story20 突然の告白
ページを開いたそこには、消えてしまっていたはずの子龍くんの姿が描かれていた。再び、急に紙の上の存在になってしまった。今まで一緒に過ごしてきたのが嘘みたいだ。
「子龍くん…」
呼んでも返事はない。あの優しい笑顔も私に向けられたものではなくなってしまった。何でこんな事に…と、ある考えが頭をよぎった。
「私が新巻を買ったから…?」
新巻の中には子龍くんが存在してないといけないからかもしれない。けど詳しいことも、子龍くんがもう1度戻ってきてくれるかということも分からない。
また、片想いの始まりだ。
さっき買ってきた本屋のビニール袋から新巻を取り出す。桔梗ちゃんに会えた子龍くんを見るのは少し苦しい気がする…。結局、読みたいという気持ちに負けて読み始めてしまうんだけど。
「…何だろう、何か違和感がある?」
読み進めるうちに花恋の新巻に対する違和感のようなものが膨らんでゆく。
「子龍くん、かな…?」
桔梗ちゃんや愛日くんに向ける表情や言葉が違うような気がするからかな、気がするだけだけど。
「会いたいなぁ、もう1度だけ」
願っても想っても無駄だった、何も起こらない。それが現実なんだ。きっと今までのは夢か何かだった。
「諦めて…、私。諦めようよ…」
涙が溢れる。泣き虫になってしまった。あり得ない現実を信じるようになってしまった。花で部屋がいっぱいになってしまった。それもこれも子龍くんのせいで。
「…花咲」
驚き、びくっと肩を震わせた。声のする方を振り返る。
「誰っ?」
「ごめん、俺。鳥戸間。昨日みんなで遊んだ時忘れ物したみたいで。ドア開いてたから勝手に覗いて話しかけちゃったというか…。ごめん」
「ふふ、どしたのそんな話して。いつもは無口なのに」
そう言いながら私は一生懸命涙をぬぐった。
「いや…。今日はお兄さんいないのか」
「うん、もう会えない」
「?」
「見て、この漫画」
鳥戸間くんに花恋を渡す。
「そっくりだな、お兄さんに」
「お兄ちゃんじゃないの…嘘ついてた。私が漫画の中のその人に恋してたら、ある日漫画から出てきた彼が目の前にいたんだ」
「うん」
「…信じるの?この話」
「なんだよ、嘘なのか」
「本当だけど」
「じゃあ信じるしかないだろ」
「…ありがとう…鳥戸間くん」
「俺じゃ…」
ティッシュで鼻をかんだ音と鳥戸間くんの声が重なってよく聞き取れなかった。
「ん、ごめん聞こえなかった。何?」
「…何でもない。それより、落ち着いたか」
「なにが?」
「ほら…泣いてたから」
「ああ、うん。本当にありがとう。鳥戸間くんのおかげ」
頑張って笑顔をつくった。鳥戸間くんは少し複雑そうな表情を浮かべた。
「まだ泣いてるじゃん」
「え」
「やっぱり、さっきの何でもない、て言ったの無しにして」
「…うん?」
「もう、お兄さん…じゃないのか、その人に会えないと思うなら俺がその人の代わりになりたい」
「え?」
「俺は花咲が好きだ」
「…」
あまりに突然のことだったため鳥戸間くんを凝視していると、目をそらされてしまった。
「…帰る」
「あ、ちょ!?…帰っちゃった、忘れ物はどうするんだろ…」
何か今日は色々あって混乱してきた…。夕飯まだだけど、とりあえず寝ようかなぁ。うん、寝よう。そのあと全部考えよう。




