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東方天雪記  作者: トマトしるこ
序章
3/35

3話、侵入者……からの?

 僕がとった行動は“正面から堂々と”だった。

 相手の情報がカケラも無いのに相手の隙を突くような作戦は、自分の首を絞める行為と同義だ。

 そう思った僕は敵と真正面から接触することにした。

 相手の服装や持ち物、雰囲気や魔力、霊力、妖力の量や質などが分かるだけで戦い方は随分変わる。

 2階の窓から外へ飛び降り、庭へ向かって歩き出す。そこで見た侵入者は――。


「久しぶりだなァ」

「進藤さん?」


 侵入者は知り合いの人だった。


 進藤さんは“協会”に所属している人だ。槍術と“火”魔法を得意としており、28歳と若い方だが、実力と実績はベテランの人と肩を並べる。見ていた限りでは僕よりも弱いけど。

 僕はこの人が嫌いだ。顔を合わせる旅に嫌味を言ってくるし、嫌がらせばかりしてくるんだ。僕の事を「子供だ」ってよく言うけど、どっちが子供か分かってないらしい。


「なにか用があるなら、電話でもしてくれればいいじゃないですか。なんで結界破ったりしたんです?」

「ああ? こっちは急いでんだがよ……まあいい、何にも知らねえまま逝っちまうのはちと可哀想だからな。特別に教えてやる」


 懐から煙草を一本取り出し、火をつけて吸い始めた。


「そんなに堅くなんなよ。簡単な話だ。“協会”から光村雪乃の抹殺命令が出てんだよ。お前を殺したら10年間分の研究費がでるって話だからな。なんでよ、他の奴に殺られる前に―――」


 彼は一瞬で間合いを詰めて、僕の喉を狙って突いてきた。

 完全に聞く体勢になっていた僕は反応が遅れてしまった。すぐに防御障壁を展開。何とか間に合った。が、衝撃までを防ぐことはできず、背後にあった窓ガラスを割ってリビングまで吹き飛ばされた。


「―――俺が殺りに来たんだよ」
















 全身が痛いが頭をフルで回転させる。どうやら僕は“協会”から賞金首にされているらしい。しかも10年分の研究費って……。


 なんでそんなことになってるのかさっぱりだけど、殺されるわけにはいかない。()らなきゃ()られる。


 家具の残骸を押しのけて庭に出る。ガラスの破片で所々切って出血しているが気にしない。進藤さん――いや、進藤は煙草を吸い終わっており、吸い殻を携帯灰皿に入れていた。変なところで真面目なのがムカつく。


「僕、もう眠たいからとっとと終わらせるよ」

「口だけは達者だなぁクソガキ。俺も眠てぇからとっとと死んでくれや」


 進藤がさっきと同じように槍を構えて突進してくる。違うのは炎を纏っている所か。

 スキマを開いて武器を取り出し、槍を上にはじく。


「なにっ!」


 ガラ空きになった胸にソレを押し当て、引き金を引く。


「消し飛べ!!」

「ぐおっ!!」


 爆発音と同時にソレが火を吹き、進藤を庭の端まで吹き飛ばした。80mほど飛んだあと3回ほどバウンドしてようやく止まった。

 よろよろと、生まれたての小鹿のように進藤が胸を押さえながら立ちあがる。並の妖怪なら今ので上半身が僕の言葉通り吹き飛ぶんだけど……“火”魔法を付加した炸裂弾は相性が悪かったかな?


「畜生……てめえなんだよそりゃあ!?」

「僕の武器はナイフだけじゃないってことだよ」


 僕が両手に握っているのは「コルト・ガバメント」。銃の事には詳しくないから適当に選んだんだけど、今ではこれで良かったと思う。この銃、妙に手に馴染む。


「ぶっ殺してやる……!」

「口では何とも言えるよね。さて、遮音も人払いも何もしてないからすぐに人が来る、そろそろ決めないと」


 上手い具合に挑発に乗ってくれているみたいだ。冷静になられる前に何としてでも倒す!


 炸裂弾じゃ効かない。氷結弾……いや、音も立てず証拠も残さずにしないと、もう時間が無いしね。できないわけじゃないけど、今から結界を張って詠唱して魔法発動なんていう余裕は無い。

 ……時間? そうだ、数時間前にできたばかりの“時”魔法ならいけるかも。上手くいくかは分からないけど、他の手段を思いつかないんだからしょうがない。


《術式構築…完了/魔方陣展開》


 僕の正面に大きな魔方陣が展開される。


「!? やらせるかァ!」


 すこし遅れて進藤が魔法を発動させる。が、数秒僕の方が早い!


《時空列弾、起動》


 僕の魔方陣からは無色透明の無数の弾丸が、進藤の魔方陣からは龍の息吹のような炎が放たれた。高度な魔法が僕と進藤の間でぶつかった。


 その瞬間、“時”魔法の術式が崩れ、狂い始めた。


「嘘ぉ!?」


 まったく予想していなかった事態にさすがの僕も驚いた。魔力の伝導が上手くいかないくらいは考えてたけど、術式が変わるなんて……。今はまだいいけどこれ以上は何が起きるか分からない。出力を上げたくてもさらに術式が狂うだけだし……どうしよう?


 なんて迷っている間に術式はさらに狂い、ついに別の魔法になってしまった。しかも発動した。まばゆい光が視界中に広がり始める。


(なんだこれ? “時”と“空間”と……“氷”が混ざってる。なにが起きるんだろ……悪いことじゃないといいなぁ。あー、ねむーい。)


 徐々に光りを増す正体不明の魔法に戸惑いながらも、少々場違いな事を考えながら僕の意識は薄れていった。


序章終了。

次から物語が始まります。

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