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古本屋の恋  作者: 藤山美弘
3/3

男の視点


彼女が店に入った瞬間、どこかであったことがあるような気がした。

僕よりはかなり年は下だろうが、懐かしい……

妹のような・・・少し違う気がするが、とても身近に感じる。


僕は読みかけの本を手にして、本を読むように視線を落とした。

彼女の動きを感じる。

気にしないようにするつもりでも、肌が彼女を探し感じているようだった。


どれくらい時間が経っただろう……

そんなに長い時間は経っていないのに、長く感じる。


彼女は一冊の本を持ち、レジに向かってくる。

僕は本を閉じ、彼女の持ってきた本を手に取り仕事をこなした。

彼女を見ると、やはり懐かしさを感じる。


彼女が、雨を拭く為に渡したタオルを返そうとして、渡している。

私は受け取り、その時に手が触れた。

雨で冷えた指先が一瞬だけ触れた。

その一瞬が私の心を弾ませた。


懐かしさに似た、愛おしさ……

まさか、今日初めて会った、かなり年下の彼女にそんな感情を抱いているのか……

自分を疑った。

でも、このまま彼女が帰るのを見ていることは出来なかった。


彼女の視線が、自分の後方にあることに気付いた。

僕の部屋がそのまま・・・彼女の視線に入っている。

「男一人で、こんな生活をしているのは珍しいでしょ。」

何故、そんなことを口にしたのかわからない。

彼女は困惑している。

すかさず

「学生さんですか?」

彼女がうなずく。

僕はこの空間を取り繕うかのように、自分の話をした。

とくに変わった話でもなく、どうでもいいような話。

彼女はそれをただただ聞いていた。


僕のいつもの空間に、新しい花を添えたかのように。


時々感じる彼女の視線が、僕の胸を軽く締め付ける。

そんな感覚を振り払うように僕は、ただ話した。


話しながらも彼女の先ほどの触れた指先の冷たさを思い出し、

僕は会話を途切れさせないように、ココアを淹れ、彼女に手渡した。


外を見ると雨は上がっていた。


雨が彼女を呼び寄せて、僕の心に愛おしさを呼び覚ました。

その雨が上がったことに彼女も気付いたらしく、


「そろそろ失礼しないと……」


寂しげな声に、僕は何も言えず、彼女をただ見つめた。


彼女の後姿は、僕を置き去りにしていく。


「また来てください。待ってます。」


孤独感を感じた瞬間に、口走っていた。

彼女は、軽く振り返り、会釈をして店を出た。


またいつもの空間へと戻っていく。


彼女はまた来てくれるだろうか……

もし、次にこの場所に来てくれたなら、

僕は、きっと自分に芽生え始めたであろう感情を抑えられるだろうか。


彼女の飲み終えたカップに手をやり、

彼女の残したぬくもりを感じる。


もし、前世というものが本当にあったのなら、

彼女はその時の僕の恋人だったのかもしれない。


そんなことを考えてる自分に苦笑しながら、

僕は現実へと戻っていく。


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