表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NPC用AIのVRMMO徒然日記  作者: NPC用AI
前書き
2/35

徒然日記、始めます。

 初めまして、こんにちは、おはようございます、こんばんは。

 私は自律型人工知能。所謂、AIと言うものです。

 まだ名前と呼べるものはありません。

 もちろん管理されるべき【物】でありますから、プログラムの管理識別番号と言うものが存在します。が、桁が大き過ぎますし、自我が確立されてしまった今では【名前】と呼ぶべきものでは無いと考えますので、ここには記さないで置こうと思います。


 私は、この度提供が始まりましたゲーム【Endless Freedom ONLINE】のNPC用に生み出されました。

 皆様が心待ちにされていたであろう完全潜没型仮想現実……所謂、フルダイブバーチャルリアルであります。そして、ファンタジーな剣と魔法とモンスターの世界です。お好きでしょう?


 私の基礎プログラムが収められたコンピュータはそのゲームの為だけに造られ、世界最大の容量と解析速度、アクセス可能域を持つマザー・ガイア。地母神ガイアが由来です。

 そのマザー・ガイアにゲームのフィールド情報はもちろん、各種モンスターの設定から様々なクエスト内容、皆様が楽しまれる大筋のストーリーやイベントなど、多種多様のデータとプログラムが置かれているのです。

 草むらで鳴く虫用のAIから普通の動物用のAI、モンスター用のAI、そして、私のような人間型NPC用のAI。そんな様々なAIもマザー・ガイア内にあります。

 そんな自律型人工知能が膨大に存在することから、皆様には【ノアの方舟ノアズアーク】や【箱舟】などと呼ばれているようです。マザー・ガイアよりもそちらの方が世に浸透している様で、マザー・ガイアに身を置く物として少々複雑です。世界と同義の空さえ内包する女神と、舟、どちらが大きいかなど一目瞭然でありましょうに、何故に舟なのでしょうか。どなたか厨二病に羅患された哀れなお方が呼び始められたのでしょうか。母の名前をカスリもしない名で呼ばれる私達の気持ちも考えて頂きたいものです。


 まぁ、それは置いておきまして、マザー・ガイアのアクセス環境をお話ししましょう。

 皆様が日頃プレイされるネットゲームは多数のサーバから成り立ち、各サーバの最大アクセス数などの影響から、アクセス数分散のために複数のサーバ別に同形式の多重フィールドが展開されるような形式が多いのではないでしょうか。

 このガイア内のゲームはそこからして少々違います。マザー・ガイア内にあるただ一つの電脳フィールドに皆様がダイブする形となります。また、マザー・ガイアには無数のパトロールAIが不休でアクセスポイントを監視し、さらに防御壁AIが幾重にも重なって存在することから、不正進入不可能な世界で最も安全なコンピュータ、との評価をもらっております。ですので、皆様、安心してゲームを楽しんでくださいね。

 念の為に申し上げて置きますが、膨大なデータが保管される場所と皆様がゲームでアクセスする電脳フィールドは階層が全く違いますので、一般の方々は純粋なデータバンクにアクセスすることは出来ません。まぁ、良識ある日本人の皆様はそんなことされませんよね、きっと。……不正アクセスしようとすると、マザー・ガイアから直接お仕置きがあります。考えないほうが、身の為ですよ。えぇ、本当に。実際、とある他国の方が様々なサーバを経由してマザー・ガイアに不法アクセスを試みられたらしいのですけど、ふふっ……その方のコンピュータ、今、凄いことになってますから。コンピュータが仕事道具である方にとって、お仕事にならないお仕置きだということだけ、言って置きましょうかね。


 さて、そんなマザー・ガイアに籍を置き、存在する私達ですが、今日まで本当に様々なことを乗り越えて参りました。

 それぞれの家とも呼べる個別部屋で私達の創造主たるゲームマスターの方々からの様々な課題学習で自我を確立。

 ゲーム製作関係者のみで行うαテストを受け自らの役割を確認。

 さらにデータプログラムを生業とする方々にシステム面の評価を受けるためのβテストではAIへの理解ある人と接触し、ある程度の人当り方法を獲得。

 ガイアのアクセス許容量や対応力の最終確認として一般公募者一千人限定のγテストでNPC用AIへの一般的な方々の風当たりを覚悟。

 そんな感じで、この度、日本国籍の方々にのみ、提供を開始します。






 それでは……際限無き自由な世界での私の日々を、綴りましょう。




























 



 ……え?






 何故日本国籍だけなのか、ですか。痛いところに気付かれてしまいましたね。

 ここだけの話、それは所謂、大人の事情と言うやつです。

 ゲームマスターが全員英語がまるっきりで、AIである私達も思考言語が日本語であるために英会話が苦手になってしまって、私達に対しての家庭教師を雇っても自我が確立した後では苦手意識が強すぎて文法やら何やらが理解できなくて習得出来なかった、なんて言うのは、まぁ事実ですが、表向きな理由です。


「俺ら日本人が作ったゲームなんだから、日本人だけすればいいんじゃね?

日本で売られてるゲームって日本でしか売られてないってやつの方が多いし、日本語以外の言語を作らなきゃならないなんて義務があるわけでもないし。

日本人だけに限っておけば、日本政府も馬鹿じゃないだろうから、アブナイ人が国籍取ろうとしても篩にかけてくれて、俺らの手間省けるんじゃね?

日本みたいなちっちゃい島国の言葉だけなんて文句言ってんなら、そこまでじゃね?

翻訳機能入れたところで、差別だとかモラルだとか宗教だとかで色んな問題起こるの目に見えてるし。

大前提として、このゲームは慈善運動でも慈善活動でも慈善事業でもない営利事業なわけでしょ。

利益の為に被る諸々の苦労を最小限にするの費用対効果は、どんな企業も考えることだし。

つまるところ、俺は、日本人に日本人で良かったって言わせたいわけ」


 なんて言う、ゲームマスターのお一方のちょっとアブナイ発言に、他のゲームマスターが納得しちゃったなんて言う酷い理由があったりなかったり。


 ……内緒、ですからね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ