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東方天雪記  作者: トマトしるこ
1章 古代編
10/35

10話、月移住計画4

 父さんから貰った懐中時計を見る。爆発まであと1分30秒……を切った。


「始めるよ」

「『はいっ』」『わかった』『はーい!』


 真後ろで僕に抱きつく―――もとい、支える奈菜花。防御魔法の範囲指定の為に皐月と風音2人とパスを繋いでいる状態だ。魔法の制御権を奈菜花に移すために、奈菜花とも繋がっているので、僕を中継して会話ができるようになっている。頭で念じるだけいいので声が出ない時でも使える便利な魔法だ。


 まずは都市を覆う第1結界。これは爆発、爆風を吸収する特異な結界だ。ここで吸収したエネルギーは僕の魔力に変換される。まずはこれを展開する。


《術式構築…完了/結界起動》


 次は単純な防御結界。普段より分厚くしておく。


《術式構築…完了/結界起動》


 最後に本命の防御魔法《絶対防壁》。“空間”と“氷”の複合魔法で、空間を隔て、砕かれないイメージから生まれた魔法だ。まだ発展の可能性を残しているから完成形ではないけど、大概の攻撃はこれで防げる。多分。


《術式構築……………完了/魔方陣展開》

《絶対防壁、起動》


 僕が定めた起点から斜め後ろに向かって薄い蒼色の壁が生まれていく。終点に到達した瞬間、淡い光を放ち始めた。


「奈菜花、よろしく」

「はい」


 制御権を移して、一息つく。時計を見るともう1分切っていた。


「もうすぐだよ。気をつけてね」

「『わかってます』」『雪乃もね』『らじゃー!』「任せときな旦那!」「俺らにかかれば楽勝だっての!」


 みんなが気合いの入った返事を返してくれる。風音はラジャーなんて言葉をどこで聞いたんだろ? 僕言ったこと無いんだけど。

 聞いてみたら『考えたんだよー。流行るかな?』だって。流行るどころか掛け声になってるよ。考えたの風音だったんだ………。


 そんな風に気楽な会話をしていたが、急に静まりかえった。

 都市から異常なまでの電磁波を感じたから。時計を見たらちょうど10秒。

 全員に聞こえるように魔法で声を大きくし、風にのせる。


「9……8……7……」


 どんどん緊張感が高まってくる。


「3……2……1……」




「0」




 都市が光った。と気付いた時にはすでに爆発音が耳を支配していた。

 2つの結界は紙のように引き裂かれ、暴風と砂塵が迫ってくる。


「ぐうっ!」


 結界とぶつかり合った。《絶対防壁》は物理的なもの全てを防ぐ。風や砂、瓦礫も全て防ぐ分結界にかかる負担は半端じゃない。


 それでもやらなきゃいけない。

 僕が崩れたらみんなが危険な目に会う。この形は僕がいないと機能しないんだから、しっかりしないと!




 そこから先の事は覚えていない。ただ、結界の補修、修理、傷つけないようにあれこれしたことだけはぼんやりと頭の隅に残っていた。
















「………ん」「……の」「………!」


 誰かが耳元で何か言ってる気がする。


「雪乃君!!」

「ぐぼぁっ!!」


 お腹に何かがぶつかった。痛い。


「な、奈菜花? 皐月に風音も……」

「雪乃、ぼーっとしてたよ」

「ダイジョーブ?」


 ぼーっとしてたって、何してたっけ?

 えっと……そうだ、都市の爆発を防ぐんだった。ここでゆっくり会話ができるってことはなんとかなったってことかな。


「ねえ」

「………」

「なんで、これだけしかいないの? みんなどこにいったのさ?」


 どうにかなったんだろうけど、肝心の森の妖怪達は殆どいなくなっていた。残った妖怪は全体の約3割程だったけど、ここに居るのはその3割の中の1割といったところ。あれだけの数が一体どこに……。


「消えたんです」

「消えた?」

「……結界に妖力を注ぎ過ぎたんです。下がるように言っても聞いてくれませんでした。旦那には世話になりっぱなしだからって、森の為に命駆けんのもわるくねぇって、みんな」

「……そっか」


 森は無事だった。今まで通り。何も変わっていない。

 彼らは守ったんだ。なら、僕は彼らの命を無駄にしない為にもできることをしなければならない。これは、義務だ。生き残った僕らの。


「なら、彼らの為にも、この森を」

「わかっています。だから今は休んでください。雪乃君まで消えてしまいます」

「うん………じゃあ、ちょっとだけ」

「はい」


 目を閉じた瞬間、僕の意識は沈んでいった。



これにて1章終了。

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