5話、未来人(笑)
短いよ。
A4二枚だよ。
「未来から……ねぇ」
「やっぱり信じられないよね……僕も信じられないよ」
目の前の人間がいきなり「未来人です☆」なんて言って信じる人はまずいない。
「一応言っておくけど、あなたの話を信じていないわけではないわよ。むしろ信じているわ」
「えぇ!?」
いた。
「あんなの見せられたら信じるしかないでしょう」
「あんなのなんて言われても僕さっぱりなんだけど」
「空間がねじ曲がって、砕けたらあなたがいたのよ」
「何それ?」
「私のセリフよ」
空間がねじ曲がって、砕けたら僕がいた。
あの魔法が暴走して、家の庭から永琳の前に転位したってことかな。確かに科学じゃ時空を歪ませるのは難しいかもしれない。いや、此処の技術ならいけるかも。でも永琳が驚いたってことは実現できてないってことだよね。
「もういいかしら? 私もあなたに訊きたいことがあるんだけど」
「あ、うん。分かることだったらなんでも答えるよ」
「それじゃ、さっきの魔法とやらについて教えてくれないかしら」
「OK。魔法は科学で生まれたものみたいに誰もが使えるわけじゃないんだ。努力すればある程度は身につくけれど、それでも低級魔法を使うのが精一杯だろうね。そういう人たちには失礼かもしれないけど、とても魔法使いとは呼べない」
「そうなの?」
「そう。魔法は血やもともとの素質、持っている魔力量なんかが関係してくるんだ。そこから自分に相性のいい魔法を選んで、ひたすらに研究する。どんな些細なことでも糧にする。それが魔法使い。知に貪欲であれって言葉もあるくらいだよ」
本当はもっと条件が厳しいんだけどね。相性のいい魔法が自分の魔力量と釣り合わないことだってあるし。
「魔法に関してはこんなもんだよ。他には何かある?」
「いいえ」
「………」
「………」
気まずい……。何この沈黙。
確かに聞きたいことは聞けたから話す必要無いかもしれないけどさ、さすがに黙りこむのは無いんじゃないかなー。どうしよ。
「ところで雪乃」
「何?」
なんと永琳から話しかけてくれた。
「貴方、これからどうするの?」
「これからって?」
「ここは貴方から見て過去。知人なんていないし、住む場所も無いのよ」
「………あ」
そうだった。家もお金も着替えも魔導書も無い……。
戻ろうにも偶然発動したもんだから術式はさっぱり。
………詰んだ?
「貴方さえよければ私の家の部屋を使ってくれても構わないわ。その代わり、研究の手伝いをして「本当!? ありがとう永琳!」―――ッ!?」
「いやあー、助かるなあ。出来ることならなんでも手伝うから――って、どうしたの? 顔赤いよ?」
「………手」
「手? ………うわあっ、ゴメン!!」
あまりの嬉しさに思わず永琳の手を握ってしまっていた! 慌てて離すけどもう遅い。
再び沈黙。さっきの数倍気まずいよ……。それにしても綺麗な手だったなー――って違う!
「……ついてきて」
「……うん」
頷くしかないよね。
なんだか説明回みたいだよ。
繋ぎだから短いよ。