31話、個人レッスン
ちょーみじかい。
原作における白蓮の魔法属性と整合性をとるためのおはなし
1週間後。
「授業をはじめるぞー。テキストの48ページを開いて、先週配ったレジュメをだしてー」
「てきすと? れじゅめ?」
「いや、真面目に返されると困る。やってみたかっただけなんだよ、僕のいたところの先生はこんな感じだからさ」
家庭教師はやってたことあるけど、こういうの慣れてるけど、なんか新鮮だな。(見た目)同年代の人に勉強教えたこととかなかったんだよね。早苗ちゃんは勉強できてたし……あれ、他に友達が思い浮かばないな? 忘れてるとかじゃなくて……そう、いない。
「雪乃さん?」
「僕ってホント人付き合いへたくそだよね……」
「よく分かりませんけど頑張ってください!」
「ああ、うん、ありがと」
いいさ、今が楽しかったら……。
閑話休題。
「まずは魔法について教えておこうか」
天雪荘の近くにあるおなじみの湖のほとりで、白蓮と向かい合って話す。内容はおわかりの通り、魔法だ。卵を孵して巣立たせるのは僕らの義務だからね。
今まで色々な人達に言ってきた内容をそのまま話す。誰もが持っているわけではないこと、扱いが難しいこと、非常に強力であること。そしてここからが魔法使いに話しておかなければならない事だ。
「――で、その魔法にも得手不得手があるんだ。というか殆どの人は1種類しか扱えない」
「と言いますと?」
「そのままさ。“火”だけ“水”だけ“風”だけとか。不便だけど悪いことばかりじゃない。他のものに目移りしない分、非常に研究しやすいんだよ。それしかやることがないんだからしょうがないよね」
「他の属性の魔法を研究したくてもできないんですね」
「そういうこと」
スキマを開いて、一枚の札を取り出す。幽香に教えた時にも使ったものだ。
「それは?」
「魔力を上手に扱えるようになる為に必要な道具さ。反対側つまんで」
言われた通りに僕が持っていない方を人差し指と親指でつまむ。すると白蓮の身体はびくっ、とはねた。
「離しちゃダメだよ」
まだ1分を経っていないというのに白蓮は汗まみれになった。
何が起きているのか?
今、白蓮の身体の中を魔力が駆け巡っている。普段は感じることのない違和感、気を抜けば暴れ出しそうになるナニカが髪の毛の先から、足の爪の先までね。僕は内側と外側から万力のようなプレッシャーがかかっている感じだったのを今でも覚えている。
普段魔力はなりを潜めている。魔法使いはそうでもないが、魔力が発現したばかりのひよっこや、習いたての見習いは自分で魔力を引き出せない。
だから、コントロールの一歩前の段階を踏む必要がある。まずは魔力を引き出せるようになること。それを助けてくれるのがこの札というわけ。強制的に引きだすこの札は、新人教育には欠かせない。
「どう? 何を感じる?」
「すごく……くるしい、です。おしつぶされそうで…あふれそうで……」
「それを覚えて。それが魔力だ。白蓮の中にある、君だけの魔力」
「わたし、だけ……の」
「暴れん坊だろう? でも、そいつを飼いならさないと始まらない。だから頑張ってその感覚を覚えて、自分で引き出せるようになるのが目的さ」
「………」
無言で頷く。
10分か………そろそろ限界かもね。元々この段階は白蓮に必要ないからこれくらいで良いかな?
「自分の好きな時に離して良いよ」
「っ……!」
僕が言い終わる前に離してしまった。相当キツかったみたいだね。分かるよ、その気持ち。でも吐かないでね。絵的に。
「はぁっ………はぁっ……ううっく……」
「お茶、飲む?」
「……貰います」
用意してきたお茶を手渡す。あっついのに一気飲みしちゃったよ……よっぽど辛かったのかね。なんというか、あれだね、うん。
「ふぅ……」
扇情的すぎる。
バァン!
「あぶね!」
「?」
音がしたのでほぼ反射でしゃがんだ。どうやら正解だったらしく、何かが僕の頭の上を音速で通り過ぎて行った。飛んできた方向を見ると奈菜花がにっこりとほほ笑んでいた。
右手には僕のガバメント。あれどうやって持ち出したんだろ? 整備中だったのに……。というか本気で頭狙ってたよ……苦笑いしか出てこない。
「は、はは……」
「だいじょうぶ、ですか……?」
「ああ、うん」
傷つくなぁ……。何に傷ついてるか分からないけど。
「さて、休憩はこれくらいにして次の段階へ進みましょうか」
「え? でもまだ……」
「白蓮は既に魔力の扱いを知っているよ。火の鳥の時をよーく思い出して。霊力で身体強化していた命蓮をどうやって振り切ったの?」
「……まさか」
「そういうこと」
白蓮が魔力を発現したのは僕の神級魔法が原因じゃなくて、スキマだったらしい。火の鳥が作った火柱に呑まれた時、白蓮は命蓮の制止を振り切って僕の所へ走って来た(普通に嬉しい)。ただ、命蓮は限界まで身体を強化したにも関わらず追いつけなかった、そう僕に教えてくれた。
物事の順序から考えて、スキマに影響されたと考えるのが妥当だろう。栓が開いて、初めてにもかかわらず完璧に魔法を使いこなした。これには僕も驚いた。このことから白蓮の魔法は身体強化型だと推測している。
「君も僕に負けず劣らず才能を持ってたってことさ。じゃ、今度はこれをもってみ」
今度は半透明のボールを渡す。
「…………」
「大丈夫だって~。持っても何にもないよ♪」
「嘘だったらはたきますね」
「早速魔力が扱えているようで何よりです……」
右手に魔力を溜めないでくださいお願いしますすいませんでしたぁぁ!
まぁ、何かあっても受け取ってもらうんだけどね。
「で、どうするんですか?」
「思いっきり魔力を注ぎ込んで、上に投げる」
「上?」
「何が起きてもいいようにっていう保険だよ。僕が適当に投げた時、この森一帯ぐらい広い場所が凍ったからね」
「うわ……」
僕の黒歴史は置いといて、魔力を注いでもらいます。
ボールは次第に光りを放ち始めた。その色は白。これは……思っていた通り、“強化”かな? その割には色が強すぎるような……。投げれば分かるか。
「投げて」
「えいっ!」
可愛らしい声を出して投げる白蓮。ただし、声とは違ってパワフルなスローだったようで、ボールはあっという間に見えなくなった。そろそろ爆発するね。
3,2,1……
ピカッと光ったと思ったら、世界は一瞬だけ色を失った。
……………。
「白蓮」
「な、何ですか? めが、痛いです……」
「僕もだよ」
僕が渡したボールの役割は2つある。
1つは魔力を込める段階で、属性を見極めさせる。赤なら“火”、青なら“水”、結構分かりやすいと思う。漫画とかゲームをしてたら簡単にイメージできるね。
で、2つ目はというと、その人が持つ魔力の最大量と別の属性があるかどうか。白蓮の場合は……
「君は素晴らしいものを持っているようですな」
「いきなりおじいさんみたいになっちゃいましたね」
「ウチの空気に慣れているようで何よりだ。冗談はここまでにして、と。君は本当に良いものを持っているよ。後先見てもここまで魔力を持っている人間はいないだろうね。加えて“2属性”ときた。僕の弟子を名乗るにふさわしい才能だ」
「えっと……とりあえず、すごいって事で良いですか?」
「そう、すごいんだよ。特に2属性持ちって事が凄い。言ったでしょ、普通は1つしか扱えないって」
「うーん……」
「僕しか知らないからよくわからないかな? ま、それも才能ってことで。とりあえず、白蓮の属性は“強化”と“光”だ。“強化”はともかく“光”は得意だから任して」
というわけで、修行の日々がはじまりましたとさ。




