story13 新学期
それから春休みが来て、あっという間に終わって新学期に。
「今日から高校3年生か…」
新しいクラス、新しい友達、新しい先生、とごちゃごちゃしていたのが落ち着いた頃、高3初めての二者面談が始まった。
「どう考えてる?」
担任に言われてどきっとした。高校最後の担任は男の先生で、優しそうな雰囲気だけど二者面談になると少しこわくなる気がする。
「どう、って…」
「進路だよ進路。もう高3だからそろそろしっかり決めんとなぁ」
「あー、あの、学力的に丁度いい大学に行ければ良いかなと思ってて…」
「具体的にどことかないの?」
「それは特には…」
「将来の夢とかは?」
「それも特には…」
「うーん、じゃあ今日は仕方ないからちょっと色々考えてきなさいね」
「はいー…」
学校からの帰り道、1人で歩きながら考えてみる。特にやりたいこともないしなぁ。受験勉強だってさらっとやって受かる大学に行きたいと思っていたくらい。
「詩音ー!!」
遠くから、今となっては聞き慣れた声。
「子龍くん!?どうしたの」
走り寄りながら聞く、と。いつものような優しい笑顔で子龍くんが言った。
「暇だったから迎え来ちゃった」
「嬉しい、ありがとう」
私は横に並んで、2人でアパートへの道のりを歩く。
「子龍くんは将来の夢とかある?」
「オレは………とか…」
「何?」
急に子龍くんは目をそらしたけど、顔が赤くなってるのが私から見えた。ちょっと可愛い。
「何でもない!」
「え、なんなのー?気になるよ」
「…笑わない?」
「うん、笑わない」
「オレ花好きだから花に関わる仕事がしたいかなー、て…」
「へぇ…あってると思う!」
子龍くんが驚いたような顔をして、それから微笑んだ。
「ほんとに笑わないんだな」
「何で、何を笑うの?」
「男のくせに花かよー女々しいな、とかさ」
「そんな、花が好きとか素敵だと思うし」
「そーゆーとこ詩音の良いとこだよな」
「ふふ、それは嬉しい」
何となく私たちは目を合わせて笑う。
「…私も考えないとなぁ…」
そう呟いたけど、これから先やりたいことが思いつく気は全然しなかった。やっぱりとりあえず進学することになるかもしれない、でもそれはそれで嫌だなと思う…。




