story17 カレー作り
「あ…えっと、何を作る…?」
まだ鳥戸間くんの性格が掴めないため、恐る恐る聞いた。
「確かカレーの材料を買ってたはず」
「じゃあ私とりあえず野菜切るね!」
うなずいた鳥戸間くんは、てきぱきと野菜をビニール袋から出して渡してくれた。
「…俺は玉ねぎの皮むく」
「うん、ありがとう!」
それぞれ作業を始めたけど、無言が続く。何となく耐えられなくなって声を発した。
「鳥戸間、くん、ていつも料理とかするの?」
「…時々」
「そうなんだ、何作るの?」
「色々?」
「そっか…」
だめだ、話が全然繋がらない。ほんとによく分からない人だなぁ。何か…何か話さないと、と頭をフル回転させる。
「鳥戸間くん!…は、何か好きなものとかあるの…痛っ」
焦りすぎたのか包丁を勢いよくおろしてしまい、少し指を切ってしまった。あー、血が出ちゃってるよ…。
「見せて」
鳥戸間くんが素早く私の手を取り、指に絆創膏を貼ってくれた。
「あ、ありがとう…ん?今どこから絆創膏出したの?」
「ポケット。いつも持ち歩いてる」
なかなかポケットに絆創膏を入れて持ち歩く人は見ないなぁ。
「…そうなんだ…」
今まで目を合わせてくれなかった鳥戸間くんが、ちらっとこっちを見た。
「…痛い?」
「え?」
「指痛むなら俺がカレー作るから休んでればいい」
「…」
「何」
「…何か、鳥戸間くんって思ったよりいい人かもと思って。ありがとう、大丈夫!一緒に作ろう」
鳥戸間くんはまた目をそらし、黙って頷くだけだった。そのあとも、特に会話はなかったしよく分かんない人という印象も変わってはいないけれど、優しい人なのかもしれない。
「ただいまー!カレーできた!?あたしお腹すいちゃった!」
ガチャ、というドアの音と共に琉香の元気な声が響く。
「出来たよー、食べよう!」
「おー、うまそー!」
…この時私は綺麗に忘れていたんだ。子龍くんを隠そう作戦パート2について何も考えていないことに。




