24頁 初日から、裏稼業みたいな本業 ②※グロ
天井板を外しテーブルに飛び降りると同時に、苦無を三本、放射線状に投げ付けます。
「が……っ」
「ぎゃっ」
「ぐぇ」
それぞれ違う声を上げて椅子から転げ落ちます。
皆さん、防具らしい防具も着ていませんし、苦無達もいい仕事をしてくれました。三人共心臓の辺りを突いています。痛撃を通り越して一撃必殺だったようです。
私の【必罰の苦無】は三姉妹です。復讐の女神であるエリニュス三姉妹を意識してはいます。名前まではつけていませんが。
《【連続殺人犯】ラース=ゼーレの狩猟に成功しました》
《指名依頼【連続殺人犯を狩れ】の目標を達成しました》
《指名依頼【連続殺人犯を狩れ】の報告が可能になりました》
《達成期限までに依頼主に報告してください》
《【凶悪殺人犯】ジェイク・リパの狩猟に成功しました》
《指名依頼【凶悪殺人犯を狩れ】の目標を達成しました》
《指名依頼【凶悪殺人犯を狩れ】の報告が可能になりました》
《達成期限までに依頼主に報告してください》
《【強盗殺人犯】グラトニー・ロースの狩猟に成功しました》
《指名依頼【強盗殺人犯を狩れ】の目標を達成しました》
《指名依頼【強盗殺人犯を狩れ】の報告が可能になりました》
《達成期限までに依頼主に報告してください》
《スキル【暗器術】のレベルが上がりました》
《スキル【暗器術】のレベルが限界になりました》
《スキル【暗殺術】が取得可能です》
《スキル【暗躍】のレベルが上がりました》
《スキル【隠蔽】のレベルが上がりました》
《スキル【投擲】のレベルが上がりました》
《スキル【一撃必中】のレベルが上がりました》
《スキル【一撃必中】のレベルが限界になりました》
《スキル【一撃必殺】に進化可能です》
天の声がうるさいです。早送りです早送り。こんな時に一々読んでいられません。後でログを見れば十分でしょう。苦無に結わえていた【テグスワームの糸】を手繰り寄せ苦無を回収します。心臓に刺さってしまったために、三人分の鮮血が一気に噴出します。私はテーブルの上にいたのが幸いしたのか一滴も浴びていませんが、床に立つ最後の一人は飛び血で赤く染まっています。
「断罪者さんに狙われるなんて、僕も有名になったね」
嬉しそうな音が多分に含まれているのは、M属性なんでしょうか。それよりも気になるのは、私に対する呼び名です。なんですか、断罪者って。私はただの狩人ですよ。
「僕たちみたいな人間の間で通ってる貴方の通称だよ、お姉さん」
顔に出しすぎたかもしれません。とは言ってもフードで鼻下以下の顔半分くらいしか晒していないんですが……口元にまで出てましたかね。
「だんまりかぁ、話してみたかったんだけど……しょうがない。
貴女に殺されると強制的に牢獄リスポーンらしいし、まだ捕まりたくないからね」
勝手に解釈した彼女が取り出したのは白い石……紛れもない帰還石(白)です。いけません、使わせては……私が手を伸ばすと同時に、彼女の手にあった石はその足元に叩きつけられ、魔法陣が展開。
「じゃあね!」
「……」
「……なんで、魔道具組合に飛ばないの?」
転移は、発動しませんでした。それもそのはずです。
「嘘でしょ……高かったのに、不発とかあるの!?」
いいえ。帰還石は……屋外の非戦闘時にしか使えないんです。竜で依頼なゲームの町移動呪文が戦闘中使えなかったり室内で使うと天井に頭をぶつけたりするのと同じ、といえばわかる人にはわかるらしいですが、私にはさっぱりです。彼女に伝えたところで今は聞く耳がないでしょう。
「なんでなのさ! しかも消失って嘘でしょー?!」
「売り子の説明をきちんと聞かないからそうなるんですよ、次に買うときはきちんと説明を聞きましょうね……いつになるか、わかりませんけど」
「え……あ、っ」
足元から消えていく魔法陣を見下ろし恨み言を続けていたせいか、私の存在を忘れていたようですね。それだけ衝撃的だったんでしょう。帰還石が不発に終わったことが。
「それと、牢獄への土産に一つお教えしましょう、私は断罪者ではなく、賞金首狩人です」
手元に戻っていた必罰の苦無を再び投げつけます。まっすぐのど元へ防御もされることなくささった苦無からどす黒い紫色の煙が立ち上ります。
「嘘……NPC用AIはPKできないって、AI倫理に引っかかるってネットで……殺しじゃなくて、狩りとか……毒のスリップダメージとか……逃げ道、あり……す、ぎ……」
言いながら倒れ伏す異邦人殺し。少し遅れて、他の三人と一緒に光のポリゴンになって消えていくのを見送ります。次に彼女たちが目覚めるのはここから遥かに離れた洋上に浮かぶ絶海の牢獄。牢獄はこの世界での刑期時間を終えない限り出られず、キャラクターリセットしたとしても追跡されて再び舞い戻ってしまう悪夢な仕様になっています。罪を犯す際は、大なり小なり、是非お気を付けください。
《【異邦人殺し】異邦人ジェンヴィ=プライドの狩猟に成功しました》
《緊急指名依頼【異邦人殺しを狩れ】の目標を達成しました》
《緊急指名依頼【異邦人殺しを狩れ】の報告が可能になりました》
《達成期限までに依頼主に報告してください》
私は賞金首を狩る仕事をしています。ただ、それだけです。対象が様々なだけです。
そう言い訳できるAIだからこそ、この仕事に従事しているといっても過言ではありません。
本来なら、人の形をとるAIにはAI倫理というものが必ず存在し、人間を殺傷することが基本的に不可能です。しかし、さきほども言った通り、私は『言い訳』ができる非常に柔軟な変異的AIなので、こんな抜け道を使えているわけです。
致命的なのは、変異した固体故に暴走アラートの鳴る回数が他のAIに比べて非常に多いという点でしょうか。自分では特に何も異常を感じていないときに鳴られたりするので少し鬱陶しい時がありますが。それ以外は特に不便を感じたことはありませんし、まぁ、仕事柄しょうがないでしょう。
さて、店員さんがくる前にずらかりましょう、そうしましょう。
《スキル【猛毒付与】のレベルが上がりました》
《スキル【猛毒付与】のレベルが限界になりました》
《スキル【劇毒付与】に進化可能です》
《スキル【毒与ダメージ増加】のレベルが上がりました》
《スキル【毒与ダメージ増加】のレベルが限界になりました》
《スキル【毒与ダメージ倍化】に進化可能です》
《スキル【毒与ダメージ間隔減少】のレベルが上がりました》
《スキル【毒与ダメージ間隔減少】のレベルが限界になりました》
《スキル【毒与ダメージ時間増加】が取得可能です》
……天の声、余韻が台無しです。もう少し自重してください。




