story3 期待
私は恐る恐るたずねた。
「もしかして子龍くんて、桔梗ちゃんとか愛日くんと知り合いだったり…」
「2人はオレの友達だけど」
やっぱり。子龍くんはきっと私が持ってる漫画から出てきてしまったんだ…!
「あのですね、多分今起こっているこれは…」
今の状況について思いつく限りを話した。といっても全て推測だし、私自身も混乱しているので子龍くんに伝わるかは不安だけど。
「ーーなるほど。オレの住む世界と詩音が住む世界は違うんだけど、今は何かの間違いで詩音の世界にオレが来てしまってるってことか」
「そういうことかと…」
「しかし何でだろうな、何が起こってオレはここに来ちゃったんだ」
「何で…だろうね」
毎日”会いたい会いたい”と思ってた私からすれば、それが原因なのかもしれないという心当たりもなくはない。でもそれを今ここで言ってしまったら告白同然だ。心の準備が全然できていない。もう同じ部屋にいるだけで胸がつまりそうなのに。
やっと会えた、会いたかった、好きです
もし子龍くんに会えたら言うはずだったセリフも全然出てこない。これは夢かもしれないのに。学校から帰ってきたらもう居なくなってるかもしれないのに。…ん?
「学校!!!」
「え!?」
音を立てて急に立ち上がったため子龍くんを驚かせてしまった。本当に申し訳ないです。
「私遅刻しちゃう!すみません、朝食子龍くんの分も作ったので!良かったら食べてください!」
「え」
「それじゃあ行ってきます!!」
「ちょっ…!?」
これからどうなるのだろう。
遅刻寸前のため走りながら私は考えた。不安もあるけど、何より嬉しくてたまらない自分がいる。抑えきれない笑みを浮かべた顔を両手で覆った。