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第六章 第一話「命に代えても」

「ルナちゃんはいいとしてっ。この人だけは絶対ダメですっ!」


 魔女を指差し、一緒に行くのは嫌だと訴えるアメリア。

 これから地属性最上級魔法の紋章を得るために、陽太とルナディ、アメリア、そして魔女の四人で移動することになったのだが――


「アメリア……気持ちはわかるけど、案外悪い人じゃないんだよ」

「じゃあ尚更ダメですっ!!」

「はあ?」


 アメリアの言い分はこうだ。

 ルナディはまだ子供だから心配いらない。

 陽太の中身は大人だから、ライバルにはならないと思ってる。

 しかし魔女は違う。

 ただでさえ前に陽太を攫っていった魔女だ。

 前の大人な姿なら取られてもしょうがないけど、今は自分と同い年ぐらいの美少女になっている。

 そんな彼女に陽太の心が持っていかれたら悔しいと。

 まあ、いわゆる女の嫉妬ってやつだ。


「しかもなんですかっ! お揃いの服まで着てー!!」

「ご主人様、殺っちゃおうにゃ! 陽太を殺っちゃおうにゃ!」

「いやいや、なんで俺」

「ぐぬぬぬぬっ……!!」


 魔女に睨みをきかすアメリア。

 ――誰にでも優しいアメリア天使はどこいった……


「ほんに近頃の天族は……わっちゃ人族が嫌いだと言っておりんしょう」

「じゃあなんで陽太様に協力するんですかっ!」


 ――ほんとそれ。

 魔女の狙いがいまいち分からない。

 本当に全ての紋章を集めたら元の世界へ帰れるんだろうか。


「安心しなんせ。次の目的地に着きんしたら、ぬしらとはしばしお別れでありんす」

「え、姐さん……?」


 陽太は思い返す。

 思えばここまで、かなり魔女に救われてきた。

 初めて会った闘技場でも、担任が陽太を殺そうとしてきたからやっつけてくれた。

 不死鳥の巣でも自業自得で溺れ死ぬところを助けてもらった。

 そして竜王の槍からも身を挺して守ってもらった。

 多少手荒なのが玉に瑕だが。

 魔女に依存しかけていた陽太。

 アメリアの心配もあながち間違っていなかったのだ。


「それなら……分かりました。では同行を許可しましょう」

「アメリア、なぜそんな上から目線……」


 こうして四人と一匹は次の目的地を目指すこととなった。

 アメリアの叔母さんも無事避難していたようで、挨拶に行く。

 こちらも皆の世話をしてせっせかと働いていた。

 ――やっぱり天族は基本的に優しいよな。

 叔母さんは魔女が一緒にいることに不安を覚えたようだが、事情を説明すると、結局はアメリアも同行することが一番安全なのだと理解してくれた。

 故郷ハーリオンにも知らせておくよと、陽太たちを見送ってくれる。

 ――天空にいるおじさんおばさん、アメリアは必ず守ります。

 ――命に代えても。

 命に代えたらアメリアも死んじゃうんだが。



    §



 帝都の民には恨みを買っている陽太、そそくさと町を後にして飛び立つ。

 アメリアを加えると四人になり、少年少女ばかりとはいえ、さすがに魔女の鎌には乗り切れない。

 定員オーバーだ。

 ルナディも魔法のステッキを持っているが、子供だからかシャーペンサイズの小さい杖なので、もちろん乗ったりできるはずもない。

 そこで陽太は不死鳥を呼び出し、背中に乗せてもらうことにした。

 その代わり沢山の竹の実を与えてやる。

 お世話をしてあげるのも契約だから。

 というより、ぴぃたんへの友情から進んで毎日行っていることだ。

 不死鳥は一日一回しか呼び出せないが、一回呼び出せば消滅しない限り行動を共にしても構わないらしい。

 ちなみに、やられても火の中から何度でも蘇ることができる。

 とはいえ既に二度消滅させてしまっているから、今後そんなことのないようにしてあげたい。

 そう言う意味でも強くなりたいと望む陽太。


「地属性もゲットして強い男になるぞ!」

「ピィー!」



 こうして、幾晩かの夜営を経て目的地へ向かった。

 その間、アメリアとも色んな話をした。

 サバイバルの話、エロ爺の話、そして……ハリルの話。

 実は陽太がハリルと再会する前に、アメリアはハリルと会ったらしい。

 例の難民キャンプがある隣町だ。

 ハリルは騎馬に乗り、一人でやってきたそうな。

 陽太はいないか、陽太を見なかったか、と。

 竜王の反対を押し切り、一人探し回っていたらしい。

 それを聞いてまた涙ぐむ陽太。

 二度と戻らぬ時を憎む。

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