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東方天雪記  作者: トマトしるこ
1章 古代編
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8話、月移住計画2

書き溜めた話一気にあげます。

「なんだなんだ!? 鉄の筒が飛んでるぞ!!」「本当だ!」


 しゃとる、とかいう筒が空に向かって飛び始めた。確かに雪乃君の言うとおり。そしてあの中には都市の全部の人間が乗っているんでしょう。


「あーーっ! あのでっかい筒に人間がたくさん乗ってるよーー!」

「なんだとぉ! あいつら逃げるつもりかぁ!」

「とっちめてやらぁ!!」


 あちゃー、やっぱりこうなっちゃいましたかー。気配を探るのが得意な子が何体かいたからここまでは予想がついてましたけどね。問題はここからですよ、大人しく私の言う事聞いてくれますかねー?


「みんな静かにして! いまから追いかけても無駄! それに、全部の人間があれに乗ってるんだから行ったところで誰もいないわ!」

「でも奈菜花様、まだ人間いっぱいいますよぉ?」

「へ? うそお!?」


 都市を見ると………ほんとに居たー! しかもたくさん! 雪乃君話が違いますよぉー!

 せっかくカッコよく決まったのにぃ~。


「さ、皐月ちゃん! ちょっと様子見てきてください!」

「分かったわ」


 皐月ちゃんは人から狼の姿に戻って駆けだした。

 そうそう、私達1年前にやっと人化できるようになったのよー! これで雪乃君との明るい家族計画も………って違う! そうじゃなくて!


「風音ちゃん、雪乃君は確かに全部の人間が月に行くって言ってたよね?」

「言ってたよ。なんなら再生しようかー?」

「いいです。みんなには秘密にするって雪乃君と約束しましたから」


 『完全に記憶する程度の能力』をもつ風音ちゃんが言うならそうなんでしょう。

ということは雪乃君が間違っていたか、あるいは間違った情報を教えられたか、ってところでしょう。


「皐月ちゃんが戻ってくるまで待っててください!」


 みんなには悪いですけど、何かやらかしちゃって雪乃君に嫌われ―――みんなが怪我してしまうと私の言う事も聞いてくれなくなるので、今のうちに強く言っておかないと。


 ………なんだか不安になってきました。風音ちゃんも私にしがみついてますし。

 雪乃君、大丈夫ですよね?
















 第3応接室を出た後真っ先に向かったのは放送局だった。

 そこで打ち上げられたシャトルの説明と30分後の都市の自爆について説明し、住民に機械を使わず少しでも遠くへ避難するように放送してほしいという旨を伝えて、次の場所に向かった。


 次の場所は森。今頃「話が違いますーー!!」とか言ってあたふたしている奈菜花に事情を説明するためだ。

 “風”魔法を応用して飛ぶ。都市には結界が張ってあるから都市の外に“空間”魔法で移動することができない。無理にやろうとすると結界を壊してしまう。


 結界を越えた。スキマを開いて森へ移動しようとした時、草原に黒い点が見えた。


「皐月?」


 高度を落として近づいて見ると確かに皐月だった。

 森から走って来たというのに息がまったく乱れてない。流石。


「雪乃、今どうなってるの? 全部の人間があれに乗ってるんじゃなかったの?」

「市長に騙されてたんだ。シャトルに乗ってるのは一部の人間だけで、8割近くは都市に残ってる。しかも住民にはまったく知らされてなかった。慌てて避難させてるとこだよ」

「この後どうするの?」

「爆発は30――いや、あと24分後に起こる。爆風は森まで来るよ。あの森にしか住めない妖怪や妖精たちもたくさんいるから、逃げるより守る方がいいと僕は思う。でも決めるのは森に住む皐月たちだ。僕はそれに従う」

「奈菜花に伝えるわ」

「スキマで送るよ。もう一度そっちに行くから答えはその時聞かせて」


 スキマを開いて皐月を中に入れ、閉じる。皐月なら今頃向こう側についてるはず。


 僕は僕にできることをしよう。

 都市に戻ると、驚いたことに住民は外に避難していなかった。

 近くに居た男性に話を聞いてみた。


「どうして外にでないんですか!?」

「出れないんだよ! 壁にぶつかったみたいに!」

「ええ!?」


 試しに僕が手を門の外に出してみる。何かに触れる感覚はあるけど、抵抗は感じない。それを見た男性が手を出すと、止まった。思いっきり力を入れてるみたいだけど、手は張り付いたように動かなかった。


「見ただろ。避難したくてもできないんだ」

「………」


 もしかして、結界が張られているのかな? 妖怪の侵攻に備えて――ってそれは嘘の情報だ。防衛隊も出てないし、マシンもいない。だったら対妖怪の結界は必要ないはず。なのに何らかの結界が張られている。

 ………まさか、住民を閉じ込める結界? あの市長ならやりそうだなぁ。


「《術式……把握》。やっぱり閉じ込める結界だった。だったらこれで!」


 結界といっても、都市の結界は魔法ではなく電力で動かしている。結界そのものを壊してもすぐに修復する可能性が高いから、送電を止める方が効率的だ。

 かといって都市を覆う壁を壊して瓦礫を作って避難の邪魔をしてしまうのは良くない。

 そこで、だ。


「送電装置をオーバーヒートさせる!」


 これが安全策だと思う。

 ここの結界製作には僕も関わってるので造りはよく知ってる。壁の中に一定間隔で結界発生装置と送電装置が交互に置かれている。つまり、どこから電気を流しこんでも送電装置に届くため、場所は気にしなくてもいい。


《術式構築………完了/魔方陣展開》


 壁にあてた手から魔方陣が現れる。


《紫電、起動》


 眩い程の閃光が左手から壁へ直接放たれる。壁は徐々に熱を帯び始め、耐えきれずに溶け始めた。さらに魔力を送り込んで出力を上げた瞬間、一斉に爆発音が響き、結界が解けた。


「もう大丈夫です、行ってください!」


 称賛の声を聞きながら、スキマに入り森へ向かった。






 爆発まで、あと15分。







まだまだいきまーす。

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