story15 子龍くんを隠そう作戦開始
子龍くんがバイトから帰って来るのを待ってから夕飯を食べ、相談を始めた。
「実は…土曜日、友達がうちに遊びに来たいって言ってて」
そこで子龍くんは察したようだった。
「オレはどうすればいいか、ていう話?」
「そう」
「確かに高校生の男女が2人で住んでる、ていうのがバレたら色々詩音が大変になりそうだもんな」
少し考えるそぶりを見せて、子龍くんが言った。
「じゃあその日はオレ、友達が帰るまで出かけるよ。あでも、こっちの世界に携帯を持ってこれてないから時間を事前に教えてくれたら嬉しいかな」
「ごめんね、ありがとう…6時には帰ってもらうようにするね」
「うん、オレの事は気にしないで楽しんで」
子龍くんが優しい人で良かった。よし、あとは掃除だけだ。ささっとやっちゃおう。土曜日か…
「土曜日!?て明日!?」
「え、今気付いたのか」
普段綺麗にしてないとこういう時に困るんだなぁと痛感しながら、助けを請うように子龍くんの方を見た。
「はは、オレも掃除手伝うから頑張ろう」
その笑顔を見るだけで何でもできるような気がする。掃除なんてすぐ終わりそうだ。
ーーーそして、土曜日。
「おじゃましまーす!」
予定通り子龍くんには出かけてもらい、琉香、赤石阿くん、鳥戸間くんを迎え入れた。ふと、私の目線が琉香の手荷物にとまる。
「ん?それは?」
「ああ、これ?あたし、一人暮らしの家でご飯作りとかすごい憧れてたんだよねぇ!だから今日の詩音の夕飯は任せて!」
えええ!?冗談じゃない。6時には子龍くんが帰ってきてしまうのに。焦りと不安を懸命に隠しながら微笑んだ。
「えー、嬉しいありがとう!」
幸いにもまだ2時。6時まではまだ時間がある。子龍くんを隠そう作戦パート2を早急に考えねば。




