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第三章 第七話「血」

「ハリル殿下、先に国へ戻りましょう」


 追って駆けつけた竜族の騎士がハリルに声をかけてきた。

 丘へと避難した陽太たち。

 前にポセイドンを顕現させた丘だ。

 見渡すと帝都があったはずの場所が異様な枯れ木林に変わってしまっている。


「オレも親父たちを手伝うぜ! ドラゴン退治!」

「ドラゴンのほうは問題ありません。直に討伐されることでしょう。様子を見て先に城へ帰還するようにと竜王からの申しつけであります」


 竜王からの申しつけ、すなわちハリルの親父さんからの指令だ。


「そうだな……」


 顎に手を当てて考えるハリル。

 小学生だが、その姿はやはりどこか王子たる雰囲気が漂って見えた。

 頼もしい。


「ま、陽太たちをここに残すわけにもいかんしな! わかった! 行くぞ陽太! ルナ!」

「城って、ハリルのか?」

「ああ。【ロキア】は馬を走らせればそんなに遠くはないぜ」


 帝都は幽世へと転移してしまったらしい。

 そう説明を受けた三人。

 幽世だと思っていたのは枯れ木林の部分だけで、陽太たちはそこを抜け出していたのだった。

 この世界がどんな地理になっているのかは知らないが、他にも街が点在しているのだろう。

 王都ロキア、竜族の街。

 確かにこんな強そうな竜族のいる街なら、安心して保護してもらえそう。

 そう感じる陽太。

 アメリアたちを見失ってしまったが。


「けどよ、アメリアを置いていくわけには……」

「つっても今はどうすることもできないだろ。 街ごと無くなっちゃってんだから。それに魔女はいつ追い駆けてくるかわかんねーぞ」

「くそっ、どれも俺のせいなのか……どうすれば」


 自分の魔法で帝都を転移させてしまったこと。

 そこにはアメリアもいて。

 当の魔女も自分を探しに現れた様子。

 全ての元凶になってしまっている自分に、不甲斐なさを感じる陽太。


「陽たん、ひとまず安全なところへ行くの」

「とにかくもう一度あの魔法で街を戻すんだ。そのためには体を回復させなきゃよ」


 血液を大量に使う魔法。

 貧血でフラフラになっていることから、そうすぐには二回目を使えそうにもない。

 回復までにどのくらいの時間を要するのだろうか。


「ハリルの国に医者はいるのか? 鉄分だ、鉄分。ほうれん草とかある?」

「てつぶん? なんだそれ」

「なんてこったい……」


 ――科学的なことは期待できなさそうだな。

 その代わり魔法の発達した世界、サプリメント的な魔法があることに期待しよう。


「とにかく行くぞ! みなの者! ついてこい!」

「ウォー!!」


 ハリルの一声に呼応し、竜族たちは槍を掲げる。

 ヤシャスィーンではないが、なかなかの貫禄だ。

 こうして陽太たちは数人の竜族に守られながら、親父さんたちより一足先に竜族の街へと向かった。



   §



「殿下!」

「キャー、ハリル殿下よ!」


 ハーツ帝国の南東にあるのがハウアー王朝、竜族の国だ。

 街に着くと、出迎えるように竜族の民が待っていた。

 帝都ハーディアに比べるとだいぶ小さい城下町ではあるが、竜族の国の王都ロキアである。

 ハリルが戻ってくるとは知らされていなかった分、普段より歓声が大きいようだ。

 黄色い声が沢山聞こえることから、ハリルはここでも女性のアイドル的存在なのだろう。

 眉目秀麗、剛毅果断、地味な陽太とは大違いだ。


「おう! みんな! 帰ったぞ!」


 馬の上から手を振るハリル。


「殿下あああ! よりたくましくなられて!」

「殿下! 学校は順調ですかい!?」

「殿下ー! 彼女はできたー!?」

「一気にしゃべりすぎだ! 話すと長くなるからまたな!」


 質問攻めにしてくる民衆へ、ハリルは屈託のない笑顔で返す。


「この国わりとフレンドリーなんだな。ハリルの人徳かな」

「そんないいもんじゃねえよ。まあ、ちいせえ国だからな。とりあえず城で親父たちを待とう。陽太は体を診てもらえ」

「助かるよ」


 城下町の中心にある城、そこがハリルの家だ。

 なんてったって王子様だから。

 槍を持った強そうな門番たちが出迎える。

 馬を預け、中へと案内される陽太とルナディ。


「陛下がお戻りになるまで、客室でお休みください。ご案内いたします」

「ああ、サンキュー! だが、まずは医務室に行くぞ!」


 ハリルに連れられ、さっそく診察を受けに向かう。

 医務室に入ると、もっさりお髭を口元に生やした年配の爺さんがいた。

 宮廷医師の先生らしい。


「おお殿下、申しつけくだされば、こちらからお伺いいたしましたのに」

「じっちゃん、こいつを診てやってくれ! 大量の血を流したんだ!」

「や、流してはないけど」

「ふむ……」


 宮廷医師の爺さんは診察を始めた。

 陽太は服を脱ぎ、ベッドに横たわる。

 脈や瞳孔を診るのはこの世界でも同じよう。


「その眩暈めまいや顔面の蒼白からして、かなりの血を失ったようじゃな」

「ですよね、フラフラします」

「じゃが、よく飲んでよく食べれば半月もすれば回復するじゃろう」

「えっ、半月? 二週間ってことですよね?」

「そうじゃ」


 二週間も戻らないとなると、帝都が心配である。

 魔女に何をされるかわからない。

 それに、幽世があんな枯れ木や血の池だらけであったら、危険すぎる。

 二週間というのは、命にかかわるのではないだろうか。

 陽太は顎に手をやり、真剣な面持ちで考える。


「こら! そうやってエッチなことばかり考えてはいかんぞ。鼻血が出たらどうする」

「考えてねーし!! てか二週間はヤバいなあ。輸血とか無いんですか?」

「輸血? なんじゃそれは」

「こう、他人の血を継ぎ足すみたいな」

「そんなことしたら死んじまうわい!」

「はあ」


 血液型とかの概念を知らないのだろう。

 そして合わない輸血を施して、死んでしまった前例でもあるのだろうな。


「まあ血の量が戻るのに半月ぐらいというだけじゃて。よい食事をすれば疲労感はあれども二、三日で普通に動けるようにはなるじゃろう」

「マジですか……動けるのはありがたいですけど」


 ――血が戻らないとあの魔法も使えないんだけどな。

 アメリアが心配でもあるし、自分のせいでいろいろと厄介な事態になっているのに、何もできない自分に不甲斐なさを感じる陽太。


「とりあえず安静だな!」

「しょぼーん」

「せっかくだしオレの部屋に泊まっていけよ!」

「おお。いいのか? ふわふわベッドで天蓋てんがいとか付いてそう」

「殿下、客人用の部屋は用意させておりますが」

「いいじゃん! 一人じゃつまんねーし! 遊ぼうぜ遊ぼうぜ!」


 無邪気な笑顔で陽太の肩に手を回すハリル。


「そうゆうところは小学生だよな」

「お前も小学生だっつーの! それに今度こそ一緒に風呂入れるよな!」

「ああ、そうだな。もう紋章も見られちゃったし。よし、ルナも一緒にお風呂入る?」

「陽たんのえっち……」


 胸を押さえながら背中を向けるルナディ。


「いや、そんな目で見てないってば」

「お前、変態だな! ルナはレディだぞ」

「違う違う、俺にとっちゃまだまだ子供すぎて」

「でも同い年だろ! そりゃ恥ずかしいぜ」

「モノがってるのを物語ものがたってるの」

「ルナさん、どこでそんな卑猥なダジャレを!」

「ではルナディ様は別のお部屋にご案内いたします」

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