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古本屋の恋  作者: 藤山美弘
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出会い

2001年6月。

先日、梅雨入りしたにも関わらず彼女は傘も持たずにいた。

改札を出た側のコンビニの脇で雨が小降りになるのを待っている。

灰色の空を睨むかのように天を見上げて待っている。

通りかかる人は皆、傘を広げ家路を急いでいる。

彼女も早く家に帰ろうと土砂降りの雨の中を一歩踏み出してはみたが雨に濡れてしまった。

制服が肌に引っ付いて白いシャツの下から色白の肌が透けて見えている。

鞄の中からハンカチを取り出し雨を拭き取る。

5分程時は過ぎ、土砂降りだった雨も少し落ち着き始めた。

彼女は走って家に向かった。

家までは歩いて10分程の距離。

商店街を抜け、小学校の横を通り、少し小道に入った所が彼女の家。

商店街を過ぎた頃、雨はまた強く降り始めた。

彼女は商店街を抜けたすぐ脇に色あせた紺色の屋根の軒下へすべり込んだ。

彼女はさっきしまったばかりのハンカチを再び取り出した。

濡れた髪や制服を拭きながら雨を睨み、溜息をこぼした。

仕方なく後ろを振り返ると駆込んだオレンジ色の屋根は古ぼけた本屋だった。

彼女は仕方なく雨が小降りになるのを本屋で待つ事にした。

本屋とはいっても使い古された本を扱う古本屋だ。

他人が読んだ本たちに埋もれた店内は雨の湿気と古本の独特な匂いが充満していた。

彼女は店内を見回して見た。

客はいない。

当ても無く本を片手に取る。

パラパラと捲る。

「何かお探しですか?」

突然、背後から声がした。

彼女は驚いて振り向くとそこには40代くらいの男が立っていた。

「いえ、探してる本は無いんですが、何かあるかなって思って…。」

「そうですか。ゆっくり見て行ってくださいね。」

男はそう言って本に埋もれたレジカウンターに座った。

そして徐に、山積みになっている本を一冊取りページを捲った。

彼女は適当に本を漁った。

雨はまだ止みそうにない。

外を眺めていると、男が話かけて来た。

「すごい雨ですね。傘忘れたんですか?」

「はい。天気予報は60%って言ってたんですけど、忘れちゃって。」

「そうですか。どれだけ雨が降ると解ってはいても、傘を持って出た時に限って

晴れる事ってありますからね。」

と、男はにこやかに答え、レジの方へ戻って行った。

彼女は振り向くとレジの向こうには生活感の溢れた部屋になっていた。

彼女の頭の中で色々な空想が蠢く。

レジ向こうの部屋から男がタオルを片手に戻って来た。

「このタオル使って下さい。風邪引きますよ。雨はまだ止まないでしょ。」

と言い、男は雨の音を和ますようにラジオのスイッチをONにした。



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