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東方天雪記  作者: トマトしるこ
2章 諏訪大戦
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19話、諏訪大戦 ~終戦~

バイトもなく暇してたので連投

「あれが洩矢のとっておきですか」

「そ」


 ケロちゃんは刃のついた輪っかを投げたり手元で回転させたりして、御柱や弾幕を切り裂いていく。神奈子の懐に入って攻撃し、小さいが確実にダメージを与えている。

 神奈子は御柱をバットのように持って応戦するが、輪っかに切り裂かれ盾にもならない。距離を離そうとしても、ケロちゃんの独特な動きを捉えることができず、何度も近接戦に持ち込まれる。


「神奈子が押され始めてますね」

「そうだね。でも、この戦いそろそろ終わるよ」

「なぜですか?」

「神奈子はあの輪っかが何なのか分かり始めている。そろそろ反撃に出るはず」

「輪っか、ですか。あれはもしかして………鉄、なのでは?」

「正解。てか知らなかったんだ」

「はい……まさかこのような所にあったとは」


 この時代鉄はまだ発見されたばかりで普及していない。主流は銅や青銅だったと思う。偶然かどうか知らないけど、鉄を見つけたケロちゃんは製鉄技術をどこかから仕入れて武器に加工した。あるいは神力で地道に削っていったのかもしれない。

 鉄は非常に優秀な金属だ。武器は勿論の事、防具に農具、工具などなど、様々な物に加工できる。硬度を持ちつつ、柔らかく、加工しやすい。

 僕は信仰と鉄が目当てだと思ってたけど、そうじゃないらしい。天照は本当に信仰を集めることに全力を注いでいることがよくわかる。


「なるほどね……大体分かったよ、その輪の事。鉄だろ?」

「……そうだよ。でもそれが分かったところであんたはどうしようもないだろ。鉄の輪は御柱も弾幕も切れるんだからさ!」

「確かに。近づかれては私は攻撃を当てることができない」


 神奈子は攻撃ができないのではなく、当たらないと言った。


「奈菜花、この意味がわかるかい?」

「木の棒が近づかれては振り回せないからですか?」

「うん、木の棒じゃなくて御柱ね。残念だけどそれは違う。別に御柱で攻撃することにこだわる必要は無いよ」

「だったらぐーで殴ればいいじゃないですか」

「そうだね。でも当たらないし、隙ができる。神奈子が当てられないと言ったのはまさにそこなんだよ」

「スピードは洩矢神に分があり、御柱も弾幕も意味が無い。無理に攻撃しようとすると避けられる上に手痛い反撃をくらう。流石の神奈子も弾幕ではなく直接祟りを受けたら拙いでしょう。こういう事ですか?」

「正解」

「………///」


 いつもの癖で天照の頭を撫でていた。あ、やば……まいいや、嫌じゃなさそうだし。


「こ、この女狐め……! そこは私の特等席なのにぃ……!」


 ああ、奈菜花が怖い。あとで機嫌直さないと後ろから刺されそうだ。


「諏訪子様!!」


 巫女さんが叫ぶから見てみると、諏訪子は右腕を押さえていた。


「なにがあったの?」

「貴方方は本当に審判ですか!? 諏訪子様が右腕に御柱の直撃を―――」

「あ、わかった」

「………」


 神奈子は“アレ”使ったんだろうね。ケロちゃんの鉄の輪ちょっと色が変わってるし。


「お、お前何したんだ……?」

「いいさ、種明かしと行こう」


 神奈子は連れてきた神から剣を受け取って、地面に突き刺した。


「これは鉄の剣だ。この剣に“これ”を使うと――」


 神奈子は“アレ”をかざすと、剣は鈍い銀色から赤銅色に変わっていき、折れた。


「――鉄は錆びる」

「な……」


 諏訪大戦に於いて勝敗を分けたのは神奈子がかざした“藤蔓”だ。洩矢神が用いた最先端の武器“鉄”、建御名方(タケミナカタ)(神奈子)は植物の蔓をかざして鉄の武器を錆びさせたという。

 鉄の輪でようやく挽回したが、その鉄の輪を封じられた。

 もう一度、神奈子に通用する手段を戦闘中に考えなければケロちゃんは負けてしまう。


「まさかそんなの用意してるなんてね」

「私も驚いたぞ、鉄を使うとはな。ここまで追い詰められてたのは初めてだ」

「ならもっと驚かせてやる……て言いたいんだけど、神力が無くなりかけでね」

「私も似たようなものさ。だから――」


「「――次で終わらせる」」






 ケロちゃんからは霊力を持たない人間でも視認できるほどの祟りが、神奈子からは竜巻のような突風が巻き起こった。


 ……あれ、ここまで来るんじゃない?


「ま、拙いです! 今すぐ結界を張ります!」

「僕がやるよ。奈菜花、天照、10秒だけ稼いで」

「任せてください!」「は、はいっ!」


 奈菜花は連続爆破を起こし風の抑え、天照は祟りを打ち消す光線を撃ち続けている。


《術式構築………………完了/魔方陣展開》


 範囲は僕らの周りだけでいいか? いや、ケロちゃんと神奈子を覆うようにしよう。


《絶対領域、起動》


 2人を覆うように魔法を発動させる。今回はドーム型に挑戦してみた。良い出来。


「ありがと。助かったよ」

「す、すごい……」

「雪乃君、そう思うなら御褒美をください!」

「わ、私も欲しいです!」

「えぇっ!? いや、まぁ、できる範囲でなら……(天照まで言うとは思わなかったな)」

「えっとですね………」「わわ、どうしましょう……」

「まあ、あとでね」


 僕は魔法の維持に忙しいのだ。






「洩矢神――いや、諏訪子」

「……なんだい神奈子」

「ここまで楽しい戦いは始めてだったよ」

「光栄だね。でも私が勝たせてもらうからね」

「おっと、そいつは譲れないね」


 お互いを称えあう2人。神力が空間を埋め尽くしており、外からはまったく見えない。魔法を維持している僕だけが、この戦いの最後を見ることができる。良いことなのか悪いことなのか分からないけど、きっと良いことなんだと思う。

 その証拠に僕はとても嬉しい。歴史的な戦いの最後が見られるからじゃない。敵同士だというのに、貶すことなく笑顔でお互いを褒め称え、今では友人のように見える。この戦いの間だけかもしれない。それでも嬉しかった。


 “誰もが笑っていられる場所を作ることができたら”と僕は何度も思っていた。でも実際は難しい。はっきり言って理想論、夢物語、話の中だけの空想だ。なぜならあらゆるものが二律背反だから。幸福があるなら不幸があるように、太陽があるなら月があるように、天があるなら地があるように、喜びがあるなら憎しみがある。

 誰もが笑っていられる場所というのは、まさしく楽園、理想郷、人が追い求める幻想だ。

 でも今、僕はこの2人からその可能性を見ることができた気がする。

 とてもいい気分だ。

 あとは何事もなく終わることを願うだけ。史実通りに、神奈子が勝つように。ケロちゃんが負けるように。


「いっけぇぇぇえぇぇえぇぇええええ!!!」


 両手から放たれる祟りの塊。それはもはや呪いの域に達している。塊は形を変えていき、真っ黒い靄が真っ白な大蛇になり、神奈子へ襲いかかる。まぎれもなくミジャクジ様。


「消し飛べぇぇぇぇえええええええええ!!」


 一回り大きな御柱を8つを背中に出現させ、底面をケロちゃんに向ける。それは柱ではなく巨大な砲身へ姿を変え、8条の閃光を放った。


 両者の中間で大蛇と閃光がぶつかり、拮抗する。押して押されてを繰り返している。始まった時のように。

 が、少しずつ変化が見られる。


「ぐっ……」


 神奈子が押され始めた。動き回ったケロちゃんと違って、砲台のように撃ちまくった神奈子の神力が尽きかけているのが分かる。

 だがそれはケロちゃんも同じのようで。


「うう……」


 大蛇は押し戻されて元の位置に戻って来た。

 互いの神力は尽きかけ、体力も限界。ここからは精神の勝負。先に折れた方が負けだ。

 しばらくこう着状態が続く。が――


「お、おおおおおおおぉぉぉ!!」


 神奈子が勝負に出た。

 胸の前にさらに御柱を作りだし、9個目の砲台に変え、発射。

 8条の光線が収束している場所、すなわち大蛇と競り合っている1点に到達。推進剤を得たかのように押し始め、大蛇を飲み込んだ。


「あーうー、私の負けかぁ……」


 そのつぶやきと共に、祟り神は呑みこまれた。






 諏訪大戦は大和の神々――八坂神奈子の勝利によって幕を閉じた。







あー、いー、うー☆

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