いつくす光量を持って敵を狙い打て」
「慈悲深き赤。溢れ出る赤き情熱、渦巻く朱色の光弾となりて我が目の前の敵を打ち払え」
「闇に隠された黒をつかさどる心。何物にも染まらない硬き心の黒の力を持って敵を圧倒せよ」
山神も同時に呪文を唱え始める。
「星神マジックの名において命じる。星の戒めを解き放ち、輝き猛る魔力を降臨せしめて敵を退けよ」
ブラックファンタジーチームの呪文詠唱も、山神の呪文詠唱も長さとしてはほぼ同じ。そして6人ぞれぞれの最後の呪文が唱えられる。
「『瑠璃色星間波動』!」
「『深紫魔破滅弾』!」
「『白光浄波理力』!」
「『情熱赤聖光』!」
「『黒力滅砕圧力』!」
山神だけ、ブラックファンタジーチームと同じようで、違う呪文を唱える。
「『輝魔滅殺光波』!」
呪文が完成し、ブラックファンタジーチームのそれぞれから蒼、紫、赤、白、黒の魔力が立ち上がり、激しく発光しながら山神に襲い掛かる。それと同時に山神からも魔力が立ち上がり、ブラックファンタジーチームに襲い掛かる!!
両者の間でお互いの魔力がすれ違い、お互いのシールドに当たる。山神のシールドは一瞬強く発光して、攻撃呪文に抗ったが、さすがに多勢に無勢だったのだろう。呆気なく砕け散り、攻撃呪文の余波が山神に襲い掛かる。
結果として山神の体力が削られるが、まだまだ余裕の表情で立っている。
山神の攻撃もブラックファンタジーチームのシールドに襲い掛かる。
こちらは強力な魔法だったとしても、5人のシールドが、しかも連結してより強固になっているシールドがあるのだ。当然揺るぎもしないと5人は思っていたのだが、予想を大きく外れて呆気なく砕け散る。
「なんやてぇ!!」
「うそぉぉお!!」
思わずそんな悲鳴を言ったのは誰だったのか。
どちらにしても、強力なシールドが砕けるような攻撃魔法だ。かなり強力な余波が5人を襲い、それぞれの体力を奪っていく。
その間にも山神は次なる呪文を唱え始めていた。
「星!蒼!マナ!エネルギーバインド!!」
呪文が短い分、早く呪文が発動する。
しかも、ピンポイントの枕詞が入っている為、通常の呪文よりも強力なものになる。
「マナよ!メタ・シールド!!」
それを見た幻人は瞬時にシールドを張った。
「メタ・シールド」は通常のシールドよりも広い範囲を守る広域防御幕だ。広域である分メンバー全員に対して有効だが、欠点としては通常のシールドよりも強度が弱いのだ。
一応枕詞を入れて強化はしているものの、あまり期待は出来ない。
「マナよ!メタ・シールド!!」
「マナよ!メタ・シールド!!」
「マナよ!メタ・シールド!!」
「マナよ!メタ・シールド!!」
幻人がメタ・シールドの呪文を唱えたのを聞いて、他の4人も慌てて同じ呪文を唱える。
まずはシールドを張らなければマズイと思ったのだ。
しかし、メタシールドは通常のシールドと違い、発動に若干時間がかかる。
そして、幻人のメタ・シールドが発動し、4人のメタ・シールドが発動する前に、山神の呪文が顕現。5人に襲い掛かる。
青く輝く魔力の網が、5人を包み込み消滅させんと、襲い掛かる。
「シールド!!」
メタ・シールドでは心許ないと感じた幻人は、更に自分の前に自分を守る為のシールドを発現させる。
エネルギーバインドがメタ・シールドにぶつかり、激しくスパークする。
短くも力ある枕詞を3つも重ねたエネルギーバインドは、幻人のメタ・シールドを破り、勢いもあまり殺すことなく5人に襲い掛かる。
各人に攻撃が到達しようとする瞬間、幻人のシールドだけが発動し、幻人を攻撃魔法から守る。結果として今度のシールドはエネルギーバインドに対して持ちこたえる事ができ、そのまま顕現を続ける。
しかし、他の4人のメタ・シールドは発現する事もなく、あっけなく4人の体力をすべて奪い去ってしまった。GAME OVERだ。
「うぎゃああぁ!!」
「えっ!マジ!」
「なんでぇ!わっかんな~い!」
「これは・・・すごいな・・・」
四者四様に悲鳴を上げたり、つぶやいたりしている中、幻人は次なる呪文を唱え始めていた。
「我が守護神『星神マジック』の名において命じる!!天空に煌めく数多の星よ!」
それを聞いていた山神はちょっと驚愕し、しかし素早く判断して、短くも強力な呪文で幻人を攻撃する事を選んだ。
「星明りをもって敵を照らし、敵を穿て!!マジック・ミサイル!!」
その呪文を聞いても幻人は怯むことなく呪文をすべて唱える。
「瑠璃色に輝く光を束ね、我が怒りを具現化してすべてを貫く槍となり敵を滅せ!!『神滅星光槍』!!!」
お互いの呪文は唱え終わり、それぞれの呪文が発動するのを待つ。
先に発動したのは山神のマジック・ミサイルであった。山神の前に光弾が具現化した。それを確認した山神はまっすぐ幻人を人差し指で指し示し、「ショット!!」の号令で幻人を攻撃する。
幻人の前には先に発動さえていたシールドがあり、まずはそれにマジック・ミサイルが激突。
一瞬は持ちこたえたものの、先のエネルギーバインドのダメージもあり、澄んだ音を立てて粉々に砕け散る。
マジック・ミサイルは勢いをそれほど減衰させる事なく幻人に襲い掛かったが、幻人に到達した瞬間に立ち消える。
「は・・・なんで?当たらなかったの?」
あり得ない現象に山神は次なる攻撃呪文を唱えるのも忘れ、思わずつぶやいてしまう。
その次の瞬間、幻人から凄まじい魔力の柱が立ち昇り、積層型の魔法陣が形成される。
「なに?・・・こんなの・・・見たことないわよ!?」
相変わらず呪文を唱える事を忘れた山神だったが、その魔法陣がゆっくりと自分に向けられてくるのを見て我に返り、一瞬考えて短くも力ある攻撃呪文を唱える。
「星!蒼!マナ!マジック・ミサイル!!」
呪文を唱え終わり、発現を待つ事1秒。先ほどのマジック・ミサイルよりも輝きが強い光弾が山神の目の前に現れた。急いで幻人を指し示したが、その時には幻人の魔法陣が山神を目掛けての準備を整え終わっていた。
「「ショット!!」」
幻人と山神は同時に力を開放し、それぞれの相手に向けて攻撃をしたが、攻撃が到達するのは幻人の方が早かった。
破壊の魔力は山神の立っていた場所を中心に荒れ狂い、巨大な魔力の柱となり山神の体力を一瞬にして奪い去った。
『星神「マジック」の敗北を確認。チーム「ブラックファンタジー」の勝利です』
「いやぁ~・・・流石にあなた達のチームには負けるかぁ・・・」
例え5対1でも全く負けるつもりが無かった山神は、腕を組みつつ感慨深くつぶやく。
今はさっきまで戦っていたコロッセウムを見下ろせる通路に机と椅子を並べて座っている。
山神も先ほどのような「ゴシックロリータ」のファッションではなく、最初に会った時と同じ紺色のビジネススーツ姿だ。
「いえ・・・こっちも結構ギリギリでしたよ」
「アタシはやられちゃったし・・・」
「っていうか、幻人以外は全滅・・・」
「5人分の呪文も結局効いてない感じでしたし」
「・・・5対1で辛勝って・・・」
幻人達も5人だったからギリギリで勝てただけで、個人戦なら絶対に勝てないと認識した。
さすが「星神マジック」を名乗るだけはある。
「ところで・・・幻人の最後の呪文って何なの?」
今まで聞いたことのない呪文だったので、茜が幻人に聞いてきた。
「あ・・・あれは思いつきというか、閃いたというか・・・」
と言いつつ、簡単に説明する。
山神の呪文を聞いていて、守護神の名前を呪文の枕詞に入れる事で、呪文そのものの威力が急激に増すのではないか?という疑問があり、イチかバチかの賭けではあったが、庄さんはありそうだと思い、思いつくままに呪文を唱えたのだ。
また、最後の力ある言葉については、今までストックしてきた呪文から、発動できると思われる単語を織り交ぜてみたのだ。
全てが賭けの呪文であったが、無事に発動できたという・・・かなり危険なものだった。
「あんたねぇ・・・こんな大勝負で実験しないでよ・・・」
「しかし・・・なるほどな。守護神の名を使うと威力が増大するのか・・・」
茜が愚痴り、法子が呪文の威力について納得をする。
それを黙って聞いていた山神が、その考えを思いもかけない単語によって肯定する。
「そうよ。でも、それはかなりの信仰心がなければ無理ね」
「信仰心?」
「別にアタシ達プレイヤーがゲームの中の神に対して信仰心を持つ必要はないのわ。要はね、ゲーム内のアタシ達のアバター・・・キャラクターね。が、今までどれだけの呪文を有効に使用してきたか・・・。それがキャラクターの信仰心として数値化されているの。まぁ、プレイヤーからは見えない、裏ステータスなんだけどね」
「呪文を唱える際に、どれだけ守護神から加護を賜り、力を得たか・・・枕詞をどれだけ有効に使用してしたかが信仰心として数値化されているのだよ」
突然、山神の得意げな説明を補足する声に、一同は驚き、後ろを振り返る。
いつの間にか、5人の後ろに明るいストライプのスーツに、緋色のネクタイを締めた男性が立っていた。
先ほどの説明に誰も反応せず、ただ自分を見つめる5対の視線を感じ、男性は思いついたように自己紹介をする。低いが良く通る声で・・・
「おっと・・・驚かせてしまったようだね。私はこの会社、株式会社D.Y.B.I.M.のCEO、大和 武人だ。よろしく」
やっと時間が取れるようになりました・・・・
一回、全話見直そうかな・・・




