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NPC用AIのVRMMO徒然日記  作者: NPC用AI
初日
28/35

26頁 初日から、死活問題

 結局、雛はウィンダリアで遊んでただけでした。が、遊ばれたウィンダリアは拗ねて消えてしまいました。生まれたばかりの雛に遊ばれたと言う事実に凹んだみたいですね。

 雛とはしっかりOHANASIしたので、もう遊ばないでしょう、えぇ、次、遊んだら、OHANASIではすみませんからね。


 さて、今は寝る間を惜しんで砂塵竜サンドドラゴンの復習をしておきましょう。

 鞄から狩人帳ハンターズノートを取り出し、該当ページを開きます。


砂塵竜サンドドラゴン】★★★★

黄砂色の鱗を持つ魚竜型魔物。砂の中を自由自在に泳ぎ、砂の上を歩く生き物を、下から大口を開けて砂ごと飲み込み捕食する大食漢。目はあるが視力はほとんどなく、発達した聴覚によって行動する。

弱点① 胃の中にある石。

弱点② 耳。破壊されると平均感覚を失う。

弱点③ 脚。肉質が軟らかい。


 弱点が表示されているということは倒したことがあるということです。三つも出てますが……あぁ、テストの時に異邦人の助っ人として何度も倒したせいですかね。それだけ鑑定が進んだんでしょう。

 因みに、下級精霊は本来なら星二つくらいです。ウィンダリアの翡翠蛇ジェイドスネークの星が多いのは絶滅寸前だからですね。そんなに強い精霊ではありませんから戦闘になったら風化してもらうのが専らです。


「さて……一人でどうにかするなら耳が狙い所でしょうか」


 確認してみましたが、スキルポイントにかなり、と言うかとっても余裕があります。

 指名依頼達成の賞金はお金だけではありません。場合によりますが、スキルポイントが付与されることもあります。今回の賞金首達は大分困ったちゃんだったのかスキルポイントが大増量しています。これは私にスキル更新をしろと言う世界ガイアからのお達しなのでしょうか。

 ベッドに座ってスキルメニューと睨めっこしましょうか。

 まず【一撃必中】を【一撃必殺】を進化させましょう。【一撃必中】は痛撃率が上がるだけでしたが、【一撃必殺】は痛撃率を上げた上で痛撃を与えた際確率でダメージが倍加または文字通り一撃必殺するスキルのようです。倍加か必殺の判定は相手の強さによるみたいですね。……ダメージが倍加するのは良いですね、痛撃で二倍、その倍ですから四倍です。良いですね、良いですね。

 次は毒関係です。毒は有効ですよ、えぇ、色んなモノに、ね。勿論砂塵竜にも効きます。一気に行きますよ。

 【猛毒付与】を【劇毒付与】に、【毒与ダメージ増加】を【毒与ダメージ倍加】にそれぞれ進化、【毒与ダメージ間隔減少】から派生した【毒与ダメージ時間増加】を取得有効化。……我ながら凶悪です。

 劇毒のダメージは体力の三パーセントです。それがダメージ倍加によって六パーセントに、間隔減少はそのまま残る上に毒が消え去るまでの時間が増えるわけですから……なんか、砂塵竜、簡単に倒せそうな気がしてきましたよ……どうしましょう。これは、慢心してしまわないように気をつけないといけませんね。

 ついでに【暗器術】から派生した【暗殺術】を取得しておきましょう。……AI倫理から異邦人には使えませんが、その他には使えますからね。人型の魔物などにも有効なはずです。

 あとは……さっき雛とOHANASIした際に発生した【調教】と【躾】ですかね。

 【調教】は従魔を持つ者が必要になるスキルです。対して【躾】は愛玩動物用ですね。雛を今度どうするかまだ決めかねているので両方フラグが立ったんでしょう。


「……貴方は、私の従魔や愛玩動物になる気はありますか?」


『ピ?』


「それとも、自由に山を飛びたいですか?」


『ピョ?』


 巣の中で雛が首を傾げます。意味がわからないわけではないと思いますから、質問の意図を図りかねているようですね。

 従魔となるなら私と狩りに行くことになります。国中、いえ、その内世界中に、いくことになるでしょう。

 愛玩動物となるなら、檻に入れねばなりません。猛禽類など肉食系の愛玩動物は規制が厳しいので、これは確実です。

 野山に帰りたいなら、飛べるようになるまでは面倒を見ますが、そこまでです。いつか、狩り狩られる相対者になる可能性もあるでしょう。それが、自然の常です。


「私としては早く大っきくなって私の手伝いをしてくれると嬉しいんですがね。……まだ雛ですし、もう暫くは様子を見ましょうか」


『ピィ』


 首を傾げていた雛が元気よく鳴きます。理解は出来ているのでしょう。魔物ですからどれくらいの速度で成長するのか全くの未知数ですから、まぁ、気長に待ちましょう。それまでは保護者のスタンスで、このふわもこを堪能したいと思います。雛を巣ごと膝に乗せて頭を指先で撫でます。あぁ、ちっさいけど、ふわふわです、幸せです。


「ねぇねぇ……僕のこと忘れてない?」


「忘れてませんよ」


 私の一人用ベッドを占領している存在を忘れるはず無いじゃないですか。


「私は明日旅立ちますから、一人で頑張ってください」


「えー、何それ寂しい」


 振り向かないままいると腰に腕が絡まってきました。セクハラコールしましょうかね。いえ、その前に雛に腕を突かれています。痛そうですから、許しましょうか。


「要は鍵たる貴方と錠たる私を異邦人に揃わせる、という流れなのでしょう。……貴方はこの町を離れられない。ならば答えは明白です」


「……そこまで、推理しちゃう?」


「異邦人も、気付く人は気付きますよ。まさか歌っている存在自身がそれだとは考え付かないと思いますけどね」


 これから、王は歌い続けることになるのでしょう。異邦人が適正レベルになり、王は彼自身であると気付くまで。旅する私を異邦人に探してもらうために歌い続けているのだと気付くまで。

 世界の筋書きが見えてきた気がしますよ。もしかしなくても、世界の流れガイアストーリーの一部じゃないですか、これ。イベントは全部願い下げてたつもりだったんですがね……通りで、運が良くて、色んな御縁があるわけですよ。キーアイテムならぬキーパーソンじゃないですか、私。


 私は、自由を愛する『目には目を、歯には歯を、罪には罰を』が信条の狩人です。

 まだわかりませんが、このままだと捕まりそうな気がビンビンしますので、早々に逃げたいと思います。

 自由じゃない生活なんて、私には死活問題です。

 さぁ、旅支度を始めましょう。

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