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第二章 第六話「水霊」

「じゃあ、正座してこう唱えるの」

「正座? わかった」


「大いなる蒼き海の精霊よ、我はみましの眷愛隷属、我が身に宿し水の魂を喰らいて盟約を結び給え……」


 ――ドクン。

 急に心臓の鼓動が、陽太の全身に響き渡る。


 ――ドクン。

 高鳴る鼓動。

 辺り一面が夜のように暗くなる。

 そして、目の前の湖がボコっと隆起したかと思うと――


 それは徐々に形を成して、巨大な人型となった。

 煌々と輝きながら言葉を発する。


『……我が名はポセイドン。海を支配せし神……』

「なんや、ごっついの来たがなー!!」


 驚きでつい関西弁になる陽太の前に現れたのは、十メートルはありそうな筋肉質の髭老人だった。


「陽たん、すごいの……神級の水霊……」

「てか、でかすぎだろ! 首のヘルニアなりそう」


『うぬが我を呼び出したのか……』

「たぶん、そうっす」

『せっかく昼寝しておったのに』

「はあ……それはすんません」

『しかし我を顕現させるほどの魔力など、久方ぶりじゃわい。うぬはもしや――』

「あ、それ以上は言わないで! 俺にもいろいろ事情が」


 人族ではないか、そんなことをルナの前で言われる困る。

 人族であることはまだバレたくないのだ。


『まあよかろう。うぬには三叉の矛(トライデント)の力を貸してやろうぞ。この一振りで【三叉の激流】を起こせるのじゃ』

「あ、ども……ありがとうございます」

「ほな、おやすみ」

「……はあ」


 そう言うと、ポセイドンはまた湖の中へと消えて行った。

 あっさりだな。

 なんの努力もせず強い力をゲットしちゃったけども。


「ポセイドンだかステーキのどんだか知らないけど、今の爺さん凄いのか?」

「海の神様。契約できる水霊たちのおさなの」

「長か! ラッキー、なんか嬉しいかも」

「――パクッ」


 ルナは陽太の腕に噛みついた。


「ちょ、ルナさんどうした?」

「神がいたから、噛みついた……の」

「はぁ……」


 ――オッサン相手にダジャレゆーな……

 まあ、この歳で言うダジャレは可愛いで済むのだけれど。


「あのね……陽たん、お願いがあるの」

「なんだ改まって」

「あのね、他の最上級魔法も探すお手伝いをしてほしいの」

「まあ俺も探すつもりだったからいいけど。ルナはなんでそんなに覚えたいんだ?」

「ルナは……ルナにはどうしても覚えなきゃいけない魔法があるの」

「この紋章と何か関係があるのか?」

「それはまだ言えないの……」


「ふむ……なら、俺が最上級魔法を使えることも、みんなには黙っててくれないか?」


 こうして水属性最上級魔法で契約したポセイドンの力を借り、陽太は【三叉の激流】を使えることとなった。

 試し打ちしたい気持ちを抑えて、寮へと戻る。

 またこの一帯を水浸しにするわけにいかないからだ。

 だいたいの効果はルナので見てるし。

 来るべき時が来たら使おう。


 そしてルナと別れた陽太は、寮の前でアメリアと出会った。

 男子寮の前で待っていてくれたようだ。


「アメリア」

「陽太様っ、お待ちしてましたっ!」

「始業式ではモテモテだったようだね」

「いえっ、私の心は陽太様だけのものですからっ」

「ちょ、こんなところでそんな恥ずかしいことを!」


 ヒューヒューと、周りから野次が飛ぶ。


「陽太! どうゆうことだ!」


 どこから現れたのか、ハリルまで怒声を上げる。


「……アメリア、こっち!」

「はいっ!」


 陽太はアメリアの手を引き、校舎裏の方へ逃げる。


「はぁはぁ……」

「どうされたんですかっ!?」

「あのなあ、君は可愛いんだから少しは自覚を……」

「そんな可愛いだなんてっ……嬉しいですっ……うふふっ」

「って駄目だ、天然族の娘だった。言っても無駄か」

「それで陽太様っ、わかりましたよっ!」

「最上級魔法を使える先生を探しといてくれってやつか?」

「はいっ! 何人かいらっしゃるようなんですけど、一番近い人だとなんと魔法クラス四年生の担任の先生が、地属性の最上級魔法の使い手なんだそうですっ!」

「おお、地属性! しかもうちの学年じゃないか。では早速明日にでも会いに行くよ」

「はいっ! あとですね、もっとビッグニュースがあるんですっ! 実はなんとっ! その四年生の中に水属性最上級魔法を使える子がいるそうなんですっ!」

「あー、水属性ね……」

「あれ? どうして驚かないんですかっ?」

「たぶんそれ、アメリアも会った子だよ……」


 陽太は放課後の出来事を話す。


「じゃああの帝都の入り口が水浸しだったのは、行きつくところやっぱり私たちのせいだったんですね……」

「まあ、そうなるわな」

「ルナちゃんにお礼しなきゃ」

「うん。てか、アメリア。これ見てよ」


 そう言って陽太はズボンを下げる。


「おちんちんがどうかしましたかっ?」

「いや違うから! ほら、右のふとももに」


 陽太は右のふとももに刻まれた紋章を見せる。

 ポセイドンとの契約が完了したので、発現したのだ。


「あ、それ紋章ですかっ……」

「ふっ、水属性最上級魔法を習得したぜ」

「わあーっ! さすが陽太様ですっ! ヨシヨシ」

「ヨシヨシすな!」

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