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第四章 第九話「非難」

「で、ほかのみんなは?」


 魔女を残し、闘技場から出る二人。


「学生は寮でなんとか暮らしてますよっ。病気になっちゃってる子もいますけど……」

「病気って、大丈夫なの? アメリアは?」

「ありがとうございます、でも私は平気ですよっ! 治癒魔法が使えるから看護する側なんですっ」

「あいかわらず優しいなあ」

「でも寂しかったですっ……」


 陽太に抱きつくアメリア。

 発育途中のかわいい胸が、ちょうど顔に当たる。


「いや、あは、うへへ」


 ――ガブッ!


「痛って!」

「ココちゃん!? 陽太様は味方ですよっ!?」

「だってだって、今ご主人様のことエッチな目で見てたんだにゃ!」

「猫が喋った!」

「トラにゃ!」


 召喚獣、ココ。

 アメリアを守るために召喚された魔獣である。

 陽太はアメリアから事情を聞く。

 叔母さんが捕らえられてしまったことや、魔本を使ってココを呼び出したこと、この二週間の出来事を。


「で、どうしてアメリアは闘技場なんかにいたんだい?」

「きっと陽太様が助けに来てくれると信じて……時間があれば陽太様が消えたこの闘技場にいつも来てたんです……」


 ――そっかあ、なんていじらしいんだ。

 ほんとに優しい子だよ。

 世界がどうなろうと、この子を悲しませたくない。

 今はそれだけが俺の生きる理由だ――


「それじゃあ、みんなのところへ行こう。今なら、みんなを元の世界へ戻せるんだ」

「さすが陽太様……頼もしいですっ……!」

「や、もともと俺のせいだからね。……それに帝都自体は戻せないんだ」

「そうなんですか……とにかく叔母さんを……地下牢に連れて行かれた叔母さんをお願――」


 話の途中でアメリアは突然その場に崩れ落ちた。

 抱きかかえる陽太。


「アメリア! 大丈夫!?」

「ご主人様!?」


 意識を失うアメリア。

 陽太はアメリアをおぶり、学生寮へと向かった。

 心配そうに見上げながら魔トラのココも付いてくる。


「陽太てめえ、ご主人様に手出したらぶっ殺すからにゃ!」

「ちょ、キャラ違くない!?」

「ココのご主人様はアメリアちゃんだけだにゃん」


 これでも一応メスである。



 寮にはアメリアの言っていた通り、まだ学生たちが住んでいた。

 玄関へとたどり着く陽太たち。

 すると彼らは陽太の顔を見るなり怯え出した。


「お前は……!」

「ひっ、魔女の仲間だ!」

「くっ、来るな!」


 あわてて否定する陽太。


「違うんだ! 俺は何もしねーよ! てかそんな力、ないから!」

「うそつけ! 人族のくせに!」


 陽太が人族であることや、魔女が陽太を探しに帝都へきていたことなど、いろいろとバレてしまっているようだ。

 誤解されても仕方がない。


「幽世に転移させられたのも、お前の仕業らしいじゃねーか! よくもぬけぬけとその面を出せたな!」

「それは……本当にごめん」

「出ていけ!」


 確かにこの度の転移事件、犯人は陽太であることに間違いはない。

 何と言われても反論できない。


「わかった……とりあえず、この子をお願いします。俺は出て行くから」


 アメリアをそっと降ろし、玄関に横たわらせる。

 すると中等部らしき女子生徒が駆け寄ってきた。


「アメリアちゃん! 大丈夫!?」

「てか、近づいたら危ないんじゃないの!? やっぱりアメリアさんも魔女の仲間なんじゃ……」

「でも私、一応ルームメイトだし……」

「どうか、お願いします」


 深く頭を下げる陽太。

 そして女子生徒たちは無言のままアメリアを抱え、自室へと運んでいく。

 そこへ横から見ていた男子生徒が、陽太に向かって話しかけてきた。


「あの子、ずっとお前(人族)の味方してるせいでいじめられてたぞ。治癒魔法が役に立つからここに居させてやったけど、正直ウザかったぜ」

「アメリアがですか……?」

「そうそう、黙ってりゃよかったのに、馬鹿な子だよ」

「俺のせいで……」

「ま、天族は単細胞ばっかりって聞くしな。良いのは顔と体だけ、なんてな! あはは」


 ――ガコン!

 陽太は男子生徒の顔を殴った。


「痛っ! 何すんだテメエ!」

「俺のことはいい。なんとでも言え。だけどアメリアのこと……天族のこと悪く言ったら、許さねえから」

「おお! 陽太、よくやったにゃ! えらいえらい!」


 ココは小躍りしながら陽太を褒めた後、男子生徒を睨む。


「喧嘩なら買うにゃ」

「……ふんっ! 勝手にしろ!」


 こうして陽太はアメリアを寮に預け、城へ向かった。

 ココはアメリアを守るため、寮に残る。

 城へ向かうのは、叔母さんを連れ戻すためだ。

 地下牢に幽閉されていると聞いている。

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