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NPC用AIのVRMMO徒然日記  作者: NPC用AI
初日
27/35

25頁 初日から、想定外

 朝から踏んだり蹴ったりでしたね。オープン初日はこんなものなんでしょうか。まぁ、なんとか乗り切れたと考えて差し支えないでしょう。


「賞金はどうしますか?」


「50000yを財布ストレージに、それ以外は組合預かりでお願いします」


「かしこまりました」


 狩人組合には夜間受付があります。まぁそうですよね、異邦人にとっては時間なんてあまり関係無いでしょうし。現実の世界に比べて時間経過が速いはずですが、この世界に来れる時間は限られているはずですし、まぁ、ずっと動いてる方が効率が良いとは思いますよね。この世界でも睡眠をある程度取らないとパフォーマンスに影響があることにはまだ気づかないでしょうからね。

 そんな話はさて置いて、組合長のいない今のうちに報告すべき案件がありましたよ。


「私への指名依頼は全て消化したと思いますから、明日からカネシュの町に行きます。しばらく、と言うか長く帰ってきませんから」


「え?」


「組合長への報告は明日でいいでしょう。ぶっちゃけ、私がカネシュの町に着く昼頃まで報告を忘れていてくれるとありがたいんですがね」


「えっと、あの、忘れることは出来ないので……明日のお昼頃に、アルテミシアさんがカネシュの町に行った、と組合長に報告すれば良いですか?」


「……えぇ、それでいいです」


「かしこまりました。依頼おつかれさまでした。またのご利用をお待ちしております」


 ……この子も、まだガチガチの子でした。いえ、この場合、ガチガチだからこそ助かったと言えるでしょう。ここで柔軟な子がいたら、たぶん朝一か今すぐ報告して、私を引き留めにかかるはずです。多分、この子、怒られるでしょうね……いえ、確実に。


「ついでですから……この依頼だけ受けていきましょうかね」


 受付すぐ横の依頼板から依頼札を一枚剥ぎ取り差し出します。


「はい。緊急討伐依頼【砂の下から砂塵竜】ですね。

この依頼は失敗率が非常に高くなっていますが、よろしいですか?」


「……異邦人? それとも組合員?」


「現在、異邦人の依頼失敗率が100%、組合員の依頼失敗率は誰も受けていないため計算不能です」


「つまり、まだ誰もカネシュの町に行けていないと……」


「はい、まだカネシュの町は砂塵竜サンドドラゴンの砂嵐から解放されていません」


 誰か嘘だと言ってください。最初に行くべき南のエリアボスはテストから強さが変わっていないはずなんですが。これは想定外です。


「……取り敢えず、受けとくだけ受けておきましょうか」


「かしこまりました」


《狩人組合からの緊急討伐依頼【砂の下から砂塵竜】が発生しました》

《依頼を受けますか?》

《→はい》

《 いいえ》


 もちろん受諾です。ここまで来たら、もうどうにでもなれです。私が行く前に誰かが討伐することを祈りましょう。


「このまま各交易路が閉鎖されたままですと食糧他諸々に影響が出ます。出来うる限り早めにお願い致します」


「はいはい」


 ひらりと手を振って組合をあとにします。が、私が出るのは屋上です。この装備で大通りは流石に歩けません。全身黒尽くめの上フードで顔を隠しているので、何処からどう見ても不審人物です。

 異邦人が時間も気にせず歩く大通りを遠目に見下ろしながら、既に歩き慣れた家並みの尾根を歩き出します。仕事後は気持ちがいいですね。若干、寒いですけど。まぁ、そんな寒さも次のカネシュの町に行けばおさらばですから、嬉しい限りです。寒いのは苦手です。【耐寒】があっても寒いのは苦手です。何度でも言いますよ。寒いのは嫌です。

 そんなこと考えてたら宿に着いてしまいました。なんて思ったら部屋の雨戸が閉められています……入れないじゃないですか。……しょうがないですね……これも想定外ですよ。


「ウィンダリア」


『ヨンダ?』


 何も無い宙空からするりと現れ首に絡まる白蛇。私と契約してくれている精霊です。


「小間使いで申し訳ないですが、すぐ下の部屋の中に入って窓を開けてもらえますか? 貴方の王が寝てると思いますけど、気にせず開け放ってください」


『ワカッタ

アルジ シメダス オウ ワルイ

オシオキ スル』


 細い体をくねらせ風に乗り再び風に溶ける白蛇。こんな私と契約してくれているんですから物好き……いえ、王が私に無理矢理押し付けたと言ったほうが良いのですが……受け入れてしまった私も物好きでしょうね。蛇も、好きなので。


翡翠蛇ジェイドスネーク】★★★★

蛇型下級風精霊。美しい翡翠色の瞳を持つ白蛇の姿をした風の下級精霊。瞳が蛇目スネークアイと言う宝石になるため乱獲され、絶滅寸前。


 一見ただの蛇ですから常に顕現してくれていても良いのですが、私の魔力が心許無くなってしまうので、風に溶けて側にいてくれるようです。名前を呼べば即座に顕現して実体を持ってくれる本当に可愛い子です。私の魔力が減りますが、ね。

 下から雨戸が開く音が。見下ろせばヴィンダリアが顔を出して見上げてきています。良い子ですねぇ。

 オープン初日から呼び出すなんて考えてませんでしたから、これも想定外ですね。


『アルジ ハヤク』


「はい?」


『ワシ コワイ』


 あ、蛇って、鷲の食べ物でしたっけ。これはうっかり。……でも、まだ雛なのに怖いって、まだウィンダリアが丸呑み出来るサイズだと思うんですけど……まぁ精霊ですからそうなっちゃうんですかね。


『ダリア シッポ タベラレテル

アルジ ハヤクッ』


 ……タベラレテル……食べられてる? それはいけません、降りましょう。身内での食物連鎖なんて見たくありませんからね。もう、想定外が過ぎますよ。

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