story1 叶わぬ想い
「はぁ…」
私は花咲 詩音、ごく普通の高校2年生。
本当に、ごく普通の。
校則に従い髪は染めておらず、背中まで伸ばした黒髪、背は150センチと低めだ。
でも最近自分は”ごく普通”ではないのかもしれないと思い始めている…というのも、私は恋をしているのだけど、その相手というのが絶対に会えない人だからだ。
私がハマっている漫画で「花恋」というのがある。高校を舞台にした王道恋愛少女漫画で、今はヒロイン桔梗を巡って、愛日と子龍とで三角関係が繰り広げられている。まぁ王道すぎる漫画だから結果は誰もが分かりきっているようなものだけど。
その誰もが予想できる結果的に、桔梗との恋を実らせられない男子ーーー須藤 子龍という名の彼に私は恋をしているのだ。
「花恋」を読み始め、彼の不器用な優しさに惹かれ、読み進めていくうちに私の気持ちは大きくなってしまった。
もう戻れない
そう思った。この作品に出会わなければこんな苦しい気持ちを知らずに済んだのに。一生叶わないどころか会うことすらできないなんて悲しすぎる。ねえ、どうかこの世界に会いに来てください。一時でいい。子龍くんが桔梗ちゃんにフられるところを見ることになるのはとても辛いんだ。…私じゃ、だめかな…
…だめ、なんだろうな
友達にはバカにされるし、本気だとも思われてない気がする。でもじゃあ私は、俗に言う、この恋心とかいうものをどこに捨てればいい?
夢の中で君に会えますように
何ならそのまま夢の中で生きていこうか
できるなら…できるなら、朝目が覚めたその時横に君がいたら、私はもう何も望みません
そうして私はいつものように自分の部屋のベッドで眠りについた。