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花恋に永遠を  作者: 雪月花
24/25

story23 シオン

花咲と子龍を見送る形となった俺、鳥戸間。


「…」


小さくため息をつく。帰ろうと、回れ右をした時だった。


「っ!?」


目の前にいたのは姉の姿。なかなか家から出ようとしない姉がここにいることに驚いた。


「〆切までは家から出ないんじゃなかったの」


「描き終わったの!今ちょうど最終回を描き終わって久々に外の空気を吸ってたの!」


「へー…もう連載終わるんだ。もちょっと続くと思ってたけど」


俺と姉は何となく2人で歩き始めた。


「充分描いたよ〜。次はどんなの描こうか今から楽しみ」


「そうなのか、何だっけ今まで連載してたの…」


「お姉ちゃんの仕事くらいしっかり把握しててほしいですなぁー。花恋、ていう漫画!」


「あー。っても見たことないけど」


「王道少女漫画のジャンルだから仕方ないっちゃ仕方ないか」


俺は頷く。あいつ……子龍ってやつは漫画の中からでてきたんだよな。何ていう漫画だったのだろう。あれも少女漫画ぽい絵だったけれど。すると突然姉が声を発した。


「次はミステリー描こうと思って!」


こんなどこかふわふわしている姉にミステリーが描けるだろうか。そんな不安が、今まで考えていたことを打ち切った。


「ねーちゃんには無理だろ…」


「姉を馬鹿にするとは!見てなさい最高傑作を作り上げてみせるよ!今度は手伝ってもらっちゃおーかな」


屈託のない笑顔で姉は俺を見た。


「いや…でも俺しばらくは無理」


「傷心中だから?」


「…え、なんでそれをっ」


「ふふふー、何でかなー?」


問い詰めようとしたが、姉に話題を逸らされた。


「あ、花でも買って帰ろうか!9月だし、シオンとか買いたいなぁと思って」


突然すぎることに若干動揺してしまった。


「何でシオン…」


「花恋の最終巻でるのが9月9日、シオンの誕生花の日なの!」


「あーはいはい、分かった、買ってこうか」


適当に相槌を打ちながら、そして姉に得体の知れない何か力があるのではないかとも思いながら、俺は歩いた。ふと疑問に思ったことがあった。


「シオンの花言葉って何なの」


少し考えてから姉が答える。


「えっとねー、”遠方にある人を思う”だったはず!」


「あー、確かになー…」


「ん?」


「何でもない」



ーーー幸せになれ、花咲



もう幸せを遠方に遠ざけることがないように。

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