16話、諏訪大戦 ~交渉1~
ちょっと短めです。
その分次はいつもの2倍近くになりそうな予感。
洩矢神社の居住区(?)の居間に僕らは集まっていた。ケロちゃん、奈菜花、僕、巫女代表1名の合計4人。
巫女さんが1人だけなのは数が多すぎるというのもあるが、噂の飛び交う村に行って情報収集を行ってもらっている。
「まず大和の神の戦力だけど、最低でも3~4万くらいだね。加えてかなり神格のある神が数体いるって話」
「こっちは?」
「民を戦わせるわけにはいきませんし、かといって私達巫女は妖怪ならともかく神様相手には無力。こちらは諏訪子様とミジャクジ様のみでございます。数にして1万ほどです」
「絶望的ね」
奈菜花の言うとおりだ。戦争において数は重要なファクターの一つ。物量は力に繋がるし、士気も上がる。2万の差は、はっきり言って絶望的すぎる。
「数で劣る以上策を練るしかない。けど、そう簡単に通用する相手じゃないのは確かだ。民を守るために降参することも考えておいた方がいいね」
「そんな!」
「信仰はそう簡単には薄れないはずだよ。ケロちゃんは祟り神、村じゃいい感じにおばあちゃんに好かれてるけど、恐怖が無いわけじゃない。他の神とはちょっと違うからね」
「そうかもしれないけど……」
「こういう考えもあるよってこと。勝つに越したことは無いんだから」
最初に負けた時の話は拙かったかな。ただ、戦いは最悪の状況を想定して動かなければならない。あまり経験の無いケロちゃんにはこの事をわかってほしい。
「それで、雪乃様はなにか考えをお持ちですか?」
「どうあがいても不利なのは変わらないし、民に被害がいかないようにしないといけない。まともに戦うのは止めた方がいいね」
「それは降参しろって事じゃないか!」
「あー、言い方が悪かったね。要するに、被害を最小限に抑える戦いをしろってこと」
「………どういうこと?」
「奈菜花」
「一騎打ちですか?」
「正解」
ケロちゃんと巫女さんは「え?」と口をそろえて驚いていた。
「一騎討ち?」
「そう。双方がいたずらに数を減らすことなく、勝負に決着がつく。これなら被害も少なくて済む。方法は……そうだね………1対1で気絶、あるいは負けを認めるまででいこう。殺してしまうと後が面倒だから殺しは無し。どうかな」
「えっと、いいんじゃない?」
「しっかりしてよ。戦うのはケロちゃんなんだよ」
「………うん。わかった、それでいいよ」
決まった。あとは……
「相手にこれを認めさせないといけませんよね」
「そうだね」
奈菜花が言った通り、この要求を呑んでもらわないといけない。最悪機嫌を損ねて問答無用で攻めてくるかもしれないから、交渉は慎重に行う必要がある。
「よし、話は僕と奈菜花がつけに行く。ケロちゃんは書を用意して。条件は勝ったら出てって2度と来ない事、負けたら土地と信仰を渡すってことで」
「………いいの?」
「いいから言ってるんだよ。早くしないと奴さんがここまで来るよ」
「……アリガト」
ケロちゃんと巫女さんは居間を出ていった。10分待てば持ってきてくれるだろう。
「雪乃君」
「うん?」
「交渉役まで引き受けるのはやり過ぎじゃないですか? 歴史を改変してしまうかもしれませんよ」
「あー、そのことね」
さっきまでは作戦伝えてあとは頑張ってね~、っていうつもりだったんだけど、気づいたらパイプ役までやる気になってた。
というのもやっぱり、あれだね。
「未来から来たって話をしたよね。僕が住んでたのはこの洩矢神社の近くなんだ。名前は守矢神社に変わってるけどね」
「ええっ!(読みが同じだからどう違うのかわかりません!)」
「それに、神社の子と幼馴染みなんだよ」
「えええっ!!」
「時代は違っても故郷だからね、なんとなく好き放題やられるのが嫌なだけだよ」
「そう、ですか」
ま、ホントの事言うと自分でもよくわかんないんだけどね。
「てことはもしかして、この戦争の結果を知ってるんですか?」
「うん。負け」
「そんなあっさりと……」
「あはははは」
いやーケロちゃんいなくて良かった良かった。
「違った結果に持っていく気は無いよ。そんな度胸は無いからね。ただ、この神社とケロちゃんには色々と世話になったからさ。恩返しみたいなもんだよ」
「……まあ、雪乃君がいいっていうなら私は反対しません」
「ありがと奈菜花」
「はうぅ///」
なでなで。あー癒されるね。あの乱れっぷりがなかったら。
ずっとなでなでしてたらケロちゃんが書を持ってきた。
「はい、これ」
「……うん。大丈夫でしょ」
「任せたよ」
「任されたよ」
さて、行きますか。
龍化した奈菜花の背に乗って大和の神がいる場所へ向かった。
「ところで大和の神はどこに居るか知ってますか?」
「あ」
聞きに帰るという恥ずかしい事をしたのは言うまでも無い。
みなさんお忘れかもしれませんが、雪乃少年は早苗さんの幼馴染ですよー。