story21 鳥戸間くんと子龍くん
鳥戸間くんへの返事を出せないまま、2週間が経ち、夏休みが終わりそうになっていた。子龍くんは未だ帰ってこない。休みボケなのか何なのか、私は家でグダグダして過ごしていた。
ソファに寝転がっていると、インターホンの音がした。
「はいはーい…」
ガチャ、とドアを開けた瞬間。目が覚めたような感覚だった。
「鳥戸間くん…久し、ぶり」
「出た?」
「え、何が…」
「答え」
どうしよう、という焦りが募る。
「えっとまだ…その、色々、ね」
自分でも言ってることがよく分からなかった。
「今から出れるか」
「どこに?」
「近く」
私が少し考えていると、鳥戸間くんは気まずそうな顔をした。元々無表情だから表情の変化は分かりづらいけど。
「ダメだったら別にいい」
「あ、ううん!大丈夫!ちょっと待ってね」
どこへ行く気だろう、鳥戸間くん…。色々と考えながら準備を済ませた。
結局、私達が向かったのはショッピングモールだった。
「何か買うの?」
鳥戸間くんは答えてくれない。黙々と歩いている。ふと、急に鳥戸間くんが立ち止まった。
「…ここ」
「?」
「俺が花咲を好きになった場所」
ここ、は…。あ。思い出した、鳥戸間くんにぶつかった場所だ。桔梗ちゃんになりたくて頑張ってたんだなぁ私。
「でも今思うとさ」
鳥戸間くんが続ける。
「俺が好きになった花咲は子龍、てやつに恋をしてる花咲だったのかもしれないよな」
「…え?」
「もちろん好きな気持ちは変わらないけど」
そんなに好き好き言われると恥ずかしい。顔が赤くなっている気がする。
「だから…」
その瞬間、目の前が真っ暗になった。誰かに手で目を覆われたみたい。一体誰…
「詩音」
それは懐かしい声。
「子龍くん!?」
目を覆った手は離してくれない。
「鳥戸間くん、だっけ。付き合うことにしたの?」
「え、違っ…」
「顔赤くなってるけど」
う、何か今の子龍くんは意地悪だ…。どうしたんだろう。目が覆われているため子龍くんの表情も窺えない。
「鳥戸間くんのこと好きなんだ?」
「違う!私は子龍くんのことが…」
「オレのことが、何?」
「…き、」
「聞こえないなぁー」
あーもう!と色々吹っ切ることにした。
「好き!ずっと前から子龍くんのことが好きです、どれだけ会えなくても諦められなかった!」
「…うん。オレも好きだよ詩音。…じゃそーゆーことだからばいばい鳥戸間くん」
目を覆っていた手が離れ、代わりに手をひかれる。少しコケそうになったけど、受け止めてくれた。そのまま歩き出そうとする。
「あの」
ふいに、背後から鳥戸間くんの引き止める声がした。




