story18 偶然の悪夢
「はぁ〜、美味しかった楽しかった!今日は色々ありがとねしおん!」
今日は琉香に振り回されっぱなしだった気もするけど、その明るく愛らしい笑顔に癒されたから許してあげよう。
「またみんなで遊ぼーぜ!次はトランプ以外で!」
「ふふ、そうだね」
「じゃああたしたちはそろそろ…」
と。ドアの開く音がした。そうだった、子龍くん!
「ただいーー…」
その瞬間その場にいた全員の動きが静止した。どのくらい固まっていただろう、最初に言葉を発したのは琉香だった。
「お兄さん…しおんのお兄さんとか、かな?」
それだ!琉香の言葉に助けられた。
「…そう!この人は私のお兄ちゃん!」
子龍くんもそれに合わせてくれる。
「こんばんは、詩音の兄です」
「こんばんは!いいなぁしおん、こんなイケメンなお兄さんがいるなんて」
あははとみんなで笑う。良かった、何とか誤魔化せたみたい。と、また悪夢のような現実が詩音と子龍を襲う。ドアの開く音がしたと思うと、聞きなれた女の人の声がした。
「うふふ詩音!やっと来れたわ、迷ったけど今日はちゃんとたどり着けたの…あら?この方たちは?」
母だ。本当にタイミングが悪い。
「…あ、お母さん、久しぶり…友達が遊びに来てたんだ」
「あら、そうなのー!こんばんは、これからも詩音と仲良くしてやってねぇ」
それに答えたのは琉香だった。その口から出たのは今一番タブーな言葉。
「はい、こちらこそ!これからはお兄さんの方とも仲良くできたらなって思います!」
母が首をかしげる。
「お兄さん…?」
まずい、と思ったが、すぐに母は微笑んだ。
「そうねぇ、よろしくおねがいね」
母は、なぜお兄さんの存在を認めたのだろうという疑問を残しながら、私は琉香たちを玄関外まで見送った。家に入り、私と母、それとどうしたら良いのか迷っている子龍くんの3人になった。急に母が子龍くんに話しかける。
「あなたってこの前道案内してくれた子よね!?」
「あ、はい…」
「あの時は本当にありがとうねぇ。…さて、詩音?この状況について説明してくれるかしら?」
「はーい…」
母の目がキラキラしているように見えるのは私だけだろうか。怒ってはいない…気がする。




