story7 ワスレナグサの花言葉
2人で一緒に住み始めて一週間経っただろうか。土曜日でやることがなく、家の中でぶらぶらしていた私はふとテーブルの上の花瓶に目がとまる。
「…ん?これは?」
「あー、それはワスレナグサ。花屋で見かけてつい買ってきちゃったんだ」
「ワスレナグサ…可愛いね、この色好きだなぁ」
「いいよね。なんか惹かれたんだ」
「うん…あ、また読んでるんだ?花恋」
「…ああ、面白いよな、アルバム見てるみたいだ」
そう言いながら、子龍くんはページをめくるたびに桔梗ちゃんを目で追いかけていた。その目はとても優しく、少し桔梗ちゃんが羨ましくなった。彼はまるで、漫画の中の子龍くんに恋い焦がれていたかつての私のようだった。会えない恋は苦しく辛く、胸が張り裂けそうになる。
それから…花恋を何度も繰り返し読んできた私は、どれほど子龍くんが桔梗ちゃんを好きだったかも知ってる。その想いを押さえ込もうとする姿に、私が何度泣きそうになったか…そんなこと子龍くんは知らないんだろうけど。
子龍くんに会えたらそれでいい、それだけでいいと思っていた。でも、どんどん欲張りになってしまう自分がいる。いなくならないで、また会えなくならないで、ずっと一緒にいて…そう考えていると、不安はどんどん大きくなってしまう。
「詩音?具合でも悪い?」
自分が長い間ワスレナグサの前で立ち尽くしていたことに気づいた。
「ううん、何でもない」
「そう…?じゃあ良かった」
私を見て微笑んだ眼差しは、優しく、それでも桔梗ちゃんへのそれとはまるで違うのだった。
子龍くんがいなくなるのは本当に嫌だけど、私のわがままでここに留めておくのはいけないんだ。
ワスレナグサ…。子龍くんが花好きのため、私も花言葉に興味を持ったのだけど、確かワスレナグサの花言葉は
<私を忘れないで>