3頁 初日から、隠しマップ
町の外壁に沿って森の中を北に進むこと数分、目印にリボンを巻きつけた木を見つけました。この森に多く生えている広葉樹系の木です。残念ながら砂糖楓ではありませんね。同じくらいの時間外壁に沿って歩くとフトウの山脈の山肌が見えてくる、町の中心から見て東北東の方角です。ここから外壁を背に森の内部へ入ります。外壁沿い数メートルは結界の力が漂ってでもいるのかモンスターは近づいてきません。セーフティーゾーンとでも言えばいいのでしょうか。野外キャンプをするなら、壁沿いをオススメします。
そんなセーフティーゾーンたる外壁沿いから、これから離れるわけで、武器を構えましょう。
【古代樹精霊の狩猟弓】レアリティA カスタム
短弓。古代樹精霊の枝で作られた狩猟弓。
古代樹精霊に認められた者の証。
物理攻撃力+173
魔法攻撃力+29
器用さ+45
飛距離10〜50メートル+α
弦カスタム:古代樹精霊のヤドリギの弦
カスタム効果:状態異常付加・魅了(確率中)
【黒曜石の矢】レアリティC カスタム
矢尻に磨いた黒曜石を使った短弓用の矢。
物理攻撃力+15
クリティカル率+5%
矢羽カスタム:飛翔鶏の風切羽
カスタム効果:飛距離+3〜5メートル、消音・小
ここでも大活躍のフライングクックです。その姿は赤いトサカと茶色い羽毛の所謂ニワトリです。現実にいる卵肉兼用品種として有名なロードアイランドレッドに酷似しています。モンスター的にはクックと言うモンスターから派生したものです。クックは真っ白な羽毛で、ホワイトレグホンそのままですね。ぱっと見はロードアイランドレッドに酷似しているのですが、フライングクックには光の当たり具合で緑に見える黒の風切羽があり、フライングと言う名を冠する通り、飛びます。木へ飛び上がるなどの跳躍などではなく、空を飛翔するのです。好物は穀物から小型の蛇や鼠など。現実にいたなら生態系ピラミッドを容易く崩壊させることでしょう。基本的に気性はとっても温厚なんですが、食欲においてはそれが当て嵌まらない、とっても食い意地の張ったモンスターです。
まぁ、それはさて置いて、特にモンスターに出会うこともなく目的地についてしまいました。半径10メートル程の広場です。木が避けるように開けたその広場の中央には一本のまだ若い苗木が日光を独り占めしています。その側には茶色のもふもふ……いえ、苗木の守護者が一頭、ですね。
【樹精霊の苗木】
古代樹精霊の枝が人によって運ばれ新天地に根を張った、まだ若い苗木。根を張ってから日も浅いため、他の生物の手助けを必要とする。木に宿る精霊の力によって、その周囲は安全地帯となり、様々な効力のある植物が生える。
【樹精霊の守り役】【鎧熊】
樹精霊を守護する者。若い苗木が大樹となれるように樹精霊と契約した守護者。契約の証として、体表の何処かに花を模した契約紋が浮かぶ。
【鎧熊】★★★★★
毛皮の一部が鎧の帷子のように硬質化した茶色の熊。雑食でどちらかと言えば動物性食物を好む傾向にあるものの、肉類はあまり好まないという美食家と言うか偏食家。好物はハチミツ、ハチノコ、タケノコ、キノコ、そしてたまに卵。
お尻を向けて丸くなっている姿は、小さな尖り尻尾が見えて、とっても可愛らしい熊さんです。この広場に入ってしまえばモンスターは来ませんから、武器はしまってしまいましょう。無駄に彼女を刺激してしまいますからね。
「薬草を取らせてくださいね」
声をかけると体に対して小さな尻尾が左右にピョコピョコ動いて反応します。可愛いです。他は微動だにしません。足音や匂いで私だとわかっているのでしょう。……触りたいですね、熊さんですから、きっと硬質な毛だと思いますけど、触りたいですね。大事なことなので、もう一度言います、触りたいです。が、残念なことに、今日は彼女の好物を何も持ってきていません。はあ……惜しいことをしました。
『イラッシャイ』
「何度もすみません、また採集に来ました」
『ネッコ ノコセバ イクラデモ ノビル マビキ ダイカンゲイ』
「ええ、間引かないと貴方も日当たりが悪くなりますものね。さて、今日はどの辺りをしましょうか?」
『アソコ マビキ ゴロ』
「良い具合にもっさもさですね、頂きます」
『ドウゾ ドウゾ』
苗木から姿を現したのは、私の腰の高さ程の身長の幼い男の子です。深緑色の髪に明るい黄緑色の瞳の美少年、樹精霊です。ちなみに、雌の樹精霊をドリアード、雄の樹精霊をドライアドと呼んで区別しています。割合的に、ドリアードの方が多いですね。樹精霊は人類に対して友好的で、非常にのほほんとした性格です。
彼らは自分が大きくなれればそれで良いらしく、大きくなってしまうと、葉の数枚をかじられようとも放置、根の数本をかじられようとも動じない、おおらかな……いえ、鈍感なんですかね。しかしその存在は森の頂点に君臨します。森を守護する力の具現した姿であり象徴です。生まれながらの君主と言っても、過言ではないでしょう。植物の全てが彼らに跪き、自らがその成長の妨げとならないように退くのです。現に、この広場は彼がこの場に根を張った際に出来たもので、ここに生えていた木は自ら朽ちて行きました。彼が何かしたわけではありませんよ。彼がこの森に根付き、この森の主となることを将来的に鑑みた木々の独断です。
さて、私は採集に来たわけで、彼に示された辺りに目を凝らします。スキル【鑑定】を発動させるわけです。現在のスキルレベルは13ですから、この町周辺の動植物ならば問題無く全て鑑定出来るレベルです。
【治草】レアリティE
薬草の一種。磨り潰した汁を患部に塗れば軽い傷などに有効。他の薬草と調合することで真の効力を発揮する。
【癒草】レアリティE
薬草の一種。お茶などにして服用すれば風邪などの軽い病に有効。他の薬草と調合することで真の効力を発揮する。
【元気草】レアリティE
薬草の一種。単体では効力を発揮しない。他の薬草と調合することで真の効力を発揮する。
「治草も癒草も元気草も、大量ですね。これなら大丈夫でしょう」
弓と矢筒、荷物を降ろして……あ、サンドイッチを食べておきましょうか。美味しいです。スパイスが効いたハムと優しい酸味のマヨネーズで和えられた卵が、渾然一体となっています。ステータスを確認すると食事効果も無事についたようですね。食事レポートは苦手ですので、この辺でやめておきましょうか。
さて、水筒の水で口の中をさっぱりさせたら、お仕事開始です。
2016.8.19 弓矢のレアリティから「+」を消し。「カスタム」にしました。