第一話 遭遇
ある少年がいた。彼は壮大で、巨大であり、誰も近づかない山にいた。
彼はこの未調査だと言われる雪山に好奇心で入っただけだった。珍しい風景に感嘆を受け、物珍しさに先を進めば吹雪が起きた。帰り道もわからず、行く先も確認することができない。そんな事実に軽く絶望を起こしながらも生きていくという本能に従い歩みを進めていく。
それから少したち、体は限界を迎えていた。吹雪による寒さで体温を奪われ、膝ほどある雪に体力を奪われていく。もうすでに目の前は霞んでいくのがわかっていた。
飛びそうになる意識を根性で抑え、歩みをすすめる。少し進んでいくと健気に頑張った少年を祝福するかのように洞窟が見えた。その事実に少年が顔を喜色に染めるとなけなしの体力を振り絞り、洞窟のほうへ歩みを進めていく
洞窟に着き、吹雪を逃れ、意識が朦朧とする中洞窟のさらに奥まで歩みをすすめる。理由は好奇心と探究心。村で農作業をするだけの彼でも先が気になって仕方がなかった。
その先には隙間があった。頑張れば入れるような隙間があり、奥には何も見えない。でも少年はその隙間に歩みを進める。この先で何かがある、何かが待っていてくれているかのように、何かに引っ張られていくように彼は進んでいく。
服は擦り切れ、体はボロボロ、そんな彼が隙間を進みきり、目の前に視線を向けると神殿のようなものが存在していた。少し古びた神殿のようなものに惹かれるように入ると中には菱形の立方体の黒い石?なのか結晶?なのかわからないものが浮いている。
大きさは手のひらサイズのそれを少年はまるで大切なものを見つけたかのように手に取る。そしてそれを手にとった瞬間その黒い結晶は品定めをするかのように振動し、溶け始め、
彼の手を侵食していった。
「うぐァァァァァ!?」
手が消え去るかと幻覚してしまうほどの激痛が彼の左手を襲う。見れば溶けたと思われた結晶が腕の中を侵食していく。
みるみると手から腕、腕から肩、肩から体へとドンドン黒く染めていく。それと同時に黒く侵食された腕の上を血管が張り詰めているかのように赤い線が走っていた。気づけばもう体全体が痛みを発し、下にある水たまりを見れば影のように体が真っ黒でその上に赤い線が走っており目が赤く光る異形がこっちを睨んでくる。それが自分だと理解できず今来る痛みに耐える。
耐えれずに目をつぶっていると痛みが消える。そして下を向けば自分の顔がちゃんと写っていた。
それを確認して少年は意識を飛ばす。そのまま力なく地面に倒れていく。
意識を完全に落とすときにふと声が聞こえたような気がした。
【選ばれし者よ。私を扱うにはあなたはまだ未熟です。私が扱える、その時が来るまで楽しみにしていますよ】
その声を最後に、彼は意識を闇に放った。