story2 出会い
まだ肌寒さが残る季節、ずっとベッドの中にいたい…というか今日も子龍くんに夢で会えなかったなと、うだうだ考えながら目を開いた。いつもと変わらない朝の部屋の風景が目に映る、はず、だった…
「!?」
まだ朝で頭が回ってないため、衝撃的すぎる目の前のことを理解できず、私は声にならない声で叫んだ。
「こ…りゅ、うくっ…」
私の視線の先には茶髪の男子…いや…私にはこの人が子龍くんに見えるんだけど。私の部屋の床でなぜか眠っているらしかった。
なにはともあれ、どうにかしないと。
ちなみに私は家から結構離れた高校に通っているために、高校生ながらアパートを借りて一人暮らしをしている。
こういう時ってどうすればいいんだろう、とりあえず私も学校あるし朝食を作ろうか。うーん、これは2人分作らなければならない感じなのかな…
「…んん」
朝食を作り終えた時、子龍くん(らしき人)が目を覚ました。どうしようか…。
「…あー、目を覚ましましたか…?」
「…ん…」
起き上がりこっちを振り返ったのはやはり子龍くんによく似たイケメンだった。私はしばらく見惚れてしまった。
「あの」
「え、あ、はい!?」
「ここは…どこですかね?何でオレはここに?」
そんなこと私に聞かれても…。というか。
「ここは私の部屋です。朝起きたらあなたが部屋にいて私もとても不思議なんですけど…と、とりあえず名前教えてくれませんか」
「…え、ああオレの名前は須藤子龍。君は?」
「私…は、花咲詩音です」
嘘でしょ…?子龍くん?混乱した私は本棚の「花恋」の一冊に手をかけた。パラパラと数ページをめくる。
「いない…どこにも」
「何が?ん、それ…桔梗と愛日にそっくりだ」
花恋の主要人物である子龍くんは、どのページからもいなくなっていた。まさか、だけど、漫画の中から子龍くんが出てきてしまったというの…!?




