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東方天雪記  作者: トマトしるこ
1章 古代編
4/35

4話、知らない天井だ……

古代編スタート。

まあ数話で終わると思うけど。

 私はいつものように薬草を採取していた。手元にある自分で綴った植物図鑑を見ながら、今の実験に必要な植物を必要な分だけ摘んでいく。以前多めに採取し過ぎて数種類の植物を絶滅させかけてしまった事があるので、それ以来気をつけている。


「八意様、そろそろお時間です」

「ええ、戻りましょう」


 護衛の人と一緒に“都市”へ帰ろうとすると、目の前の空間が歪み始めた。


「危険です! お下がりください!」


 護衛の人が私の前に立ち、電磁銃を構える。

 私はいつでも撃てるように弓と矢を構える。


 歪みはさらに大きくなっていく。始めは空間が渦のように景色ごとねじ曲がっていったが、今度は渦の中心から(ヒビ)が走った。ビキビキと音を立てながら蜘蛛の巣状に広がった罅は、渦の端で止まり、ガラスが割れるような音と共に砕けていった。


 破片のようなものはどこにもなく、景色も特に変わった様子は無い。たが、先程までは無かったモノがそこに横たわっていた。

 黒い髪に、空色のローブを着た少年がそこにいた。


 正体を確認するために近づく。ただし、警戒は怠らない。弓弦を引き絞り、狙いをつけたまま、少年に近づく。


「危険です! 離れてください!」

「静かに。この人が起きてしまうわ」


 近づくにつれて、少年の顔が見えてくる。一言で表すなら“中性的”だった。特に肩まで伸ばしている髪がそう思わせた。女性より手入れされているんじゃない?

 さらによく見ると、ところどころ怪我をしているようだ。ローブで覆われていない顔や手などに切り傷が出来ていた。医者紛いの事をやっている癖でつい診てしまう。

 目を霊力で強化して、少年を診る。


「!? この人を直ぐに研究室へ連れて行って!」

「ど、どうかなさいましたか?」

「死にかけてるのよ! 急いで!」
















 頭がボーッとする。さっきまで何してたっけとか、ここどこだろうとか、そう言えば晩御飯食べてないなぁとか、いろいろ考いる。

 さっきまで何してたっけぇー? ここどこだっけぇー? 晩御飯食べたかなぁー?

 ……あれ、なんかループしてない?


 その事に気がついた瞬間、意識は急速に覚醒していった。







「知らない天井だ…」


 まさか自分がこの台詞を言うときが来るなんて……。でも本当に何処なんだろ?

 たしか僕は進藤に覚えたばかりの“時”魔法を使ったけど、暴走して別の魔法になって、それが発動したところで気を失った、と思う。


 身体を起こしてベッドから降りる。

 見えるところだけでもダイニングセットに、テレビ、冷蔵庫、ソファ、洗面台がある。他にもトイレやシャワーもあった。まるでホテルみたいだ。


 コンコンコン。

 ドアがノックされた。近づいて、ドアを開けるとそこには僕と同い年くらいの女の子がいた。可愛い、よりも、美人、という感じがする。


「驚いたわ。もう動けるなんて」

「……えっと、君は?」

「あら、そういえば自己紹介がまだだったわね。私は八意《ヤゴコロ》××。呼びにくいなら永琳《エイリン》でいいわ」

「(呼びにくいとかじゃなくて、聞き取れなかったんだけど……)僕は光村雪乃。えっと……永琳、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「勿論よ、私も貴方に訊きたいことがあるわ。ぞの前に場所を変えても?」

「永琳がそうしたければ」

「ありがとう。こっちよ」


 永琳は部屋を出て歩きだした。おとなしくついていく。

 途中で誰かとすれ違う時、永琳は挨拶されていた。もしかして偉い人間なんだろうか?


 きょろきょろ周りを見て気付いたけど、この施設の科学力はハンパじゃない。お掃除ロボットが平気でうろついてるし、巡回の兵士の装備が今とは比べ物にならない。ビーム兵器が小型化されてるんだから驚きだった。


 さっきの部屋から10分ほどで永琳は止まった。目の前のドアには立派な字で「執務室」と書かれている。

 部屋に入る。

 中は図書館のように本で埋め尽くされていた。壁に備え付けられた棚にはギッシリと本が詰まっている。壁=本棚みたいな感じ。


「うわあー。これ全部永琳の?」

「ええ。お茶を入れるからソファに座ってて頂戴」


 言われたとおりに座る。それにしてもすごいなあー。

 読みたくなる気持ちを我慢する。今は状況の把握を優先するべきだ。

 ああ、でも読みたい……いやいや、我慢我慢。


「うあーー。どうしたらいいんだー」

「――あなた本当に大丈夫なの? さっきから独り言ばかり言ってるけど」


 どうしようかと悩んでいると、永琳の顔がいきなり目の前に現れた。近いよ!


「な。なんでもないよ? ちょっと考えごとしてただけだよ?」

「そ、そう。(なんで疑問形なのかしら……)」


 永琳は僕の向かい側に座って、お茶を一口飲んだ後真面目な顔でこちらを見てこう言った。


「話の前にちょっといいかしら。貴方の体について」

「うん? 何かあったの?」

「私が発見した時、霊力……みたいなものが尽きかけて死ぬ寸前だったわ。今は問題ないみたいだけど、気をつけなさい」

「は、はい……」


 要するに霊力みたいなもの(たぶん魔力)を使いすぎるなってことでいいのかな。かなり持っていかれた感じはしたけど死にかけるなんて……しばらく“時”は控えておこうかな。


「さて、聞きたいことは何かしら?」

「えっと、ここはどこ?」

「ここは“都市”の第1研究所よ」

「“都市”? 名前は?」

「無いわ。あえて言うなら“都市”が名前よ」


 日本に“都市”なんて名前の地域あったっけ?

 ………。


「地図ある? 一番大きいやつ」

「ちょっと待って」


 壁の本棚から本を取り出し、テーブルの上に広げた。


「これが一番大きい地図よ」

「……え?」


 そこに写っていたのは“都市”とその周辺のみだった。これだけ高度な文明を築いているから、かなり細かい世界地図を予想していただけに驚いた。窓から見える山すらこの地図には写っていない。


「どういうこと? ………ねえ永琳、大阪、京都、東京とか聞いたことある?」

「いいえ、無いわ」


 世界史的にも重要な主要の都市を知らないってことは、ここは現代じゃないってことかもしれない。これだけ文明が進んでいるから未来かなーとか考えてたけど、さっきと同じ理由でそれも違うみたいだ。知らないのはさすがにおかしい。

 情報が少なすぎる。もっと聞いてみよう。


「ほかの都市はどうなの?」

「都市は此処だけよ。ここ以外はいまだに木の棒に石をくっつけた槍で狩りをしてるわ」

「え? ホントの事?」

「ええ」


 都市以外はいまだに狩りをしている。石と木の棒使ってるってことは鉄も青銅も無いってことだよね。

それっていつ頃の話だっけ?

縄文時代……あるいはそれ以前だったかも。

………。

もしかして………ここは未来じゃなくて、“過去”じゃないだろうか? 石に木の棒なんて現代じゃ考えられないし。都市の技術力は謎だけど。


「うん、大体分かった」

「何が?」

「僕未来からタイムスリップしたみたい」


ぱっとしない

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