story6 住む場所
「いやいやいや!それは悪いっていうか!色々とほら!」
最初に沈黙を破ったのは子龍くんのほうだった。それにしてもこんなに取り乱す子龍くんを現実で見られるとは…。よく桔梗の前では取り乱していたけど。そんな子龍くんが微笑ましかった。
「あ、じゃあ子龍くんの行く場所が決まるまでここに好きなだけ住んで、ていうのは?」
「いやでもタダで住むっていうのは…」
ここまできたら私も諦めない。
「じゃあご飯作ったり…してくれたらいいから!」
「うーん、じゃあバイトとか始めるかなぁ」
「バイトね!いいと思う!だから…」
「…」
急に子龍くんがうつむいてしまった。
「子龍…くん…?」
不安になった私は子龍くんの顔を覗き込んだ…けど、ん?
「笑ってるの子龍くん…!?」
「くっ…はは、何かすごく必死だなー…と思って…何でそこまで」
「な、何でって…」
私をバカにしてるのに、そんな笑顔にさえキュンとさせられてしまう私はもう頭がどうにかなってしまっているようだ。
「…なんか」
子龍くんが笑いをこらえながら言った。
「詩音といると懐かしい感じがするな、不思議だ…妹がいたらこんな感じなのかな、ていう」
頭をポンと優しく叩かれた。妹、か。
「…子龍くん今高2でしょ。私と同い年だからね!小さいからってバカにしないでください」
「そうだったのか、高1とかかと…ん?小学生かな?」
「もうっ…」
こんな風に話せることも私にとっては大きな幸せだ。結局この日、これからのことは曖昧になってしまったけど、それから数日経ち、子龍くんはバイトを始めた。私と子龍くんは何となく一緒に暮らしている。それから話し合った後、住むところが決まるまではこのままで、ということになった。