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NPC用AIのVRMMO徒然日記  作者: NPC用AI
初日
10/35

8頁 初日から、自己責任案件 ②※グロ

※ NPC用AIより重要連絡 ※


 前ページに引き続き、再び流血表現箇所とスプラッタ表現箇所があります。

 ミイラが苦手な人はお戻りください。


 それでは、再び【自己責任】でどうぞ。



 キイィン……ッ




 甲高く虚しい悲鳴をあげて、フランベルジュは鍔に近い辺りで真っ二つ。折れた刃先は刃全体の80パーセントほどでしょうか。苦蓬の溝に深くはまったままで、簡単に抜けそうにありません。利用しない手はないでしょう。


「この刃で出来る傷の痛みを知れば、もう使おうとも思わないでしょう?」


 初期装備の防具と言うのは、いわゆる布の服。

 フランベルジュは布を断ち、皮を裂き、肉を抉る、世が世なら必殺の剣。

 これもまた、論理式に当てはめることも烏滸がましいですね。


「さようなら、です」


 漣を引き抜き、その背で苦蓬にはまったフランベルジュの刃を押さえ振りかぶります。

 目の前の顔が恐怖で歪んでいく様が酷くゆっくりと見えるのは、たぶん、私の感情が高ぶっているせいでしょう。

 思い切り振り下ろせば、視界は一瞬で真っ赤に染まります。そのまま袈裟懸けに切り捨てると斬撃の反動か、フランベルジュの刃先がすっぽ抜け、吹っ飛び、少し離れた地面に突き刺さりました。

 大量の鮮血をまき散らしながら、最後の一人がその場に崩れ落ち、地面に血溜まりを広げていきます。キャラクターアバターが消えないあたりを鑑みるに、一撃ではHPを削り切れなかったようですね。ですが、それも時間の問題でしょう。アバターの頭上には大小二つの赤い雫を模したマークが浮かんでいます。状態異常の流血を表すアイコンです。傷が治らない限り血が流れ、HPと共に流れ出ていく。

 さて、一思いにとも思いましたが、このまま放置しても問題無いでしょう。回復魔法はそれぞれの魔法をある程度レベル上げしなければ使えるようになりませんから、今時点で覚えているはずがありませんし。彼が死に戻ると同時にこのフィールドも解除されますから、それまで、樹精霊の彼と一緒にともえさんをモフモフさせて頂きましょうか。


「くそ、が……ぁ」


「?」


 ともえさんのモフモフに意識を取られ過ぎていたようです。声を辿ると、鮮血エフェクトをまき散らしながら目の前の彼が死に体で立ち上がります。流血の状態異常は動けば動くほどHPの減少率が上がります。


「道連れに、してやる……っ!」


 微かな殺気を漏らしながら、傷を庇うかのように前屈みになって歩いてくる姿は、なんともはや、滑稽を通り越して痛々しいです。もちろん、別の意味で。


「……そんな状態で?」


「お前じゃねぇよ!!」


 言うと同時に何かを振りかぶり、崩れ落ちながら、何かがその手から投げ出されます。見覚えのあるそれは、私の耳をかすり、向かう先は……樹精霊!

 微かにピリピリと身体を刺激する感覚は、状態異常の麻痺です。いつの間に拾っていたのでしょう。ともえさんに首を折られた子が持っていた麻痺の苦無のようです。麻痺耐性があるものにとっては血流が滞った時に起こる痺れの軽度のもののような感覚しか起こりません。が、それを通り越して、結構な痺れになっているのは、大分強い麻痺の効果があるようです。


「避けて下さい、麻痺の苦無です!!」


 慌てて声を張り上げ振り向くと、そこには一瞬にして深緑の木々が密集して聳え立っていきます。全てが相当な大木です。森林を作り上げる木魔法【ジャングル】辺りでしょうか。大木が乱立し自然の迷路になる、非常にレベルの高い木魔法です。苦無は、一番大きく育った木の幹に突き刺さっていますね。……高台をわざわざ作ってもらわなくても、良かったみたいですね。


「ギャアァッ?!」


「?!」 


 いきなり後ろから聞こえた悲鳴に驚いて振り向くと、そこには地面から何本もの木の根がいつのまにか生えていて、フランベルジュ使いの少年の四肢を貫通してそれぞれを持ち上げ宙吊りにしていました。その根の一本からふわりと現れるのは、樹精霊の彼。


『オオキイ マホウ オナカ ヘル

イタダキマス』


 プレイヤーに手を添えて、告げられたそれは、死刑宣告と変わりありません。

 樹精霊の彼の食事は、物理的な栄養を摂取することではありません。植物的に根で肥料や肉から栄養を吸い上げるわけでは無いのです。


『ミシヨウ マリョク ウマウマ』


 彼が生きる糧は、この世界の生物全てに宿る魔力、プレイヤー的に言うなれば、MPです。さらに言うと、生まれてから一度も使用されず一度もポーションで回復されていないMPが一番美味しいらしいです。私はαテスト時代からこの姿で何度もMPを使用していますし、もちろんポーションでのMP回復も何度も行っていますから、もし彼にMPドレインされたとしても美味しくないでしょう。その事実に少し安心してしまうのは、樹精霊の彼が食料認定して糧にされた対象の末路を何度も見ているから、かもしれません。

 目の前の少年のアバターが急速にやせ衰え、急激に干からびて行きます。状態異常の魔力枯渇です。魔法や技をMP限界以上に使用しようとすると起こる状態異常です。自ら引き起こした際は、MPで足りない分をHPで補い魔法なり技なりを発動した後、頭痛、眩暈、悪寒、吐き気、倦怠感など風邪に似た症状が起こりMPがある程度回復するまで続く上、その間魔法も技も使えなくなります。自己防衛機能的な何かがやめさせていると考えて下さい。そこら辺はゲーム上のご都合主義ですね。しかし、他者によりこの状態に陥ると非常に危険です。十中八九死に戻り確定です。自意識的にはHPをMPに変えて発動しそこで止まりますが、他者に吸い取られる場合はその他者が止めない限り続くわけです。MPを吸い取り終えた後、さらに吸い取られるものはHPになるわけで、外傷的理由でHPが削られる場合と異なり、この場合、体がミイラ化していきます。急速に、急激に。言葉通り、筋と皮と骨のみの醜い姿になり果てるわけです。


『ゴチソウサマ』


「えっと……お粗末様でした?」


 MPが枯渇し、HPバーが砕け散ったミイラと成り果てたアバターが消えていきます。同時に、闘技場中央上空に勝利宣言が煌々と浮かび上がります。


〔win!!〕


『ユダン タイテキ』


「面目ないです」


 フィールドが光のポリゴンとなって昇華して行く中で、甘んじてお叱りを受けます。


『モドッタラ ミズアビ

トモエ キレイニ スルコト』


「喜んで」


『コレ オシオキ』


「私としては、ご褒美になりますが?」


『アレ?』


 お互いに笑いながらそのままいれば、辺りの景色が戻っていきます。

 さぁ、水浴びです。

 待ちに待ったモフモフです。

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