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第二章 第七話「合同演習」

 始業式、そして水属性最上級魔法を習得した翌日。

 今日から正式に学校の授業がスタートした。

 陽太は小等部四年生、ルームメイトのハリルと元気に通学する。


 武術クラスの一日はこうだ。

 朝のホームルームで簡単な座学、帰りのホームルームで反省会、それ以外はなんと、ずーっとトレーニングか実戦練習なのだ。

 子供ばかりとはいえ、もともとトレーニング経験を積んできたクラスメイトの子らと違って、陽太はインドア生まれネクラ育ち。

 かなりきつい。

 毎日筋肉痛だ。

 仕事終わりのビールも出てこない。

 ただ、大人だった頃より動けているのは間違いないな。

 肺も苦しくない。

 ――なんだよ、小学生時分より体力落ちていたとか……前の俺しょぼすぎ。


 そんな毎日が続いた。

 ちょっぴり期待していたラブコメ要素なんてのも一切ないじゃないか。

 何の為にクラスにケモミミちゃんがいるのさ。

 何の為の寮生活なのさ。


「保健体育の授業、はよ!!」


 それに体に刻まれた最上級魔法の紋章を隠すことだけでも、寮生活では至難の業である。

 なんとかバレないように風呂はシャワーだけで済ませ、着替えも女子のようにモソモソと上手く着替える。

 毎日毎日大変だ。

 普通は男子ったら、バレないようにお風呂や着替えを覗く側の人間じゃないのか?

 こんなの、逆じゃないか。

 アメリアともほとんど会えないし。

 陽太は精神的にも体力的にも疲弊していた。


 しかし陽太には唯一、楽しみにしている授業があった。

 それは魔法クラスとの合同演習だ。

 武術も大して上達していない陽太にとってそれがなぜ楽しみなのかいうと、この演習はクラス同士対戦する訳ではなく、三人一組の連携を学ぶ授業だからだ。

 武術クラス二人、魔法クラス一人、その三人チームに分かれての演習になる。

 メンバーは成績によってバランスが取れるように割り振られた。

 そのメンバーがなんと、ルナディ、ハリル、そして陽太の三人チームになったのだ。

 ある担任の意向もあるのだが……それは後述するとして。

 ルナディは魔力が高く水属性最上級魔法をも使えるが、瞬時にどの魔法を選択するかなどの応用力に欠け、魔法クラスで成績は中位に位置するらしい。

 武術クラス四年生唯一の竜族であり、成績ナンバーワンのハリル。

 このハリルがまた、さすが戦闘種族というだけあって強い。

 槍術使いなのであるが、子供の身でありながらぶんぶんと振り回す姿は、陽太から見てもかっこいい。

 そして体力ゼロ、技術ゼロ、下級魔法もダメという学年一の落ちこぼれ陽太。

 チームごとの強さに優劣がつきすぎないようこのような組み合わせになったのだ。

 傍から見ればどう考えても足を引っ張るクズ役の陽太。

 他の生徒からは、厄介者を押し付けられて可哀想にとルナディやハリルを心配する声が飛んだ。

 だが、チームの二人は快く迎えてくれている。


「陽たんは最上級魔法使えるんだって、言ってやりたいの」


 陽太の魔力を知っているルナディはそう言ってくれるが、別に自慢しに来たわけではないのでこのままで構わない。

 変に目立つといろいろと面倒だし。

 こうゆうところは社会人を経験している陽太にとって大人な対応ができるのだ。

 まあ、言い換えれば諦め癖がついているともいえるのだが。


「いざという時に使うほうが、相手も油断しているだろうから。その時までとっておくよ」


 もちろんそのいざという時は、アメリアを守る時だろう。

 そこへハリルも笑顔で肩を組んでくる。


「お前が例え役立たずのミソッカスでも、オレはダチを見捨てたりしねーから安心しろ!」


 ひどいことを言われている気がするが、ハリルもルームメイトのよしみで頼もしいナイト様。

 授業が楽しみなのはこのメンバーになれて嬉しいからという理由もあるのだが、陽太にとってはもう一つ大切な意味がある。

 それは、最上級魔法を習得する近道になり得るからだ。


 実は始業式の翌日、陽太はアメリアから聞いた地属性最上級魔法使いの先生のもとを、ルナディと一緒に訪ねていた。

 四年の魔法クラス担任だ――



「ダメに決まっとるだろ」


 地属性の最上級魔法を教えて欲しいとお願いしたところ、見るからに性格の悪そうな顔をした中年男のその担任は、バッサリと却下してきた。

 まあ地属性魔法の一つも使えない陽太にとっては、予想通りの答えだったのではあるが。

 最上級魔法はその属性の下級から上級まで全てを習得した者のみが覚えられる魔法、それがこの世界の掟――

 陽太は特別だから。


「でも、このルナディは水属性をこの歳で極めてるんですよ。いずれ地属性も極めると思うんです。やり方と代償だけでも教えてくれないっすかね?」


 そう、陽太にとってはそれだけ聞けば特に用はなかった。

 だからルナディをダシにと連れてきたのだが、担任は皮肉めいた物言いでこう続けた。


「だいたいなんでわしがガキ共のクラス担任なんてしないといけなくなったか、お前ら分かっているのか?」

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